「服のことですが……」


2時間後、


わざとらしく「戻りました♪」とドアの方から言ってきた蜜柑はこう切り出してきた。


ちなみに、

本当に外にいたのかと聞いたら「………いましたよ?」と若干怪しい返答が返ってきた。


「服がどうした?」


現在蜜柑は服を着ていないらしい。


どういう理由かはわからないが、このままでは不憫だと思ってはいた。


まあ、こちらから姿は見えないし、向こうも気にしていないようだからどうということはないと言えばないのだが……


「お供えしてくれたらもしかしたらって思ったんですが、試してみませんか?」


たしかに、

死んだ人に何かを渡す手段としてはお供えは良くあるが……


「あの世の人に渡す手段だろ?……お前まだこの世にいるじゃないか?」


蜜柑はまだこの世にいる。


僕への未練で、


「それにどうやってお供えするんだよ?」


お供えと言えば仏壇だ。


蜜柑の仏壇は当然蜜柑の家にある。


だからといって、正面切って訪問して突然蜜柑の両親に「実はおたくの蜜柑が僕への未練で未だ成仏できず、僕に取り憑いていて、服を着ていないそうなのでお供えして渡せるか試してみたいんですが……」なんて言えるわけがない。

殴られるか正気を疑われるだろう。


「ならお墓はどうですか?」


蜜柑も流石に納得いったようで、次の提案をしてきた。


「私の骨はお墓にあるでしょうし、お墓なら人もそうそう来ないでしょう、変なことするならそっちの方がリスクは少ないと思います」

「変なこと……」


いや実際変なことだし、ほかにいいようもないだろうが、なんか引っかかる。


「それで先輩‼︎私来てみたい服があるんですが試すからその服でお願いします‼︎」


ものすごい食い気味に提案してくる蜜柑。


「あんまり高い服はやめてくれよ?」


平凡な学生の懐は寂しいものだ。


自分の着る外用の服だってユニ×ロなのだ。


「大丈夫です‼︎お金はかけさせませんので‼︎」


どこからそんな自信が湧いてくるのか、自信満々に宣言してきた。


「わかったよ、で?どこに売ってるの?」


買いに行くならと外出準備を始める。



「売ってませんよ?」


ところが、蜜柑からは予想外の返答が返ってきた。

姿は見えないのは分かっているのに、思わず視線を声のした方へむけてしまった。

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