第7話 クズ経由ゲス行き

 鮫島ルーカス

刑務所の所長であり正義の象徴。全ての悪はこの男の監視下にあり服従する運命にある。


 「‥来たか」

それは正義の味方であっても同じこと。


「武器を調達せねばなるまい」

囚人も、最早敵対する間柄となった部下もいない。速やかに倉庫へと向かい武器を揃える


「久し振りだな、倉庫を開けるのは。」

武器は牢獄の地下にある、囚人が暴動を起こしても直ぐに取り出せるように。地下へと続くハッチはセンサー付きであり、看守や関係者の指紋を読み取らなければ開けられない仕組みとなっている。当然囚人は開けない


『…ピピッ..』 「よし、開いた」

ハッチを開き、階段を降りる。所狭しと並んだ銃火器や特殊警棒が厳重に保管されこちらを見ている。


「ハンドガン、弾を補充して....機関銃にナイフも携えておくか。」

弾丸のスペア、接近戦武器の充実..品定めするのもいつぶりであろうか。普段は余りする必要がない行為ゆえ細かい思い出を忘れている


「通常の囚人相手であればな。

〝全員を素手で相手取る〟事が出来るが、流石に今回は状況がかなり難しそうだ」

漸く本気を出す時がきた、腕がなまっていなければいいのだが。ブランクは余り無い筈だ


「さて、戻るか」

内側から指紋を認証し、ハッチを開けて再び牢獄の部屋へ。


「……どういう事だこれは?」

入る前には開いていた牢獄が全て閉じている。既に囚人は中にはいない


「何かの悪ふざけ..」

言いかけたところで一斉に牢獄が開く。

中からのそりと現れたのは、得体の知れない黄土色をした人型の化け物の群れ


「人に恨まれる筋合いは無いんだがな..」

囚人の念でも込められているのか、だとすれば相当質の悪い感情の塊だろう。


「チュートリアルにしては数が多いな」

ヘッドショットを狙おうにも頭が何処なのか判断しかねる、これもまた捜査指南か。


「弾は補充し直しか、面倒な事をしてくれる」

こんなマネをするのは誰か。

考えれば直ぐに結論は付いた


「おのれルーカス、今に見ていろ..。」


モニターは全てを写していた。

ここへ彼が訪れたのも、ハッチを開け武器を携えたのも。そして今の状況も


「エマラナよ、よく戻ってきてくれたな。

これで新たな〝サンプル〟が出来そうだ」

支配する者もまた、支配下にある。


「全ては〝あの方〟の為、あの囚人を世に放った後はお前の存在で更に道を拡げる。」

蜘蛛女アラクネはその成果、そして力はより増大し膨張していく。


「あぁ..私を褒めて下さい、カリーム様!!」

服従は既に、脳裏を迸る快楽となり得た。

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