先輩が大好きな私と、私を大好きな同期の陰謀

最時

三人関係

 お風呂から上がって、髪を乾かしながらスマホを手に取る。

 そしてベッドに寝転んで、保存されている先輩の写真を眺める。

「はあぁ」

 そして先輩からのラインメッセージの履歴を遡っていく。

「はあぁぁぁ」

 悶える。

「んー。先輩何してるかなぁ」

 再び写真を眺める。就寝前の日課。

「先輩・・・ 夢見れるかな・・・」

 それを何回か繰り返しているうちに眠りについた。


 いつものようにオフィスでパソコンに向かっていると正午になり、みんな昼食へと動き出す。

「ん~」

 バンザイをしてのびをしていると、同期のツバサが肩をノックしてきた。

「マナ。お疲れ?」

「ちょっと夜更かししちゃったかも」

「美容に良くないよ」

「う~ん。そだね~」

「藤木先輩も元気でかわいいマナが好きだと思うよ」

「なっ、なんで藤木先輩が出てくるのよっ」

 顔を赤くして、激しく動揺し、ツバサをにらむ。

「いや、マナ。藤木先輩に敏感過ぎだから」

 マナの反応はわかっていたが、ツバサはあえて引いた。

「べっ、別に敏感じゃないから」

 マナはちょっと怒ってそっぽ向いてしまう。

「マナかわい~」

 ツバサは思ってキュンする。


「行くぞー」

 藤木が来て、ツバサに声かける。

「あっ、はーい」

 明るく楽しそうに答えるツバサに対して、マナの表情が急に不安げになる。

 ツバサはそんなマナの表情を見て

「マナかわいすぎ♡」

 と思ってニヤニヤしてる。


「ツバサと食べに行くけど、マナちゃんも行かない?」

「はっ、はい。行きます!」

 藤木の声かけに真っ赤な顔、大声で答える。

 周囲の人達が驚いて振りむいた。

「マナ、声大きすぎだから」

 ニヤニヤからかうツバサ。

 藤木もちょっと驚いていた。

「ご、ゴメンなさい。ちょっと・・・」

 マナは落ち込んだ表情で何やらムニャムニャ言っている。

「マナ~♡♡」

 ツバサは抱きつきたくなっていた。

「じゃあ行こうか」

「はい。ちょっとトイレに」

 マナはトイレへと走って行った。


 手を洗いながら、鏡を見て考える。

「はあ~ 何であんな大声になっちゃたんだろ・・・」

 鏡をもう一度見返して

「だけど先輩とランチに行ける♡」

 明るく元気な表情に変わっていた。


 トイレを出るとツバサが居た。

「マナって、先輩絡むとすぐトイレ行くよね~ 何してるのかな~」

 イヤらしい表情で顔を近づけてくる。

「別に何もしてないけど」

 マナは眼を細めて視線をそらす。

「マナかわいいっ♡」

 ツバサが抱きついてきた。

「ちょっと、ツバサ」

 マナは周囲を見渡すが、幸い誰も居なかった。

「こんなところでやめてよっ」

「ゴメン、ゴメン。だってマナがかわいすぎるから」

「褒めてもダメなものはダメ」

「かわい~ 尊い」

 怒っているマナを見てツバサは再びキュンしていた。


 三人、明るいイタリアンのお店でパスタを食べている。

「先輩、次の土日は用事あるんですか?」

 ツバサの急な質問に、マナは素早く顔を動かして反応した。

「今週はちょっと用事あって」

「え~ 今年、スノボーまだ行ってなくて、久々だから藤木プロに連れて行ってもらえたらなあって」

「プロって」

 藤木は苦笑い。

「かわいい後輩が頼んでいるにぃ。先輩、今シーズンは何回行ってましったっけ?」

「五回くらいは行ったかな」

「もうプロですプロ! お願いします」

「わかったよ、来週行こうか」

「ありがとうございます」

 そして、固まっているマナにツバサが視線を送る。すると

「マナちゃんも行く?」

「はいっ。いきます!」

 藤木の問いかけに、大声のマナが店内視線を集める。

「ちょっとマナ、デジャブ」

 ニヤニヤとツバサが突っ込む。

「すみません・・・」

 シュンとしているマナにツバサが

「これはちゃんとお詫びしてもらわないとね。あれ、そういえば来週末はバレンタインだよね~」

 そう言って藤木に視線を送る。

「そうだね。楽しみにしているよ」

 藤木がマナに微笑んだ。

「はいっ、がんばります!」

 再び視線を集めてしまう。

「マナ~」

「ごめんなさい。ちょっとトイレに・・・」

 とぼとぼトイレに向かう。


 マナは手を洗いながら考える。

「私、何やってんだろ」

 そして鏡を見て

「だけどバレンタインは先輩と♡ 彼女いないのかな」

 明るく元気な笑顔に変わった。


 トイレから出ると、またツバサが居た。

「マナったら、さっきトイレ行ったばかりじゃん」

「しょうがないじゃん。いきたくなっちゃうんだから」

 そんなマナの表情を見て、ツバサは

「マナ好き!」

 マナに抱きついて耳元でささやく

「マナは先輩大好きだよね。そんなマナが大好き」

 ツバサはキスをする。

 フロアからは死角になっているとは言えマナは不安を感じるが、ツバサは舌を入れてきて次第に口元が緩んでくる。

 自然とツバサの腰に手を回して、舌を絡ませていた。

「マナが好き」

「・・・」

 マナは恥ずかしそうに視線をそらす。

「行こ」

 ツバサはマナの手を引き席へ戻る。

「マナが一番好き」

 ツバサは思った。

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先輩が大好きな私と、私を大好きな同期の陰謀 最時 @ryggdrasil

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