結果
「……どうだ?」
"柚木家乃墓"と彫られた墓石に向かって語りかける。
あの後すぐに、蜜柑のリクエストに応え、『生存者』とプリントされた僕のシャツを彼女の墓に供えた。
そして現在墓石の上に座っているという蜜柑に話しかけているのだ。
「うん最高」
蜜柑から返ってきた答えは非常に淡白だが、その裏には押さえつけなければ今にも爆発しそうな感情があり、表現に困っている様子が窺える。
つまりはお供えは無事に蜜柑に届き、生存者Tシャツを彼女は身につけることができたということだろう。
今は深く考えずにそっとしておくのが正解だ。
「じゃあ帰るか……」
用が済んだのなら長いは無用と帰宅を提案する。
「うん……」
名残惜しいのか、少し考えた返答。
「……大丈夫か?」
「はい、大丈夫です……ただすみません、先に帰っててもらえますか?」
てっきり『はい!』と元気な返答があると思っていた僕は、少し戸惑ってしまう。
「わかった」
まあ、蜜柑も自分の墓を見て少し考えることがあるのだろう、今は彼女の望むまま、一人にしてやることにする。
「……2時間したら帰りますから、少しだけ一人にして下さい」
何かを我慢しているのか、言葉に若干詰まりながらの声に、あまりタラタラしていては申し訳ないかと無駄口は避け、蜜柑の墓を後にする。
一人で何を考えるのか、ネガティブな思考にならなければいいが……
帰ってきたら少しはアイツの我儘に付き合ってやるか……
――――なんて考えながら墓所を出た僕だが、直後聞こえてきた蜜柑の歓喜の声にその場に膝から崩れ落ち、ここ数分の蜜柑へ気遣いを全力で後悔したのは語るまでも無い。
振った女が化けて出た ベームズ @kanntory
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