第3話 新たな剣技 〜ヴィラレットの反省〜
戦闘が終わり、安全が確認されると、メンバー全員で、魔物のコアを拾うのだが、そんな中、ヴィラレットだけは、物思いに耽ったようにしていた。
その様子をウサギの亜人であり、身長120センチと小柄なフィルルカーシャが、心配そうに見ていた。
「なあ、ヴィラ。 どうした? さっきの戦闘は危なかったけど、上手く連携して倒せたじないか」
ヴィラレットの様子を気にして話しかけてきた。
そのヴィラレッとの様子から、フィルルカーシャは、さっきの戦闘のことを思い出していたのだ。
そんな中、ヴィラレットが、気にするような戦闘状況になったことは、フィルルカーシャには一つ有った。
フィルルカーシャもヴィラレットが、最初の魔物と対峙した後、次の魔物の攻撃をモロに受けそうになった時、ウィルリーンの土魔法で助かった事を、ヴィラレットが致命傷を与えた最初の魔物に、止めの剣を突き刺しながら見ていたのだ。
さっきの戦闘で問題になりそうな状況は、そこだけだったことを知っていた。
「ええ、でも、2匹目に対峙する時、やられたと思ったのですけど、ウィル姉さんの魔法で助けられました」
ヴィラレットは、少しガッカリ気味に答えたので、フィルルカーシャは、やっぱりと思ったようだ。
「ああ、パーティーだからな。 お互いに補うから、勝てるんだよ」
フィルルカーシャは、当たり前のことだと思ったようだが、ヴィラレットは、少し違っていたようだ。
「でも、あの時、もう一本剣があったら、あの攻撃にも、対応できたと思うのです」
それを聞いたフィルルカーシャは、渋い顔をした。
剣も槍も人が持つのは1本なので、何で、2本の剣が必要なのかと思ったようだ。
「ヴィラ、剣は、2本も持ってたら、まともに使うことはできないだろう」
フィルルカーシャは、呆れたような表情をした。
「2本の剣を持った剣士なんて、聞いたことがないぞ。 せいぜい、剣が折れた時とか、後ろに下がる時に防御に徹して使う予備武器だったら、そんな太刀は使わないだろう」
フィルルカーシャの話を聞いて、ヴィラレットは自分の剣の柄を見ながら、さっきの戦闘を思い出しているようだった。
「でもね、カーシャさん。 このカインクムさんの剣は、通常の剣より、とても軽いのよ。 細身の剣だけど、折れる感じもなく、剣が力を受けてくれるの。 この重さなら、2本持っても振り回せそうな気がするのよ」
ヴィラレットは、自分の剣の柄に手を当てて、さっきの戦闘から、剣について考察していたようだ。
そして、ヴィラレットの持つ日本刀のような斬る剣というのは、カインクムやエルメアーナの作る剣だけなのだ。
それ以外は、刃が当たった瞬間の衝撃によって剣が折れないように、剣幅も剣厚も非常に暑くなっており、とても重い。
そんな日本刀の無い世界だったこともあり、重い1本の剣を両手で持つ事が当たり前になっていた。
だが、カインクムの試作品の剣は、他の斬る剣とは違い、軟鉄と鋼鉄のハイブリットによって、圧倒的に軽い。
その軽量化によって、ヴィラレットは、新たな剣技について閃いたようなのだ。
ただ、今の話を聞いて、フィルルカーシャは、微妙な表情をしていた。
自分の知る剣技に、二刀流などというものが無かったことから顔を顰めたようだ。
そして、何か反論をしようとしていたフィルルカーシャが、口を開こうとした瞬間、別から声がかかった。
「ヴィラは、剣技に長けている。 良い師匠に師事を受けたのだ、師の剣技を守っていたのだから、そろそろ、それを破っても良い時期ではないのか?」
2人の会話に、リザードマンのフェイルカミラが、話に入ってきた。
フェイルカミラは、メンバー一番の長身であり、フィルルカーシャは、メンバーの中では一番身長が小さい。
185センチと120センチという身長差を見ると親子と思えるほどだ。
フィルルカーシャは、フェイルカミラを見上げつつ、不思議そうな表情をした。
「破るって、何だか、変な表現ね」
フィルルカーシャが、自分とは違う意見を言ってきたフェイルカミラに苦笑いをしつつ答えた。
「技術などの発展には、
フェイルカミラは、諭すように話したのだが、言葉を遮られたような格好になってしまったフィルルカーシャは、微妙そうな表情で今の話を考えているようだった。
しかし、ヴィラレットは、フェイルカミラの話を真剣そうに聞いていた。
そして、自分の腰につけた剣に手を当てて、考えるように見ていた。
「そうなのですか」
ヴィラレッとは、フェイルカミラに答えた。
フェイルカミラは、そんなヴィラレットの様子を見て、自分の言った事を理解してくれたのかと思ったのか、少し嬉しそうに見ていた。
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