彼シャツ

「売ってませんよ?」


蜜柑に服を着てもらうため、お供えという手段を試すことにした僕らは、蜜柑が着たい服があるというのでその服の用意をしようとしていた所だった。


ところが、蜜柑からは予想外の返答が返ってきた。

姿は見えないのは分かっているのに、思わず視線を声のした方へむけてしまった。


「売ってないって、じゃあどうやって用意するんだよ?」


売ってないものを用意することはできないだろうと説明を求める。

奪えとか作れとか言われたらどうしようて内心思いながらも、蜜柑の性格上そんな無茶なことはしないとわかっているから、余計に分からなくなる。



「……それは〜」


あの蜜柑が、言い淀んでいる。


まさか本当に無茶なことを要求してくる気なのだろうかと若干びびる。


「先輩が、着てる服がいいです……」


顔を真っ赤にして上目遣いで言っているであろう、ものすごく甘えた猫撫で声で要求してきたのはまさかの彼シャツだった。

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