第8話 憎しみのUMA

 戦闘訓練は随分と積んでいた。

誰よりも戦える自信もあった、だからこそ部隊の長を任されたのだと確信もあった。


 「正義の名の下に生きてきたつもりだ。

悪人に恨まれるのであれば本望といえる」

再度弾を差し替える頃には全てがおわっている、狙う標準は明確に定まった。


「ルーカス、何が目的だ?」

牢獄を抜ければ既に待ち構えていた。憎しみを差し向けた悪の親玉、そして元上司の男。


「何を言っている?

これが私の、正義というものだ」

眼光を裏返し瞳が黒く塗り潰される。刑務所中の憎しみが中心へ集まり、一つの大きな姿をを構築していく。


「…なんだこれは、猿か?」


『ヴオォォォッ!!』

正義を語れば悪となる、かつて所長であった男は腕を振るい憎しみをぶつけるだけの理性無き獣と成り果てた。


「ふん..!」

標準を定め弾丸を放つ、ヒットはしているが大した傷は負わせていない。


「醜い獣が、ビッグフットは未確認の筈だ」

力はかなり強いだろうが動きは遅い。

先ずは翻弄させる姑息な遣り方が必要だ


「運転免許証は便利だな、持っているだけでいくらでもパトカーを動かせる」

近くの車に乗り込み発信する。猿の周囲を旋回し、煽るようにただ走り続ける


「ハンドガンに切り替える、運転しながら両手は使えないからな」

周囲をグルグルと回りながら身体を撃つ。

傷こそ負わないが、間抜けな穴が空いていく


『ヴオォォォッ!!』


「遊びにもならんな、乗り捨てよう。」

ぶつかるようにパトカーを発進させ放置する


『ヴオォォッ!!』 「間抜けにこけていろ」

膝に当たったパトカーが、体勢を崩させ尻餅をつかせた。


『ヴオォォォッ!!』


「怒るな、こけたのはお前だ。

..それにいいのか?」

パトカーから炎が上がり、大猿に燃え移る。


『ヴオォォォッ!!』


「穴に染みるだろう、以前冷奴を食しているときに思いついたのだ。」

冷奴の表面にいくつか箸で穴を空けその上から醤油を垂らすと、穴を通り奥まで浸透する


「流石に醤油程では無いとは思うがな。」


『ヴオォォォッ!!』


「喚くな、仕上げだビッグフット。」

車のタンクをショットガンで狙う、燃え上がる炎は爆炎に変わり憎しみの化身を焼き切る



「かっ....」


「‥まだ生きてるのか、本当の屑だな。」


「か....カリーム..様ぁ...‼︎」

それだけを言い残し、消え去っていった。


「……カリーム様だと?」

だれかの親友の名前だろうか、捨てたゴミを拾いに行くには丁度いいタイミングだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ランナウェイ・アブダクション アリエッティ @56513

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ