第2話出会いと別れI
「オッサン…大丈夫?」
駅に降りて乗り換えの列車を待っていた私に声をかけて来たその声はとても若かった。
声の方を一瞥し、私は言葉を返す。
「少年、初対面の人間にいきなりオッサンとは失礼じゃないかな?あぁ、ゴメンゴメン…何か心配かけたかな?でも、私はどこもどうもないよ。ありがとう」
歳の頃は娘と同じくらいかな?しかし、なんというか見た目はお世辞にもしっかりしているとは言い難い。この手合いの人間に変な因縁を吹っかけられたら溜まったものではない。私は当たり障りの無いように少年の掛けてくれた言葉に礼を言った。
「いや、顔色悪いし、座ってんのにグラグラしてるし大丈夫かな?って…まぁ、大丈夫なら良いんだけどさ」
おや?見かけによらず、この少年は優しい人なのだろうか?久しぶりに誰かに心配された気がするが私はそんなに酷い状態だったのか?
「少年、君は見た目によらず優しいんだね」
見た目によらず…とても正しい表現だと思う。金髪坊主で耳にはピアスだらけの眉毛も有るのか無いのか分からない様な顔が痣だらけの学生服を着た少年に第一印象で、優しそう!なんて思える人間なんかいるはずはない。
「見た目によらずって…wオッサンも大概失礼じゃんw」
「いや、確かに。すまなかったね。しかし、こんな時間に君の様な形をして、こんな所にいると、どうしてもオジサン達は最初はそういう目で見て警戒してしまうんだよ。申し訳ない」
「そうだよな〜…まぁ、しょうがねぇかw…痛ててっ…」
笑うと傷が痛む様だ…よく見ると唇も切れて、耳も半分ほど裂けている。
「私の事を心配してくれるのはありがたいのだが、君の方こそ大丈夫かい?大怪我をしているじゃないか…救急車とか呼んで病院に行った方がいいんじゃないか?親御さんに連絡してちゃんと医者に診てもらわないと」
「親、居ないし」
私に少し被せ気味に少年は応えた。
「これくらいの怪我で病院なんて行かないってwダセェwそれに、慣れてるしw」
そう痛そうに笑う少年の瞳に私は車窓で見た自分の姿を重ねてしまった…
諦めの眼差し…しかし、彼には些かまだ早い。
だって、若いのだから。
全てを諦めるにはまだ余生の方が長いのだから。
遺思 @pochi1n
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