いずれ必ず訪れる「そのとき」

 亡くなったはずの母がゾンビとして蘇った人のお話。

 泣きました。
 こんなのずるい……平静でいられるはずもない……。

 親とのお別れ。いつか必ず来るとわかっていても、しかしなかなか想像できないというか、いざ体験してみるとどうしようもなく突然だったりするもの。
 その葬儀の最中に、事実上のゾンビとなって蘇生した母。
 やり残した親孝行の代わりにと、その世話を焼く主人公の姿に、ただただ胸が押し潰されそうになります。

 なにしろ本当に蘇生したわけではなく、あくまでウイルスの作用によるもの。
 つまりすでに生前の意識や知能はすでにない状態で、こうなるとかえってつらいというか、だってアクティブでいろいろ優しかったあのお母さんが、と、うわああだめだ書いててもう泣いちゃいそう。

 どうしても我が身に置き換えて読んでしまいます。
 ある意味では現実に覚悟しておかなければいけないというか、病などでなく大往生となれば、「徐々に弱っていく姿を世話しながら見送る」というのは普通にあることなんですよね……。
 もちろん病や事故となれば、逆に本作冒頭で描かれているように、あまりにも突然かつ早すぎるお別れになってしまう……。

 主人公と同じく目を背けていた大事なことを、あらためて目の前に突きつけられた気分です。
 やっぱり親が亡くなるのって、どう転んでもつらいなあ、と思わされた物語でした。