第5話 俺とお前の帰る戦場

 アレックスは消えた。

 幻のように。夢のように。

 完璧に、俺の前から消えてしまった。


 俺だって、放っておいたわけじゃない。

 ちゃんと探したよ。父親には話せなかったけど。

 でも、できるかぎりのことはした。


 探しても、見つからなかったんだ。

 むしろ、いなかった。

 この国には、んだ。

 

『ってことは、その子は国外の――』


 そこまで言って、親切なひとたちはみんな黙ってしまった。

 国境の向こうには、魔族が住んでいる。

 人間と敵対したままの魔族が。


 そんなこんなで、アレックスは――消えた。



■□■



 わあわあと、遠くで歓声が響いている。

 前の試合から一ヶ月が経ち、俺、アラタは闘技場控え室にいた。

 座って黙りこくっている俺。

 横では、幼なじみのセイがウキウキしている。


「いよいよだな、アラタ。今回はバーンとやって、ドーンと勝ってやろうぜ!! なっ!!……アラタ?」


「聞こえてるよ、セイ」


 俺は、自分の膝を見つめて答える。

 セイは、俺の顔をのぞきこんできた。

 

「そっか。ならいいけど。なんか遠い目してるからさ!」


「気のせいだろ? 俺、ちゃんと試合のことを考えてたし」


「おっ、頼もしいじゃねえか。あれか? 姿を隠してた一ヶ月は、ひとりで修行してたって感じか?」


 にかっと笑う、セイの顔。

 ……心配されてるな。

 一ヶ月近く行方不明だったんだから、無理はないか。

 俺はセイから目をそらし、控え室の壁を見る。灰色の壁に吊り下げられた、武器や防具。ついこの間まで俺は、美しい服だらけの場所にいた。


「まあ、修行、かもね?」


 つぶやきながら、嘘だな、と思う。

 この一ヶ月、俺は逃げていただけだ。戦いがイヤで、夢に逃げた。

 アレックスのためって言い訳をして、ただひたすらに逃げていた。


 ……ごめんな、アレックス。

 こっちの逃げに付き合わせたあげく、怖い目まで見せて。

 最後は、さよならすら言えなくて。


 君はきれいだった。

 本当に、きらきらしてた。

 それだけは、本当だ。


 ぼんやり考えていると、セイが俺の肩を抱いた。


「みっ……水くっせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「えっ、何? どうした?」


「どうした、じゃねえよっ!! 修行するならオレも連れてけっての! いや、お前が実はプライドバカ高野郎なのは知ってるぜ? 負けたのがめちゃくちゃショックだったんだろ? オレに言えないくらい、ショックだったんだろ?」


 セイは俺の肩をつかんで、がくがく振り回す。

 ほとんど涙ぐんで、セイは続ける。


「だけどさあ、オレたちはチームだろ!? チームワークがなきゃ、勝てる勝負にも勝てねえだろうが!!!!」


 チーム。――そうか。

 こいつは、そう思ってくれてたのか。

 俺はまじまじとセイを見た。


「……なあ、セイ。ひとつ、聞いてもいいか?」


「なんだよ、改まって。いいぜ、百万個でもいい!!」


「お前は、なんで戦ってるんだ?」


 真顔で問う俺。

 セイは目を丸くした。


「は!? え? どういう意味?」


「いや。リビングアーマーになるとか、普通はイヤじゃないか? 俺、そのことがずっと気になってた。すまないな、とか、悪いな、とか、本当はイヤなんだろうな、とか、思ってた」


「はあああああああああ!? イヤじゃねーよ、オレの気持ち、聞く前から決めつけんな!!!!」


 真っ正面から怒鳴られて、どきん、と心臓が鳴った。

 セイは、正しい。

 俺はどうして、セイに聞かなかったんだろう?

 こんなに近くに居たのに、どうして確かめなかったんだ?


 俺はセイを見つめる。

 悔しそうな顔のセイに、なぜかアレックスの顔が重なる。

 アレックスは、最初から『あんな服が着たい』って教えてくれたから、俺もその夢に乗っかれた。

 だけどセイは、近すぎて。

 セイの気持ち、俺には全然わかってなかった。


「ごめん、セイ」


「うわ、マジで謝んなよ、気色悪ぃ。今日のお前、ほんと気色悪ぃ」


 セイはドン引きして、腕を組む。

 そっぽを向いたまま、セイはぼそぼそとしゃべり出した。


「……つーか、そりゃ、オレだって、最初は鎧になるのは抵抗あったよ。ほんとは、オレが、闘技場の真ん中で戦いたかったからさ」


「そうなのか」


 びっくりして聞き返す俺。

 セイはものすごい顔をして俺を見ると、地団駄を踏んで怒鳴りだした。


「お前、そういうとこだぞ!? そういうとこ!! 勇者さまの息子に生まれて、勇者さまの英才教育受けて、実際戦うセンスもあって、なのに熱血するわけでもなく、しらーっとしてる、そういうとこ!!」


「な、なんかごめん!! 俺、やなやつだな!?」


「やなやつじゃない!! ただ、オレならもっと熱く戦える、そう思ったこともある。でも……」


 セイの声が、ふと小さくなる。

 俺は身を乗り出して聞いてしまった。


「でも?」


「母さんが、言ったんだよ。『戦う才能があるひとはたくさんいるのよ。でもね、セイ。勇者の息子はアラタだけだし、アラタを守れるのは、あなただけよ』って」


 う、わ。

 なんだ?

 今、ぶわっと、目の前が開けたような気がする。


 セイは続ける。


「オレは、その話に納得しちまった。考えてみろよ。オレがお前よりちょっとだけ強くても、観客は納得しねえだろ? 勇者の息子が勝つからこそ、いいんだよ。勇者の息子が戦うからこそ、この闘技は成り立つんだ。オレにお前の代わりは出来ない。だけど、オレにはお前を守る才能がある」


 話すうちに、セイの声はしっかりしはじめた。

 遠く響く歓声にも負けない、きっぱりとした語調。


「それって、オレに世界を守る才能があるってことだろ?」


「セイ」


「なに? うひゃっ!! な、なんだよ、いきなり!?」


 気づくと、俺はセイを抱きしめていた。

 抱きしめて、めちゃくちゃにセイの頭を引っかき回していた。


「お前はすごい。お前みたいなすごい奴に守られてる俺も、きっとすごい!!」


「だから最初から、そうだっつってんだろーが!! とっとと行って、バーン!! とやろうぜ!」


 セイは顔を真っ赤にして怒鳴る。

 子どもっぽい顔だ。だけど、今は妙に安心できる。


「わかった。バーンとやろう!!」


「……大丈夫か、アラタ。いきなりオレ言語にあわせなくてもいいんだぜ?」


「いや、あわせるよ。そういうことすらしてこなかった、俺が間違ってたんだ。だって俺たち、チームだろ?」


 俺が笑うと、セイはぱあっと笑った。わかりやすい奴。そして、いい奴。

 俺はセイに拳を突き出す。

 セイも同時に拳を突き出す。

 こつん、と拳を当てて、にやりと笑い合って。俺たちは控え室を出た。


 途端に、わあわあいう声が大きくなる。

 歓声、ひやかし、期待。大波になって、俺たちを呑みこもうとする。

 でも、ひるまない。

 止まらない。

 ――逃げない。


 俺は、戦う意味を見つけたから。


『人間と魔族の争いの歴史は、早二千年!! 本日ついにその争いに決着がつくのかもしれません。前回は、ちょーーーっと不慣れゆえの不手際もありましたが、代替わりには波乱がつきものですからねえ!!』


 詩人が怒鳴っている。

 なんでも好き勝手に言うといい。

 俺とセイは、堂々と闘技場の中心へ向かう。


『是非とも温かい目で見守り、怒鳴りつけ、囃し立て、血と汗のほとばしる戦いの幕を切って落とそうではありませんか!!』


「セイ」


「おうよ。戦の女神の名において、聖なる守護の任を果たす。鎧変身メタモルフォーシス・エリュトロン!!」


 セイの姿がにゅるりと引き延ばされ、鎧になって俺に張りつく。

 ……不思議だな。こうしていても、まだセイが隣にいるような気がする。

 俺とセイは、隣同士で同じものを見ている。

 闘技場の向こうから出てきた、黒い魔族を。


『さあ、それでは第二十二回、勇者対魔王戦、始まりです!!!!!』


 詩人が宣言し、闘技場はうわっと熱に包まれた。

 楽隊が勇壮な音楽を奏で始めるより先に、俺は体をひねって背負っていた大剣を引き抜いた。リビングアーマーを着ているからこその、しなやかな動きだ。

 魔族は今日も仮面をつけていて、細かい表情はわからない。


 だったら、こちらから行くまでだ!!


 俺は勢いよく走り出す。


『おおっ、今日のアラタには、迷いがありません!! 一ヶ月で成長したか!?』


 能天気な詩人め。一ヶ月で成長なんかするか。

 俺はただ、戦う理由を見つけたんだ。

 理由もなくて戦えるか?

 いいえ、だ。

 俺は、絶対、理由が欲しい!!


 俺は決めた。

 俺は、平和を守るために戦う。

 すべての歌い手が平和に歌える、その日まで。


 俺は、ここで戦い続ける!!!!

 

『アラタっ、このままつっこんだら、相手は必ず攻撃をさばいてくる!!』


 セイが耳元で囁く。

 俺は返す。


「あえて、さばかれる!! だけど、やられはしない!! 身構えてろよ!!」


『!! 承知したぜ、アラタ!!』


 セイの声が震えた。

 怖がってるわけじゃない。嬉しいんだ。

 俺は一気に加速する。剣は高く、頭の横に構えて、疾走。

 魔族は動かない。ぴくりとも動かず、俺を見ている。

 もうすぐ、相手が俺の剣の間合いに入る。

 あと少し。

 もう少し


 ――今!!


 大剣を一気に振り下ろす。

 と、目の前が黒くなった。マントだ。

 真っ黒なマントがひるがえり、俺の大剣を巻き取る。

 まるで布に意思があるかのような動き。


『取られる!!』


 セイの叫びの直後、大剣は俺の手を離れ――地面に突き立つ。

 一瞬、魔族の顔が見えた。仮面の下、繊細な鼻筋。

 唇が動く。呪文を唱えようとしている。


「させねえ!!」


 俺は、跳び上がる。剣の柄を踏んで、さらに高く跳躍!!


『いい!! いけぇ、アラタ!!』


 セイの声が興奮している。興奮しているけど、きっと大丈夫だ。

 俺の気持ちは、通じてる!!

 俺は空中で一回転して、かかとを魔族の後頭部にぶち当てる!

 かかと部分から、にゅっと刃が出たのを感じた。

 セイだ。セイが、鎧を変形させた!


「――――!!」


 魔族が息を呑む。

 ざくっ、と分厚い布が裁たれる感覚。

 くそ、切れたのはマントだ……でも、ちょうどいい。

 それくらいで、いいんだ。


 おお、と、観客のどよめきが聞こえる。

 派手だろ? 楽しいだろ?

 着地からの、もう一撃。

 刃の生えたかかとで、相手の足を払う。

 再び、ざく、と魔族のマントが切れる。

 ぶわり。

 マントの隙間から黒い霧が漏れた。


『くっそ、今のは足が切れたはずだぜ!? あいつ、足がねえのか!?』


 セイが怒鳴る。

 相手は魔族だ、その可能性はある。

 でも、今はそんなことより……。


 俺は叫ぶ。


「相手を休ませねえぞ、セイ! 次々攻撃を繰り出せば、相手は精神攻撃ができない!」


『承知だぜ!!』


 セイは叫び返す。

 俺はひるまず、魔族に肉薄していく。

 動きはびっくりするほど軽い。

 セイが絶えず変形して、俺の動きを助けてくれる。

 俺は地面にささった剣を引っこ抜き、矢継ぎ早に攻撃した。

 魔族は、ひら、ひらと俺を避けるが、攻撃はしてこない。

 本当に、精神攻撃魔法と鎌以外に攻撃手段がないのか?


 それとも……。


『アラタ!!』


「!!」


 セイが叫ぶのとほとんど同時に、俺は横へ転がった。

 起き上がって見ると、魔族の背から、真っ黒なものが生えている。

 自在にうねくる、ヘビのようなものが、何本も、何本も……。

 その一本は、さっき俺がいたところに刺さっていた。


 あのときと似ている、と、俺は思う。

 アレックスが魔族に襲われたとき、似たような攻撃を受けた。


『レックスの反撃です!! これは魔族の霧でできた大蛇のようですねえ。しかし立派なものです、ぎらぎらするうろこが見えてきそうな霧使い!!』


 詩人の叫びに、会場の魔族たちがどっと歓声を上げる。

 そしてヘビを生やした魔族は、俺を見つめて言った。


「見事だ」


「えっ」


 思ったより高い、きれいな声。

 って、いうか。

 聞き覚えがあるような気がして、俺は魔族を凝視した。

 そして、目を奪われた。

 魔族の、唇に。


 思ったより若くてぷるっとした唇には――

 きれいな、紫がかったピンクの口紅が塗ってあった……。


「おい……いや、違う。君、は」


「だが、こちらにも負けられない理由はある」


 魔族は囁き、手袋をした手を一閃させた。

 同時に、七匹のヘビが俺を襲う!!


「っ!!」


 目の前の二匹を横薙ぎにしながら、後ろへ跳ぶ。

 着地した途端、上から来るヘビを突き上げる!!

 ヘビは、この世のものとも思えない叫びを上げてのけぞる。

 が、手応えは浅い。

 すぐに持ち直して攻撃してくるだろう。

 くそ。きりがない!!


 こうなったら……あれしか、ない。

 勇者の血に与えられた秘技、必殺技を出すしかない。


『アラタ!!』


「大丈夫だ。わかってる」


 セイの声に焦りが見える。心配されているんだ。

 前回、俺が恥ずかしがって必殺技が出せなかったから。

 だけど今は大丈夫な気がする。


 ――そもそも必殺技というのは、自分でセリフを決めるもんだ。自分の魂の言葉を叫べば、それでいい。


 いつかの父親のセリフを思い出す。

 魂のセリフなんて臭いもの、思いつける気がしなかった。

 でも、今は、多分――父親の言いたいことも、少しはわかる。


「おおおおおおおお!!」


 俺は、気合いを入れて、ヘビの頭をひとつ切り落とした。

 俺は叫ぶ。

 

「行くぞ、セイ!!」


『ふふ。どこへ行くんだ? また、愚かなセリフを吐くのか?』


 耳元で、甘い魔族の声がする。

 俺の心をつかまえて、弱らせようとしている。

 気にせず、俺は続けた。


「いいか、セイ。ズバッとやって、ズドドドドッといって、とどめだ!!」


『……? え? ズバッと?』


 魔族の声が戸惑う。

 逆に、セイの声は明るくなった。


『ズバッで、ズドドドドッで、とどめだな!! 了解!!』


『えっ? 何? なんで通じてるんだ、それ!?』


「いいぞ……そーーーら、スバッ!!」


 俺は叫び、二個目のヘビの頭を落とす。

 そして、一気に駆けだした。

 走る。走る。走る。決着に向かって、走る!!

 魔族が呆然と俺たちを見ている。俺の体は熱く、軽くなっていく。

 目の前が明るい。俺は、光に包まれている。

 気のせいじゃない。明るい。

 体から、光があふれる!!


 俺は、俺たちは、跳んだ。

 今までとは比べものにならないくらい、高く!

 そして――落下する。


『「ドッカーーーーーーーーー、ン……」』


 俺と、セイの叫びが完全に重なる。

 闘技場全体を真っ白な光が包み込んだ。

 視界はゼロ。

 それでも、確信と共に、刃を振り下ろす!!!!


『で……で、で、出ました――!!!! この浄化の光、確かに代々の勇者に伝わる必殺技です! 何か、こう、カッコイイ技名とかはなかったようですが、威力はすごそうだ……! 決着はついてしまったのか……!?』


 詩人が叫ぶ。真っ白な光は、徐々に辺りから消えていく。

やがて、俺たちの姿をみんなが見るだろう。

 大剣で魔族に斬りかかった俺と……鎌でそれを防いだ魔族の姿を。

 俺と魔族は、至近距離で向き合っている。

 もう、どちらにも、殺気はない。


「手加減したな?」


 魔族の囁き。

 俺も、声を潜める。


「そっちもな」


 魔族の唇が微笑む。

 俺はなんだか、どきりとする。

 魔族の唇がうっすらと開き、静かに言葉をつむぐ。


「お前の意思、僕と同じと思っていいか?」


「――俺が望むのは、平和だ。できるだけ長い間の、平和」


 どきどきしつつも、真剣に告げる。

 俺のこの考え、セイにはもう、伝わっていると思う。

 その証拠に、セイは俺と一緒に手加減をしてくれた。

 そしておそらく、この魔族にも――。


「よかろう。平和のために、我々は永遠に引き分けしあう。力の限り戦い、時には血を流し、観客たちをうならせ、満足させ、そのうえで、引き分けに持ちこむ」


 魔族の宣言。高い声だが、力強い言葉だった。

 やっぱり、伝わっていた。

 思いが、繋がった。

 一気にじゅわっと胸が痛くなる。

 くっそ、泣きそうだ。

 でも、とにかく、俺は続ける。


「俺にはその覚悟がある。お前にも、あるな?」


「もちろんだ。長い付き合いになるな、勇者の息子」


 優しい声だ、と思った。魔族なのに、優しい声だ。

 そして、気高く、強い声だ。

 こいつはきっと、俺より、大分大人だ。


 俺も――早く、追いつかなくては。

 俺は、こいつと、世界を守るのだから。


「全力でやりきろう、魔王の息子」


 俺は囁き、相手を強く突き飛ばした。

 俺と魔族の間に、距離が開く。

 俺たちはふらふらっとよろめき、それぞれに倒れた。


 わあっ!! と、歓声とも悲鳴ともつかない声が闘技場を包む。


『引き分け!! 引き分けです、引き分けが出ました――!!!! だ、誰か、救護!! 治癒魔法班を!!』


『アラタ、大丈夫か……? お前、地味に怪我してるだろ』


 セイがおろおろと話しかけてくる。

 俺は笑ってしまった。


「お前こそ、地味に俺のことかばってただろ? 真っ先に治してもらえよ、バカ」


『くっそ、バカにバカって言われたくねぇ!!』


 まったくだ、と思って、俺は笑った。

 笑って、空を見上げる。

 ぽかんと青い空だった。

 真っ白くてふわふわな雲が浮かぶ、のんきな空。


「あー……。きれいな空だな……」


 俺はゆっくりと瞬く。

 俺は多分、これからの人生が訓練と戦いばかりでも生きていける。

 でも、願わくば。


 いつか、魔王の息子と隣同士で、この空を見上げたい。

 そんな日は、来るんだろうか。

 ……来るような気もする。

 

 あの、唇。

 あの黄昏色には、確かに、覚えがあるから。

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魔王の息子、(勇者の息子のドレスで)女装アイドルになる。 栗原ちひろ @chihiro_kurihara

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