勃起するのは悪いことなのか。

勃起の残酷さを一番に捉えていた。欲望に忠実な器官は暴れ出して、収まりどころを見つけられない。悲しくならないといけない時だって、勃起はする。こうした性欲の足掻きは、青春の中にも必ず紛れ込んでくる。私はそんな話を読むのが好きだ。恋慕と性欲は地続きで、切り離せず、混在してしまいがちなのだ。そこを自覚している一文、例えば「叔父が好きだという強い性欲に押し潰されて、本当のところ、叔父を純粋に思っているのか、ただの性欲の対象として見ているのかがわからなくなる」と差し込まれているのも良かった。さらに言えば、勃起する相手が、年齢の近い少女でなく、どこか冴えない伯父であるところも面白い。唯一の友達が、主人公に性欲発散の手助けを頼むシーンも、いくら主人公が同性に欲情するからといって、あまりにも残酷だ。にも関わらず、二人が性欲を持て余している様は滑稽で、可愛らしく思えるのだから不思議。生々しいのに、どこか笑ってしまう一篇だった。


(「恋愛ショートストーリー特集」/文=紗倉 まな)