第2話
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坂倉惇 さま
前略(だっけ、拝啓だっけ。そもそもここに書いていいの?)
今日は、あたしと遊んでくれてありがとう!
そして、いきなりこんな手紙を渡してしまってごめんなさい。どうしても、直接顔を合わせると口にすることができなさそうなので、こうすることにしました。
惇はドライだから「だったらメールにしろよ」とか言いそうだけど、大事なことってメールじゃいけませんよ……みたいな風潮あるでしょ? あたしは別にそんなもんどうでもよくて、伝わるか伝わらないかっていうことの方が重要な気がするんだけどね。
って、そんなことこそどうでもよくて。
気づいたら惇との付き合いも長くなってて、最終的には高校までぜんぶ一緒になってたのすごくない?
あ、別に高校は狙ってそうしたわけじゃなくて、あたしがバカなせいで第一志望に落っこちてスライドしてきただけなんだけど、そこに惇がいてくれてすごくよかったなーと思います。仲いい人が誰もいないところで、自分を出してくのってすっごい疲れるでしょ? もっとも、惇はそんなことどうでもよさそうだけどね。笑
それで、もうすぐ進学と就職でみんなバラバラになっちゃうなと思った時に、あたしはふと気づいたんだ。惇は大学に行くし、あたしは専門学校に行くので、今度こそ惇とあたしは離ればなれになっちゃうわけだけど、どう? 清々してる? もしかしたらそうかもしんないよね。あーでも怖いからどっちだかは言わないでいい。むしろ絶対に言うな。笑
そうやって冷静になって考えてみたとき、気づいたことがあった。あたしはその事実を考えたとき、急に怖くなったというか、寂しくてたまらなくなったというか、まあ単純に言うと「惇と離れるのがいやだ」と思ったんだよね。
別に、もう二度と会えなくなるっていうわけじゃないのはわかってる。でも、惇と同じ学校に通うことはもうなくなるんだなーって思ったら、どうしようもなく胸がつぶれそうな気持ちになった。
そして同時に、惇もあたしに対してそういう気持ちを少しでも持っててくれていたらいいなー、とも思った。
まあ、これを単純に言葉にするとすれば(この言い回し、惇もよく使ってる。わざと?)、たぶんあたしは、知らず知らずのうちに、惇のことが好きになっていたんだと思う。
なっていた、というか、今も好きなんだ。
いつも適当なことばっか喋ってるけど、これは本当の気持ち。そのことに今更気づくとか、あたしもマジでバカだなーと思うんだけど、仕方ないんだよ。気づいちゃったんだもん。
ただの幼馴染っていうだけじゃなくて、一人の女子として、あたしのことを見てほしいと思ってしまうし、あたしは惇のことをただの幼馴染や友達として見ることが、もうできないんだ。
あたしは告白っていうものをするのがこれが初めてだから、こういう言い方をしていいのかとか、こういうやり方でいいのかっていうのは、よくわかんない。
でも、進路のことで悩み相談したとき、惇が言ってたよね。何かする前から結果を恐れるな、ダメだった時にどうするかは本当にダメだった時に考えろって。だから、あたしは離ればなれになる前に、ちゃんと思ってることを言葉にすることにしたんだ。
もし振られちゃっても、それはそれで仕方ない。でも、もしも惇があたしに少しでも好意を持っていてくれて、あたしが告白したことで一歩前に進めるような状況だったとして、そのことを数十年経った後に知ったらめっちゃ損でしょ? あたしはこんな性格だから、たぶん、自分でフラグ潰してんじゃねーよって後悔すると思うんだよね。笑
だからこうして、手紙を書く気持ちになった。手紙なら、正直な気持ちを伝えられるような気がした。ただそれだけ。
返事は急がなくていいけど、惇はあたしのことをもうよくわかってると思うんだ。あたしはなんだかんだ言っても、くよくよしちゃう人だから。笑
もしもできるなら、いい返事だったら嬉しいです。
もう一度言うけど、この手紙に書いたことに、嘘は何ひとつないから。
重たいことしちゃってごめんよー。
また来週、学校でね!
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method 西野 夏葉 @natsuha
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