第4話 新たな剣技 〜親娘の剣〜
そんなヴィラレットと、フェイルカミラ達の様子を、ユーリカリアとウィルリーンは見ていた。
「ウィル、この前、ジュエルイアンに貰った、エルメアーナの剣は、持っているか?」
ユーリカリアは、真剣な様子でヴィラレット達の方を見つつ、話しかけていた。
ウィルリーンも、ユーリカリアと同様にヴィラレット達の方を見ていた。
「ええ、収納魔法の中に入っているわ。 直ぐに出せるわよ」
そう言うと、口の中で呪文を唱えると、地面に魔法紋の光が現れた。
すると、その中から剣が浮き上がってきた。
その剣をウィルリーンが拾いユーリカリアの前に出した。
「はい、どうぞ」
ウィルリーンは、この後の事が分かっているといった表情をする。
ユーリカリアは、その剣を受け取るとヴィラレットの方に歩いて行った。
「ヴィラ!」
そう言って、剣をユーリカリアは、ヴィラレットの方に剣を向けた。
ヴィラレットは、何だという表情をする。
「ヴィラ、剣を2本使いたいんだろ。 この剣を使ってみろ」
出された剣は、先日、ジュエルイアンからプレゼントされた、エルメアーナの剣だった。
エルメアーナの剣は、よく斬れると評判になっており、購入するにしても予定が詰まっているので、直ぐに購入できるというものではない。
そして、性能も含めて、とても高価な剣となっているのだ。
ただ、メンバー達は知らないが、どちらも、ジューネスティーンが作った日本刀を見て、その性能に驚き、その技術を自分の物にしたいと思ったのだ。
カインクムとエルメアーナの親娘は、大ツ・バール帝国の帝都と南の王国の王都に離れて暮らしているのだが、お互いにジューネスティーンの剣を見て、その剣が、今まで見たどの剣とも違うと一眼で見抜いたのだ。
そして、親娘は、ジューネスティーンにその製法を聞き、自分達で作ってしまったのだ。
エルメアーナの剣を、ユーリカリアはヴィラレットに使えと言ってきたのだ。
「えっ! それは、この前、ジュエルイアンさんから、貰ったエルメアーナの剣じゃないですか?」
ヴィラレットは、びっくりした様子で答えた。
しかし、ユーリカリアは、当たり前のような表情をしている。
「ああ、そうだ。 これは、お前の剣と大きさも同じ位だから、都合がいいだろう。 これを使って、今の話の剣技を試してみろ。 上手くいったら、その剣は、お前が使え」
そう言うとユーリカリアは、剣をヴィラレットの胸に剣を当てるのだが、ヴィラレットは、驚いた様子で、その剣の柄と鞘を持つように受け取った。
「よろしいのですか?」
ジュエルイアンのプレゼントが、カインクムへの発注前だったら、エルメアーナの剣は、ユーリカリアが使うだろうと思っていたのだ。
新人のヴィラレットにそんな高価な剣が回ってくるとは思ってなかったのだ。
ユーリカリアにしても、カインクムに剣を発注してしまった後だったので、エルメアーナの剣は、持て余していた。
そのため、ヴィラレットが使うなら、丁度良いと思ったようだ。
「ああ、お前が前衛として、もっと磨きがかかれば、うちのパーティーの向上にもつながる。 それに、この剣なら、ヴィラが、一番使いこなしてくれるだろうしな」
ユーリカリアは、ヴィラレットの剣技が、自分達より優れていると判断していた。
それは、副リーダーであるウィルリーンも同意見だったのだ。
特に、ウィルリーンは、子供の頃に、魔法を教示してもらった際、冒険者として使う全ての剣に精通していた。
ユーリカリアの戦斧の技術もウィルリーンに教えてもらったものだ。
ユーリカリアとしたら、冒険者の腕を見極める際の最終決定は、常にウィルリーンの意見を尊重する。
そして、新人のヴィラレットが、メンバーになりたいと言ってきた時、その剣技を見て、ユーリカリアは、その剣技に魅了され、ウィルリーンは、太鼓判を押したのだ。
全ての剣技に精通しているウィルリーンが太鼓判を押したヴィラレットなら、極めた剣技を更に高める事も可能だとユーリカリアは思っていた。
それは、何も反論せずに、エルメアーナの剣を収納魔法から取り出したウィルリーンも一緒の事なのだ。
そんな思いの中、ヴィラレットが二刀流について、ヒントを閃いたのなら、何らかの結果が出るだろうことは、ユーリカリアにも、そのヴィラレットの剣技が、どのように進化していくのか見てみたいと思ったのだ。
「それより、お前が考えた剣技を、直ぐに使ってみたいと思わないか?」
ユーリカリアは、ヴィラレットが考えた剣技が気になったようだが、それは、少し離れたところにいるウィルリーンにも言えたようだ。
ヴィラレットは、ユーリカリアの後ろに見えるウィルリーンを見ると、2人が同じような表情をしていた事に気がついたようだ。
そして、その事がヴィラレットには嬉しかったようだ。
「ありがとうございます」
ヴィラレットは、お礼を言うと、受け取った剣を腰に収めた。
2本の剣を腰に収めると、ヴィラレットは、ユーリカリアを真剣な表情で見てから、深く頭を下げた。
そして、メンバー達から少し離れると、2本の剣を鞘から引き抜いた。
そして、2本の剣を両手で広げるように持つと、先程の魔物との対峙した時をイメージするように剣を動かし始めた。
最初の太刀で、初めの魔物を受け、そして、もう一方の剣で、次の魔物に対峙するように構える。
体をその時の動きに合わせて動かし剣を振る。
それは、ヴィラレットの剣技が、新たな境地、二刀流を身につけるためのキッカケを得た瞬間だった。
シェルリーンは、自分の弓矢で倒した魔物のコアを探していたのだが、後ろで風を切る音が聞こえてきたので、何かと思った様子で魔物のコアを探すのをやめた。
冒険者であり、Aランクパーティーのメンバーであるなら、周囲への警戒は怠ることはないので、魔物のコアを探していても周囲への警戒は怠らないこともあり、音に対する反応は早い。
シェルリーンは振り返って、音の方向を確認すると、そこには2本の剣を振り回しているヴィラレットがいた。
「ヴィラ」
シェルリーンは、弓矢のスキル持ちでもあったので、ヴィラレットの様子を見て、自分と重ね合わせているようだった。
自分の持つスキルとは違うが、剣技を極めたヴィラレットが、新たな境地に立った事が、嬉しそうに思えたようだ。
「おや? あれは、ひょっとすると、……」
シェルリーンは、ヴィラレットが振り回している剣筋を見て、何かを感じているようだった。
それは、弓のスキルを持つシェルリーンだからこそ分かる何かなのかもしれない。
ヴィラレットの剣技 パワードスーツ ガイファント外伝 〜達人の域に達した剣技は、新たな境地を見極める 二刀流の剣技を閃く〜 逢明日いずな @meet_tomorrow
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