第142話・死者蘇生
「さて。転移完了っと。松井その場所に案内してくれ」
「ああ。そうだな。こっちだ」
そうして松井に案内されるがまま歩いていく。
てくてくてくてくてくてくてく
暫く歩いていると、裏ダンジョン連合の地下室に辿り着く。
「上野は知らないだろうが。ここは裏ダンジョンといってな」
「いや、知ってる。何なら俺裏ダンジョンの中でも一応隊長やってる」
「そうなのか。え?マジかよ。流石上野。いや死霊王だな」
「まあな。で。何処に死体が安置されてるの」
「あ~、それが俺にも分からないんだよな」
「いや。分からないよのか。大問題じゃないか」
「それが。先生から取り敢えず案内しろって言われて」
先生って誰だよって思ったら向こう側から誰かが、いや加藤先生が手を振って話しかけてきくる。
「よお。久しぶりだな泰斗」
「あ。加藤先生。久しぶりです。もしかして先生が死体安置所に案内してくれるんですか?」
「まあな。いやしかし、松井と上野が知り合いとは驚いたわ。というか上野、お前死者蘇生出来るって本当なのか?」
「本当ですよ。あれ?加藤先生に伝えてませんでしたっけ?」
「ああ、初めて聞いた。いや噂は聞いていたが、まさか本当だったとわな、というか蘇生にデメリットはないのか?」
滅茶苦茶に心配してくる加藤先生。いやはや優しいですね。
「特にデメリットはないですよ。基本は魔力の消費もありませんし。寿命が縮むとかもありませんよ。さあ、サクッと蘇生を終わらせますんで。場所に案内して下さい、加藤先生」
「ああ。そうだな。じゃあ案内するよ。こっちだついてこい」
加藤先生に案内されるがまま更に地下に向かって歩いていく。
てくてくてくてくてくてくてく
「ここだ」
案内された場所は大きな鉄の扉の前だった。
もちろんかなり地下深くにあり。周りには俺たち以外誰もいない。
「こんな場所があったんだ?ここに花梨が・・・」
松井がそんなことを呟いた。
それは明らかに女性の名前だった。あれ?友人って言ってなかったけ?
まあいいけど。
「さて。じゃあ扉を開けるぞ」
加藤先生が扉の近くにある電子版のようなものを操作し、扉が開いた。
その瞬間一気に冷風が舞い込んだ。
「寒」
松井が寒さに驚き声をあげる。
まあ。俺は死霊神なんで寒いっていのは分かるが寒くはない不思議な状態だが。
「まあ。一応死体を保存してるからな、念のためにこの部屋自体の温度を下げて、もしカプセル内で異常が起きても大丈夫なように冷凍保存させている」
「確かにそうですね。で、蘇生させればいい死体って、この明らかなカプセルに入った人たちですか?」
「ああ。そうだ」
扉の中にはSFアニメにでも出てきそうなカプセルの中に特に外傷はほとんど見られないかなり綺麗な状態の死体が9つほど安置されていた。
「ようはこれ全員を蘇生させればいいんですね?」
「ああ。そういうことだ。頼んだぞ。泰斗」
「俺からも頼む。上野」
「任せてください、でもその前にこのカプセルから出して。何か毛布をかけてあげましょう、もしくは着替えさせるとか?」
「確かにそうだな。ちょっと待ってろ。今カプセルを開ける、で、毛布。いや。着替えは女子生徒もいるし。女性職員を呼んでくる」
そう言ってそのまま何処かに走ろうとする加藤先生を俺は慌てて止める。
「ちょっと加藤先生、別に俺の眷属にやらせるんで。そんなことをしなくてもいいですよ」
「そうか。そういえば泰斗には眷属がいたな」
「はい。という訳で万死手・ヘカントケイル、後は頼む。準備が終わったら言ってくれ」
俺のその言葉に俺の右腕から白色の手が生えて来てグッジョブをしてくれる。どうやらオッケーのようだ。
そしてそのまま大量の手が俺の右手から生えて出てカプセルの前に綺麗に並び始める。
「それじゃあ、加藤先生、後松井俺たち男は外で待ちますか」
「そうだな。じゃあカプセルの開け方だけ教えておくって?あれ?開いてね?」
【主様、簡単なつくりでしたので、こちらで開けておきました。後少々死体の内部に痛んでる部分があったので。そこを治癒させてから主様の元に運びます】
万死手から念話がきた。いやはや流石四天王の一人だけあって優秀ですね。
【オッケー。分かった】
「あ。加藤先生、俺の眷属が勝手に終わらせました。取り敢えずここは寒いですし戻りましょ」
「あ、ああ。そうだな」
あっけにとられる加藤先生をよそに俺と松井はサクッと部屋を出る。
加藤先生も慌てて出る。
三人とも出たら扉を閉めて近くに座って待機する。
そうして待つこと5分。
【主様。全ての死体の損傷を治し、服を着替えさせ、闇空間に仕舞いました】
【オッケー。ありがとう。じゃあ俺の手に戻ってくれ】
【分かりました。主様】
死霊転移で俺の目の前に万死手が現れてそのまま手の中に戻っていく。
「さてと。じゃあ今から蘇生を始めるよ」
俺はそう言って闇空間から9人の死体を取り出す。
「ああ、頼む上野」
「くれぐれも無理はするなよ、上野」
相変わらず心配してくれる加藤先生。いやはや優しいですな。
「いうても一瞬で終わるしデメリットはないから安心してくれ。というわけで、甦れ」
俺のその言葉。
たった一言甦れと言っただけで全員が目を覚ます。
「ここは、一体・・・確か私は死んだはずじゃ」「僕もあの魔物に殺されたはずじゃ・・・」「でも、ここ明らかに病院じゃないぞ・・・」「記憶が曖昧だ」「どういう状況だ?」「あれ?俺はがれきの下敷きになって死んだはずじゃ・・・」「確か少女を助けて・・・」「あの化け物に殺されたはずじゃ・・・」
「あれ?加藤教官?それに松井君も、どうして?」
蘇った人たちが思い思い困惑をしだす。
それはまあ、そうだよな。
「花梨~~~。良かった。蘇ったんだね。ああ。本当に良かった」
松井がいきなり一人の女性に抱き着いた。
うん。これは彼女っぽいな。いや最初からそういえよって。何だこいつ?自慢か?少し腹立つな。まあいいや取り敢えず事情を説明してあげるか。
「加藤先生。私たち蘇ったんですか?」
一人の男子が律義に手をあげて質問をしてくる。
「ああ。そうだ蘇った。多分」
ただ。加藤先生は困惑をしている。まあうん蘇らせたのは俺だし。あまり無責任かつ楽観的なことはいえないからな。
「加藤先生。俺が責任を持って説明をします」
「すまない。泰斗任せた。俺は今から上に行って、今回の件を報告してくる」
「オッケーです。加藤先生、任せといてください」
「ああ。任せた」
そう言って走り出す加藤先生。
さてと、じゃあ説明を始めますか。
「取り敢えず、色々と困惑してると思うがお前らは一度死んだ。そんで俺が蘇らせた。異論は認めない」
俺は敢えて膨大な魔力を放出しながらそう言った。
これで変に突っかかってくる馬鹿はいなくなるだろう。
その証拠に未だに松井と熱い抱擁を繰り広げてる花梨ちゃん?を除き全員が正座をして頷いた。ちょっと魔力込めすぎたかも。反省反省っと。
「一応。今回の蘇生にあたっての俺のデメリットはない。強いて言うなら少し面倒くらいだ、逆にお前らにデメリットもない。今回の蘇生は人間での蘇生だから。能力とかも前と一切変わってないと思うし、寿命とかが縮んだりもない。そこら辺は安心しろ、そんでもってお前らに何かを求めようとかも思ってない。ただ昔の友人に頼まれたから蘇生しただけだ、感謝とかはいらん。一応俺は億万長者なんでな。以上。分かったか」
「「「はい」」」
俺の適当な説明に一斉に頷く8人。
いやはや俺の魔力効果強すぎ。
「上野。本当に本当にありがとう」
松井が俺の元に来て何度も頭を下げてくる。
「別にいいって。それよりも、お前彼女いたんだな?」
「いや。彼女じゃない。友人だ。そのまだ付き合ってない」
急に小声でぼそぼそって言う松井。
うん。さっきあれだけ熱い抱擁を交わしたんだ、脈しかないだろ。告白しろよ。末永く爆発しとけよ。
「ハア。早く付き合え。絶対に脈ありだろ、ホラ俺が見ててやるから告白してこい。最悪骨は拾ってやるよ」
「え、でも。緊張するし。いや。ごめん上野。行くよ俺。何も出来ないまま花梨が死んだときのあの苦しさを考えたら。何を緊張する必要があるんだ」
「お。その意気だ。頑張ってこい」
そして松井は花梨さんに近づき、盛大に腰を曲げて言った。
「俺と付き合ってください」
「え?あの、えっと。その今私結構この状況に困惑して。返事は少し待ってもらっていいかな?」
おっと、まさかの振られた。いや。まだ振られてはないけど。オッケーの可能性あるけど。いや。うんそうだなオッケーの可能性の方が高そうだな。
「分かった。いくらでも待つよ」
そう言って顔をあげた松井の顔は凄く晴れやかそうだった。
現実世界にできたダンジョンで気が付いたら最強の死霊神になっていた戦闘狂の話 ダークネスソルト @yamzio
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