第31話 美味しい食事と素敵な人たち、そして
夜
レストラン・デ・ニホン
「この丸っこい料理超うまい!中はじゅわりと外はパリッと仕上がって、まさしく絶妙なバランスだわ!」
「私はこの麺料理が大好物よ!甘くて少ししょっぱいソースが麺に染み込んで口の中に入れた瞬間、芳醇な香りがあっという間に広がってほっぺたが落ちるほど美味〜」
「俺はこの分厚いパイみたいな料理!野菜と海産物とお肉がたっぷり乗っていて、これ一枚食べれば、強いモンスターでも簡単に倒せそうだぜ!」
王都の一等地に広々としたレストランがあり、そこにはものすごい数の人たちがテーブルに座って、いわゆる日本のB級グルメを堪能中である。
平民、冒険者、貴族、王族、他国からやってきた者と、身分に関係なく、レストラン・デ・ニホンで食事を取る人たち。
3階建てのレストランだが、すでに1階と2階は満席状態。外には長い列ができており、会計を済ませて満足げな表情で店を出ていくお客たちの姿を見て羨望の眼差しを向けていた。
そんな大人気レストランに自衛隊制服姿の一人の男と美しいドレス姿の三人の美女が入る。
「いらっしゃいませ!中へどう……3階へどうぞ」
ユニフォームを着ている女従業員が元気の良い声で来店したお客たちを案内しようとしているが、4人の顔を見るや否やはたと目を見開いて礼儀正しく頭を下げる。
1階と2階は一般席となっており、3階は貴賓用として設けられたスペースだ。
いい雰囲気の3階の内装を満足げに見回す4人。
うち、男が頬を緩めたまま口を開く。
「アニエス様、王都の一等地でこんな立派なお店を出すなんて……本当に嬉しいです」
ドレス姿のアニエスは、渡されたレモン入りのお水が入っているガラスを少し揺らし、それを少し飲んだ。口を離した瞬間、唾液が糸を引く。それをわざと見せつけるように晴翔に妖艶な視線を向けるが、晴翔は視線を外し、モジモジしている。すると、アニエスがこともなげに話し始めた。
「みんな晴翔くんの国の料理が大好きなの。身分関係なく、誰に対しても優しいけど凶暴な旨味を感じさせるあたり、ニホンの料理と晴翔くんは似ているわね」
「……」
困っている晴翔の反応を見て、彼女は悪戯っぽい艶かしい視線ではなくドヤ顔で興味津々な視線を向けた。
「ふふ、ここに店を出したのは正しい判断だったわ。きっとここはメディチ家の大きな収入原の一つになるんだろうね。晴翔くんの夢も叶うし、お金も入るし、まさしく一石二鳥」
「アニエス様の仕事ぶりがいいからだと思います。まさか、お一人でこのレストランの企画から運営まで手がけるとは思いもしませんでした」
「晴翔くんが守ってくれるから、仕事が捗るんだよね〜」
そんな会話を交わしている二人を見て、赤色の瞳の持ち主であるカロルが話しかける。
「ニホンにはこれ以外にも美味しい食べ物がいっぱいありそうな気がいたしますわ!」
もうすぐ晴翔の義妹であるカロルが目を輝かせて晴翔を見つめている。
「まあ、他にも寿司とか天ぷらとか色々あるけど、いつか作って見ようかな?味は保証できないが」
「お兄様がお作りになる料理はどれも美味しいから、私ワクワクしますの!」
「ははは」
カロルが舌なめずりをし、息を弾ませる。晴翔は、やれやれとばかりにため息をつき、視線を逸らすが、逸らした先には、深海を思わせるほど深い青色をしている瞳の少女が彼を離さない。
「晴翔」
「ん?」
「私、とっても幸せなの……」
「俺もだよ。アリス」
アラン一族が消えてからはラオデキヤ王国の治安は段違いによくなった。もう、屋敷を襲うような集団は存在しないし、何より、
晴翔がメディチ家の三美女を守ってくれている。
そのことが嬉しく嬉しくて仕方がないアリス。
どうか、この幸せが末長く続きますように。
4人は同時に心の中でそう祈った。
すると、
「ご注文の料理をお持ちいたしました」
従業員が洗練された動作でタコ焼きとお好み焼きと焼きそばが入っているサラを置く。
「晴翔くんの召喚魔法にずっと頼るわけにはいかないから、食材は全てラオデキヤ王国で取れるものを使っているの。召し上がってみて感想を聞かせてくれる?」
「わかりました」
晴翔はそう短く返事し、素早く目の前のタコ焼きと焼きそばとお好み焼きを一口ずつ食した。
3美女は目を大きく開けて握り拳をし、前のめり気味に俺を晴翔を見つめている。
この姿勢だと、特定のところが強調されるから、目のやり場に困るのだが……
アリスとカロル、前よりもっと大きくなってないか!?
いかん!今はそんなことを考えるな!俺はメディチ家の人間だ!そんなことは……家に帰ってからしよう!
と、首を全力で振った晴翔は、舌から伝わる味を吟味しては、
笑顔を浮かべて、
「とても美味しいです!ラオデキヤ王国と日本の味が合わさった最高の味です!」
X X X
食事を終えてレストランを出る晴翔たち。
相変わらず、レストランには長蛇の列ができており、熱はなかなか冷めない。
晴翔は、その光景をさも嬉しそうに見つめている。カップル、夫婦、冒険者、子供、お年寄り、などなど……
だが、この場面を見て微笑むものは晴翔たち以外にも二人いた。
路地裏に繋がる道に立って、在りし日に思いを馳せるようにしきりに残念そうな表情を見せるが、それを誤魔化すように笑む。だが、ヤクザっぽい見た目なので、ちょっと離れたところから見れば明らかに怪しい人間だ。
晴翔は彼らを見た途端、アニエスたちに目で合図した。それから、晴翔たちは歩調を早める。
「やっと見つけました。ずっと探していましたよ」
「っ!な、なんだ。兄さんだったのかよ」
「あ、あんた……久しぶりだね」
二人は突然やってきた晴翔たちにちょっと驚いた様子を見せる。そんな彼らに晴翔は真面目な面持ちで語りかけた。
「二人の協力がなかったら、俺はアランを倒せなかったと思います。あれから結構時間は経っていますが、お礼を言わせてください。本当にありがとうございました」
そう言って晴翔は頭を丁重に下げた。もちろん、メディチ家の三美女も礼儀正しく頭を下げた。
「いいい、いや!兄さんは公爵だろ?俺たちみたいな、しがない冒険者に頭なんか下げても何も出てこないぞ!」
「そ、そうだ!あんた、早く頭を上げろ!」
慌てて捲し立てるように言う二人の冒険者。晴翔たちはしばし頭を下げた状態を維持してからゆっくりと頭を上げた。そしてアニエスが口を開く。
「お二方のご活躍にベルン国王陛下は大変感銘を受けておられますわ。ですので、国王陛下はお二方に伯爵の爵位と莫大な謝礼金を与えることをご所望です」
アニエスの優しい表情を見た二人の冒険者たち。やがて、何かを悟ったような顔をして、ドヤ顔を作る。
すると、体の細い冒険者は
「俺たちは冒険者でしてね、爵位はいらないんですよ。これが俺たちの生き方だから」
ガタイのいい冒険者が続く。
「お金が必要ならクエストを受ければいい。この国では、いくばくかのお金を出せば美味しいビールとイカ焼きが手に入るんだぜ。まあ、タコ焼きの屋台は無くなっちまったからちっと残念だけどよ」
そう呟いて寂しい表情を見せる二人の冒険者。
そんな二人の反応を見て、晴翔もまた悟ったように彼らにドヤ顔を見せる。
「俺、時間があれば、またあの場所で屋台を出そうと思っています。だから、きてくれると嬉しいです……」
二人はそんな晴翔の顔を見て、目を丸くした。そして、ターンと踵を返して、歩き始める。
「気が向いたらな」
「気が向いたらな」
と言って、二人とも手を上げて振りながら歩き去る。
彼らが去った道をボーと見つめていたアリスが口を開いた。
「私、お父様と晴翔と国王陛下以外の男は近くにいるだけでも吐き気がするけど、あの二人を見ると、心がとても温かくなるわ」
姉の言葉を聞いた妹も感慨深げに呟く。
「いわゆる美男子と呼ばれる貴族男性なんかと比べ物にならないほど素敵ですわ。顔はちょっと怖いかもしれませんけど、心はとてもまっすぐで清いです」
二人の感想を聞いた晴翔は、目尻と口角を微かに吊り上げて言う。
「ああ。本当にいい人たちだよ。俺、あの二人に惚れた」
「え?」
「は?」
「ん?」
急に目がやばい色に変わる三人。
一体、彼の身に何が起こるのか。
「ちょ、ちょっと!なんで俺の袖をぐいぐい引っ張るの?」
「「はやく、屋敷に戻りましょう」」
そう言われ、馬車に乗り込んだ俺たちは、急いで屋敷へと向かう。
別に彼女らを怒らせるようなことをした覚えはないのだが、理由を聞く雰囲気ではなかったし、まあ、流れに任せるとするか。
そうしていると、
急に誰かが叫んできた。
「魔物だ!!!!魔物がまた現れた!!!!」
「「なに!?」」
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった なるとし @narutoshi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だったの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます