最弱 VS 最怖

 一息つき終わり、そろそろ動こうと思っていたころ。相手も気が付き、目が覚めた気配がした。

 「お、起きたか」

 「・・・・」

 「まぁ、そのままおとなしくしとけ」

 「・・・・・」

 ・・・・・無言か。まぁ、いい。何も言うことがないのだろう。そう思いながらも、質問を投げかける。

 「なぁ、質問良いか?」

 「・・・聞くだけなら」

 「お前たちの目的は?」

 「・・・・」

 「じゃあ、他の奴の能力の詳細」

 「・・・・」

 黙秘。いいけどさ。何か一つでも情報が欲しいとこなんだよな。

 「まぁ、いいさ。ぼちぼち進むわ」

 足を踏み出そうとした時、声を掛けられる。

 「・・・・たぶん、どうにもならないですよ」

 「?」

 「3人の中でめちゃくちゃ強いんですよ、あの人」

 「ほう、どれくらい?」

 「どれくらいとは言い表せないですね」

 「”さいきょう”、全員に勝てると?」

 「相性次第でしょうね。・・・考えなしで来ませんよ」

 「考え?」

 「そこまでは教えませんよ。ただ、人数まとめたって勝てるとは限らないって言ってるんです」

 そうか。それぐらいのが来てるのか。何となく大まかにはどんな奴か、望月に聞いているため把握していた。・・・策か。急がないといけないという焦燥感もありながら、間に合うだろうかという不安も混ざり合う。

 いや、間に合わせなければ!と決めた時に何かが迫ってくる気配がした。思わず構える。何だ、新手か?後ろの方にもいたのか。だとしたら、前提が崩れるぞ。

 何かが横をすごい速さで横切り、ドーンという音ともに近くに激突する。土煙が上がりそこに現れたのは、望月達だった。

 「望月!!??」

 「どうも~」

 「『最響』⁉」

 望月奏と他二人が出てくる。望月はカラッととしているが、ほかの二人はふらっとして目が死んだまま下を向き手を地面についていた。久世に関しては、膝を付けて四つん這いになっている。

 「いや、ちょっと無茶しまして~」

 「「ちょっと!!!⁉???」」

二人は声を合わせ抗議の顔をしていた。「無理するって言ったろ、合流できたからいいじゃん。こっちもきついんだって」となんてこともないように言う望月。

 ・・・こいつらの話を聞いてからの出発でいいなと思い直したのだった。

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 目が覚めてからある場所に向かって移動していた。その場所は師匠がいると思われる場所である。御剣さんは周りにいなかったので合流することにしたのだ。居場所を確認したところ、そんなに遠い場所でもなかった。しかしそこは、大きな音が響ていたのだが今はしない。まぁ、戦闘が終わったのだろうとあまり深いことは考えずに進む。ついた場には、知らない人がいて、足元に師匠たちは転がっていた――――


 「(異能が使えなければ、『適応』の『最強』も『破壊』の『最恐』もただの人)」

 足元に転がした二人を見下ろしながら、思う。さて、次は―――

 


 「え?」

 「ん?」

 顔を上げて、上を向いていた奴もこちらに気づく。

 「師匠...?」

 駆け寄ろうとするが、攻撃が飛んできて牽制される。来た方向を見る。相手はこちらに手をかざしていた。

 「誰?」

 「うーーん。・・・はっはは」

 黙ったと思ったら急に笑い出す。何こいつ。

 「ごめん、ごめん。『最弱』だったけ」

 「!!!!」

 僕を知っている。あまり驚くことでないのかもしれない。だけど、なんでかな。こいつ、クライシスの関係者じゃない気がする。

 警戒をあらわにする僕に対して、

 「そんなに警戒しないでよ。そんなに知らないんですよあなたのこと、も」

と片方だけ怪しく灯る紅い目をこちらを向く。

 こいつからは異様な雰囲気を感じる。強者の圧と共に、今にも消えそうな気配。足元に目を向け。師匠と共に倒れている人にも見覚えがあった。師匠と御剣さんと開始直後に戦闘を始めた人である。そのレベルの位置の人。その二人が倒れている。つまり目の前にいる彼もそのレベルってことである。ただ、彼は腕輪をしていなかった。直感が確信に変わっていく。

 「・・・・参加者ですよね?」

 「勘がいいね~。違うよ」

 声のトーンが下がった。肌に震えが走る。構え直し相手の方に集中するが、あいつは急に真剣な顔から笑い出し、手のひらを見せるように上げ、

 「いやー、本当気分がいいんだ、今。別に君と戦う必要をもないかと思ってしまうぐらいに」

と両手を広げながら、その場で回りながら言ってくる。・・・何だ?「でもさ、、」と言葉を続けてくる。気を抜ける場面がやってこない。

 「そうもいかないんだよね。・・・降参してくれない?お互いこれ以上被害が出ない方がよくない?もう意味ないしさ。・・・・いいんだよ、お前が俺の礎の一つになってくれるならそれでも」

と言いながら、手を差し伸べてくる。二人がかなわなかった相手。それだけでも、逃げ出したい。でも、ここで逃げ出すわけにはいかない。今ここには、僕しかいないんだから。


 謎の男との戦闘が始まった。敵はこちらに向けて衝撃波を放ってくる。様々な方向、角度から攻めてくる。到達する速度、間隔と共にずらしてこちらに迫る攻撃。

 本人に中々近づけない。距離を詰めようとしても、取ろうとしても攻撃の牽制が追ってくる。こちらは遠距離攻撃がないため、追い込まれるだけである。

 ――いない。視界から奴が消えた。一体どこに。。。。

 急に目の前に現れた。

 静かで気づかなかっ――

 考えがまとまる前に体が後ろに飛ばされた。迎撃しようとしたが、体勢を低くし躱され、手を腰らへんにかざされた。それだけで、体が飛ぶ。

 やばいやばい。受け身を――だが、先回りされ攻撃を食らう。地面に転がりながらもカウンターに備える。顔を上げると目が合う。こちらも攻撃を入れるが、拳はひらりと躱され、回し蹴りが襲う。こちらも。腕を組み防いで、流す。お互いに距離をとる。

 驚いたな。急に対応された。目が合ったのも驚いた。反応が良くなってる。・・・片目が青く灯りだしてた。・・・・嫌な予感がする。攻撃に対応されてきているのがわかる。先ほどまでこちらの攻撃に食らいつくだけで精一杯だったはずだ。こちらにはそう。・・・・いくら絶好調とはいえ油断したらやられる。そう肌で感じる。先程との雰囲気の違い、戦闘中の変わり身。こいつはなめてはいけない。こいつはなんだ。・・・ははっはここでつぶさなくては脅威になるか。なら、全力だ。

 お互いに間合いを図りながら、じりじりと距離を縮めていく。そして、一気に駆け出す。相手も動き出していた。

 気の抜けない攻防が続く。相手は鋭く気配がつかみにくい動きでこちらに攻撃を仕掛けてくる。相手は体を少し浮かせながら対応してくるため、足場は狙えない。動きも自由自在と言わんばかりの重力をあまり感じないような動きでこちらに攻め入ってくる。そのため動きが読みにくい。近接と小出しに衝撃を放ってきている。

 今はついていけてるが・・・。いや、ついていけるうちに倒しきる。


 見えない何かが襲ってくる、いや襲われた。正体は衝撃波だと思うのだが、小さな爆破もついてくる。変わった、さっきと攻撃の種類が違う。

 「はははっは。まだまだ」

 青白いが確かに燃えていると主張する火の玉に、漫画などでよく見る簡単な人型を模した式神的なもの、人型に近いのが黒い奴。純粋な黒というよりはなにか混じっており透き通っている。火の玉も創作の世界で見るような魂のように見える。中には紅いのもあり、顔がついてるのが混じってる気までしてきて、まるで――

 「まるで幽霊、魂みたいだと思うか?」

 「!!」

急に心を読んだかのような発言をしてくる。

 「・・・一体何の能力?」

 フフフと笑い出し話し出す。

 「いわゆる、魂?霊魂的なものを操れる。だが、もちろん本物ではない。能力によって作られたもの。仕組みとかは聞くな。大体仕組みだのなんだのなんてわからんもんだろ」

 話を聞いて、取り敢えずやばいということは理解できる。つまり、味方を増産し、こちらに攻撃ができるとういうこと。それにこいつは、すべてを話していない。つじつまが合わないところがある。まぁ、正直に全部なんて無理だよな。

 深い深呼吸を入れる。そして、相手を見据える。

 さてどこまで、食らいつけるか。

 「・・・式神的なものを作り、操る能力。そして、自分もそれなりの能力が使えるってところかな。こいつらは、形代かたしろと名付けている。・・・俺の話はここまで!さて、君の能力は何かな?・・・まぁ、教えてくれなくても倒すのが未来だけどね」

 「・・・目的と名前も聞きたいんだけどなー、なんて」

 「教えれないよ」

と笑いながら言ってくる。調子が良いのか、能力の詳細を先ほどより細かく言ったのに。相手は腹を抱えながら、地上から1メートルもいかないところを浮いてゆっくりと回っている。

 お互いに相対する相手をとらえ構え始める。そして、緊張感が張り詰め――

 「・・・『幽鬼ゆうき』、いや『最怖さいきょう』」

 「・・・『最弱』」

 「さぁ、始めよう!」


 あいつの掛け声と共に襲い掛かってくる。迎撃しようとするが、黒は拳が貫通し、通りぬける。は?何が――――

 考える時間もなく拳をたたきつけられる。腕を組むが、後ろに崩される。そして白は、衝撃を放ったり、腕を伸ばし地面にむけ。いや僕に向けて突き刺して攻撃してくる。先ほどの攻撃の仕組みがわかったが、黒にいったてはで攻撃してくる。黒にはこちらの攻撃は当たらない。火の玉は爆発することで襲ってくる。

 「かはっ」

 本人も混ざって攻撃してくるし。本人を倒せば!!だが、攻撃は届かない。届く直前で逃げるのだ。ま、まだだ!―――

 さっきから、こちらのペースを維持できている。だが違和感が体を駆け巡り始めている。様子がだんだん変わってきているのだ。離れて、様子を見ているが『最弱』の目は死んでいない。それどころか、光が灯り始め、動きにも変化が起き始めている。『最弱』は圧倒的な数の攻撃を受けてぼろぼろになり限界が近づいいるはずだった。避け始めている。当たっているこちらの攻撃もあるが、先ほどよりも体勢を低く、素早く移動したりして躱す回数が増えてきていた。がれきを飛ばしても、躱され、軽い攻撃にいたっては相殺し始めた。・・・ははやっぱりいいな。

 彼は急に距離を取り始めた。そちらに向かうと体を向けるが、それを邪魔するように攻撃が飛んでくる。彼の手に力が集まっているのが目に見えてわかる。両手に青白く光り輝いて、周りの空気も震え始める。やばい。

 「邪魔だ!!」

 振り払い、振り切ろうとするが、形代がとりつき衝撃を放ち邪魔してくる。それでも、足を前に出す。あいつの手元はどんどん輝きを増し先ほどよりも紅も交じり両手の中に押し込み凝縮するような動きを見せる。

 あきらめない目が見える。足を前に踏み出している、この攻撃の攻撃の嵐の中で。気づいているだろうか。徐々にあいつらを拳や蹴りで退けているのを。有り得ないとまでは言わないが危険因子だということが見てとれる。こちらにしか目を向けていなくて、仕組みに気づいたとは思えない。

 だが、準備はできた。

 もう少しで、近づけると思った時、『幽鬼』は自ら近づいてきて、目の前にすっと現れ両手から放たれた―――

 腕を組みガードし、力も籠めるが飛ばされる。周りには青白と赤が入り混じったような嵐が放たれ地面とともに削り吹き飛ばしていった――


 嵐が去り、放った方向を見ると地面が大きく削れが土煙が舞う。『最弱』は地面に倒れていた。近づいていくと、体が動いてるのが見える。立とうとしている。だがダメージが大きいらしく上手く立ち上がれないでいるようだった。

 顔を上げると、目の前にいた。

 「よく頑張ったよ。もういいでしょ?休みな」

 「ま、まだ」

何とか振り絞り答える。だが、体に力が上手く入ってくれない。

 さぁ、とどめを。

 と手を振り下ろすとした瞬間、足元に一つの銃弾が通った――――

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異能戦線、上昇中~最弱の僕がさいきょうになるまでのおはなし~ 秋月そらノ @s0right_wwfno

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