第141話・スキル【蘇生】

「お客様、他のお客様のご迷惑となりますので。叫ぶ等の行為はおやめください」

  当たり前かもだけど普通に店員さんから注意をされた。

 まあ、松井叫んだからな。しょうがないと言えばしょうがないな。


「すみません」

 普通に謝る松井。


「次したら出禁ですからね」

「はい。本当にすみません」

 そんな訳で店員さんは去っていった。


「さてと。少し話が脱線してしまったな。それで?上野が死霊王ってのは本当なのか?」

「何度も言っているだろ。本当だよ」

「そうか。まあ、そんな嘘をつく人間でもないし。本当なんだろうな。でも、あの上野が死霊王か。ハア」

 大きなため息をつく松井。

 いや。なんか不服そうだな。


「おいおい。そんなあからさまにため息をつくなって?別によくないか俺が死霊王でも?」

「まあ、悪いとは言ってないけど。実は俺死霊王に少し憧れを抱いてたんだよな」

「ほお。どうしてまた?」

「それはまあ。強くて数多の眷属を従えて犯罪者共をバッタバッタとなぎ倒して、同い年とは思えない程の偉業を成し遂げた存在だぜ。その上で公の場にはめったに姿を現さないっていうラノベみたいなことをやっている。憧れない方が無理あるだろ」

「まあ。そういわれるとそうだな。一応行くが松井の中にあった死霊王のイメージってどんなん?」

 前廊下でぶつかった少女に驚かれた件もふまえて、そう気になったので質問をしてみる。


「そうだな?基本一人で活動をして、味方なんてのはつくらない孤独の英雄。敵には何処までも残虐で残忍で刃向かった者を簡単に皆殺しにする、生と死を自由自在に操り身長2メートルを超える大男?そんで角が生えてて目は赤色で、あ、禍々しい翼が生えてるってのもあったな」

「いや。おい、何だよその化け物は?人間じゃなくて鬼じゃん」

「まあ、そうだな。でも禍々しい翼が生えてるってのは本当だってクラスの皆から聞いたが?」

 闘技場で翼を生やして空を飛んだのを思い出す。


「まあ、それは本当だ」

「いや。結局人間じゃないのか。草。禍々しい翼が生えてるって種族絶対人間じゃないやろ」

「まあ。否定はできない。そういう松井だって人間じゃないだろ。そのマッシュルームカット、種族キノコ人間かクリボーだろ」

「いや。俺のチャーミングポイントを馬鹿にするな。まあでも、否定できないんだよな」

 少しノリツッコミを松井がした後。少し暗そうな表情を取る。

 これはまさか?本当に種族キノコ人間だった?


「え。まさか、本当に人間じゃないのか」

「いや。そこは人間だよ。ただ、ダンジョンで光輝くスキルの書から【超キノコ頭】っている。常に髪型がマッシュルームカットになるっていう不思議なスキルを手に入れてしまってな」

「ハハハハハハ。草しか生えんって。ハハハハハハ」

 俺は松井の哀愁のこもった声に腹を抱えて笑ってしまう。

 いや。これが笑わずにいられるかよ。なんだよう【超キノコ頭】って、どんなスキルだよ。

 腹が痛い。


「おい。そんな笑うなって。今度こそ出禁をくらうぞ」

「ああ。そうだったな。すまない。いやしかしなるほどね。そういうスキルがあるのか?」

「本当に俺も驚いたよ。まあ気に入ってるからいいけど」

「いや。気に入ってるのかよ。じゃあ、ええやん」

「あ。そうだ上野。少し非常識かもしれないが一つ頼み事いや質問をいいか?」

「いいけど?どうした?」

「いや。すまない。こんなことを頼むのは図々しかった。忘れてくれ」

 いや。滅茶苦茶に気になるんですけど?

 忘れてくれって忘れられないよ。というか質問じゃなかったん?


「いや。なんだよ。そんな言い方される方が気にあるだろ。教えてくれよ、まあ無理なことだったら普通に断るけど。俺が出来る範囲だったら手を貸すぜ。一緒にエロ本を読んだ仲じゃないか」

「上野。ありがとう。・・・、なあ、人を生き返らすことは出来るか?」

「出来るけど?」

「ほ、本当か」

「ああ、本当だとも。といっても死体の状態が多少はいいことと死んでからの月日がそこまでたっていないことが条件として存在するぞ。今ここで織田信長蘇らせろってなったら。それは無理だ」

「いや、そういうのではない。生き返らして欲しい人は俺がこの学校で出会った友人たちだ」


 ・・・・・・・・・


「え?」

 なんか想像の斜め上の人を蘇らせて欲しいって言われたのだが。

 この学校の友人って、冒険者育成学校だよな?そんな人が死ぬようなこと。あったわ。うん。思い出した魔物暴走の時か。

 でも大分前の事件だし、火葬されたうえで埋葬されてね?そんな死体を蘇らせるのはいくら神とはいえ無理だぞ。

 逆に言えば多分神となった俺ならばそこそこ死体が綺麗な形で残って入れば蘇れそうだけど。


「その友人たちの死体の状態次第だ。火葬されて埋葬されてたら無理だ」

「それは大丈夫だ。ダンジョン連合の方で抱えている蘇生魔法が使える蘇生班がいるからという理由で特殊な液体に漬けた上で凍らせてある」

「じゃあ。行けそうだな」

「ほ。本当か。やった~~~~~~~~~。ありがとう上野」

「おいおい、そういうのは蘇ってから言えよな、ただ、それ?先生に何か言わなくていいのか?」

「あ。確かにそうだな。今から電話してくる」

 そんな訳で松井は席を外し、スマホを持ち電話をしにいった。


 俺はそれを横目で見ながらさっき聞いた、蘇生班について考えだした。

 蘇生班・・・人を蘇らせることのできるスキルを持った存在。ダンジョン連合が作った組織。確か前ダンジョン連合にある資料で読んだ覚えがある。

 蘇生班のメンバーは全員ダンジョン連合によって奴隷化のスキルで縛られている犯罪者集団。

 確かそのスキルは自分の寿命や生命エネルギーを犠牲にして人を蘇らせるスキルだった筈。

 そのスキルの名前は【蘇生】ダンジョン連合が保有しているダンジョンに出てくるスキルであり。一般人は絶対に獲得できないようにダンジョン連合の方から禁忌に設定されているスキル。

 出てくるダンジョンも限られているから、確か全部ダンジョン連合が保有してたな。


 うん、闇の感じる組織なんだよな。

 まあ、蘇生班全員が処刑レベルの犯罪者だからいいんだけど。正直死霊魔法覚えて、そこそこの魔力があれば、魔力消費のみで死者蘇生出来るのだが。俺はそれで出来た。

 あれ、でも、おかしくないか?

 だって、もしそうなら他に気が付いてる人いるやろ?

 というか俺の記憶が確かなら死霊魔法を操り様々なダンジョン攻略とスキル獲得をしてる死霊魔術師がいたな?

 でも。その人に対するインタビューで死霊魔法を使って死者は蘇らせれないって断言されてたな。


 もしかして?俺が天才だったとかじゃないよな?


 スキルにも適性が才能があり。才能のある人の風魔法は普通の人の倍の威力を持つって聞いたことがあるな。

 というか実際の事例で光り輝くスキルの書から【超回復魔法】を手に入れた人がいたらしいが適正がなくて普通の回復魔法よりも回復力が劣ってたって話。

 確かそのスキルを獲得した人は。あの超絶大英雄純武だったな?

 そんでその時笑いながら、「俺には戦いの才能があるから回復魔法の才能なんていらねえ」って笑ったのは有名な逸話だな。


 となると。俺が死霊魔法ひいては闇魔法とかに適正が常人をはるかに凌駕するレベルの才能があったということか?

 なるほどね。そんで俺並みの才能がないと死者蘇生なんてのは無理かってなったら。まあ、見つからないわな。だって自分で言うのもあれだが、俺はダンジョンに潜り数か月で英雄クラスの力を身に着け。その上で異世界に行き神にまで至った、化け物なんて言葉が生温く感じる存在なのだから。

 そう思うと俺超すごいな、そんでもって納得できるな。


「上野、オッケー貰えた。今から学校に戻って蘇生頼めるか」

 俺が一人結論を出したところで松井が話しかけてきた。グッドタイミングだな。


「ああ。いいぜ。じゃあサクッと。行くか。とその前にメダル預けてからでいいか」

 俺はメダルが入った籠を振りながらそう言った。


「ああ。そうだな。俺も預けるわ」

 そうして二人でメダルを預ける。


「じゃあ、手を繋げ、サクッと転移するぞ」

「上野、転移魔法を使えるのか?」

「いや。違う。正確に言えば死霊魔法の応用だ。まあ実質的には転移魔法と変わらないけど」

「そうか。それでも凄いな」

 そう言って俺の手を握る松井。


「さて、じゃあ死霊転移」

 俺は学校に転移した。


 ―――――――――――――――――――――

 補足説明

 いつか書こうと思ってついつい忘れていた設定を思い出したので今更ながら書く設定。


 スキルを獲得しても人によってそのスキルの扱えるレベルはかなり変わります。

 もちろん基本的にはそこまで大きく変わりませんが。極稀に主人公こと上野 泰斗や勇者・勇気のように何か一つの属性の極端に偏った才能を持つ存在が表れます。

 ただし、その代わりに一部スキルを獲得してもほとんど力を得られないというデメリットも存在します。

 まだ主人公は気が付いてないのですが、主人公は火魔法・水魔法・風魔法・土魔法系統のスキルを獲得しても絶対に扱うことが出来ません。

 光魔法は。闇の反対なので多少は使えないこともありませんが。それでも、ほとんど使えないにも等しいです。

 そして勇気も同じように闇魔法系統のスキルが絶対に使えません。


 そんな感じで何かに特化した才能を持つ場合は、その代償とでもいうかの様に才能以外の才能がほとんどなくなります。


 これはまだ解明されていない情報であり本編で出てくるの多分先です。


 それはまあ、一部スキルの才能に特化し過ぎてその他のスキルが使えない程の才能を持つ存在がそんなポンポンいませんし。そんな才能の持ち主が自分の才能にあったスキルを獲得する確率もかなり低いです。

 更に言えばそんな才能を持ち運よく、はたまた運命に導かれるように才能に沿ったスキルを獲得したとしたら、その他の自分の戦闘スタイルに合わないスキルは獲得なんてしません。

 それはもちろんいろんなスキルの力を使えるのは良いですしある程度強くなって金を持った冒険者は積極的に新スキルを獲得させていきます。

 だがしかし、そのレベルの強者となる、死霊神・上野 泰斗や戦闘王・超絶大英雄純武や勇者・勇気や筋肉の神の使徒・鉄志などのわざわざそんなことをしなくても人外の強さを持った存在ですので。(なんなら全員人間じゃねえ)片っ端から自分の戦闘スタイルとは違うスキルを獲得なんてしませんから。

 それは才能が溢れる代わりに他の才能が壊滅するなんて気が付けませんよ。


 以上


 いつか説明をしようとしてたけど。すっかり忘れてた情報でした。

 誠に申し訳ございません。


 因みに鉄志は筋肉系統に振りまくって、逆に魔法系統スキルがほぼ全滅してます。ただ鉄志自身も魔法よりも筋肉だっていう脳筋なので、筋肉魔法という理解に苦しむ魔法以外は魔法スキルを持ってません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る