第45話 始まったばかり

 敵が現れたのはアランのところだけではなかった。

 

 第五王国『自然と農業の国』。

 王城近くの平地の空間がぐにゃりと歪んだ。

 そこから現れたのは青い髪の小さな少年。大勢の魔人たち。

「さあて、人間ってどんな味がするんだろうなあ。僕初めて食べるから楽しみだ」

 『究極スライム』アトランティスは、無邪気そうな笑顔でそう言った。


 第四王国『太陽と芸術の国』。

 王宮で紅茶を飲みながら本を読んでいたイザベラは、不意に顔を上げて言う。

「そんなところで見てないで入ってきたらどうかしら?」

 イザベラの周りにいたセシリアや男たちは「急にどうしたのだろう?」と不思議そうな顔をする。

 しかし。

「……おやおや、気配は消したつもりだったのですがね」

 スッと足音一つ立てず、柱の陰から一人の男が現れた。

 細身で長身の、目を見張るほどの美男子である。

 燕尾服を着て姿勢よく立つその姿は、丁寧な言葉遣いとも相まって優秀な執事のようにも見えた。

「お初にお目にかかりますイザベラ・スチュアート様。『真暗黒七星』が一人、『遊戯神』アデクと申します」

 そう言って丁寧な綺麗な所作でアデクはお辞儀をした。

「警備はそれなりに厳重にしておいたはずだけど?」

「ええ、彼らとの遊戯は退屈でした」

 肩をすくめるアデク。

「アナタとのゲームは楽しくなることを期待しますよ、クイーン?」


 これら二か国だけではない。

 時を同じくして、の『七英雄』の元にも敵が現れたのだ。

 人類は未だ一勝をもぎ取ったに過ぎない。

 残る六つの戦いで二つ以上敗れれば、王城の地下にある『封印石』の封印が解かれ人類に災厄が降りかかる。

 人類の存亡をかけた戦争はまだ始まったばかりである。

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アラフォーになった最強の英雄たち、再び戦場で無双する!! 岸馬きらく @kisima-kuranosuke

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