第2話 友達第1号

(正門はこっちだっけかな?)

 オレはクラス表を見に正門に向かっているわけだが周りから見たら変な奴だろう。

入学式が終わったのは9時15分。9時30分には教室に集合するように言われているため、残り時間は15分しかない。そのため皆一斉に講堂から教室に向かっているのにも関わらずオレだけ逆方向に向かっているのだから。


 もしかしてオレは理事長の話に怯えて学校から去ろうとしている可哀想な奴として見られているのではないだろうか。

全然そんなことないぞ!むしろ早く教室に行きたいくらいである。


 1学年250人いるため、1年生は1クラス約30人ほどで8クラスあるらしい。パンフレットに書いてあった。ただしこれは1年生に限った話。2年生になったら250人なんていないのだから。


 そんなことを考えながら早歩きしているうちに正門に到着した。

(あ、あったあった。オレの名前はどこだろ?)


 正門のすぐ側にある白い壁にクラス表は貼ってあった。全ての貼り紙は色が異なっていて8種類あった。この中から名前を探すのは面倒くさいな。ただ、皆は大勢の人がいる中で自分の名前を探していた分けか。さぞ大変だったことだろう。


 あった!!4組 4番 才賀一馬さいがかずま

オレは4組か。見たところ出席番号は名前順らしい。これは他の学校と変わらないな。もしバラバラだったら学校側の意図があるという可能性もあったがどうも違うらしい。


 オレはクラスのメンバーの名前をじっくりと見ていた。

早く名前を覚えて損はないと思ったのだ。


 しかし、あまりにも夢中で隣にいる人の目線をガン無視していたのだ。


「あ、あの!」

(え?誰だこの人。てか隣に人がいたとは。気付かなかった、もしかして影が薄い?)


オレは自分がただ気付かなかっただけなのにその人が影が薄いということにしてしまうクソ野郎である。

ひどい言い訳だ。誰に言い訳しているのかは分からないが……


 ただ今回の場合、この言い訳は言い訳として成立していなかった。

なぜなら彼女は影が薄いとは決して言えないようなあまりにも綺麗な女性だったのだから。


 ふっ、このオレが魅入ってしまうとは。

中々やるじゃないか。

しかし!それは君の顔が良いからだけではない。

桜の効果もあることを忘れるな!


 桜は綺麗な花だ。

薄いながらも存在感を放つ美しい花。

桜は周りのものも同じように綺麗にしてくれる。

まあ、綺麗なように錯覚してしまうだけだが。


 築何十年も経つようなおんぼろな学校でも桜が咲いていれば何故か綺麗に見える。

壁の傷や亀裂などは消えないが、それらが何故か目に入らなくなるのだ。

そこに顔面偏差値25くらいの女性がいたとしても綺麗に見えてしまうのだ。


 嘘だ。


 流石に顔面偏差値25は化け物だからな……

ただ、そこに美人が立っていたとしよう。

桜が咲いていれば、なんてことでしょう。

美女はスーパー美人にランクアップ!


 ただし、どちらにせよこの女性は綺麗な顔立ちをしている。

このオレが付き合ってあげてもいいレベルに!


 嘘だ。すいません。

オレは誰に謝っているのだろうか……


「はい、どうしました?桜子さん」

(はっ、桜に気を取られすぎて知らない女性の名前を勝手に桜子ということにしてしまった!)

「え、なんで私の名前を知っているんですか?」

「え?」

「え?」


 なんで当たってるんだよ……

「あ、あの信じてもらえないとは思うんですけど桜があまりにも綺麗だからノリで言ってしまったんです! そ、そう! 条件反射ってやつです!」

(まずい、引かれる。早速女子に嫌われてしまうのではないだろうか)


「ふふっ」

その女子は上品に笑った。

「し、信じてください! ほんとなんです!」

「ええ、信じますよ。それにしても面白い方ですね」


 天使!!!!!!

この子は天使だ。

普通だったら絶対に引くはずなのに。

なんていい子なんだろうか。


「よ、よかった。やばい奴認定されるところでした」

「そんなことしませんよ~」

 彼女は笑いながら言う。笑い方も天使だ。

「私、天王寺桜子てんのうじさくらこといいます」

「あ、オレは才賀一馬です」

「よろしくね、一馬くん!」


 ぐはっ!!

なんという威力。

メイウェザーのパンチより強烈だ。


「こ、こちらこそよろしくね。天王寺さん」

「うん! ただ天王寺さんじゃなくて桜子って呼んで」

「わかった! あのさ、クラスは違うみたいだけど教室近くまで一緒に行かない?」

「うん、いいよ!」


 はい、きたー!!

「人間は 勇気があれば なんでもできる by一馬」

(なんてひどい出来だ)


「オレは4組なんだけど、桜子はオレの左隣にいたし、5組?」

「うんそうだよ。一馬くんと一緒のクラスじゃないのは残念だな~」


 もう1回ぐはっ!!

強すぎるよ桜子。


「折角友達ができたのに残念だな」

「友達第1号だよ!」


このまま彼氏1号にもなっていいですか?


「一馬くんはさ、この学校のシステムどう思う?私はちょっと怖いかな」

「確かにちょっと怖いのは確かだけど、それ以上に楽しみかな。だってさ、こんな学校普通無いじゃん。中々に面白い経験が出来る気がするんだよね」

「一馬くんの考え方かっこいいね!」


才賀一馬ノックダウン。勝者は天王寺桜子だー!!

動じるな才賀一馬。かっこいいのはオレではない。オレの考え方だぞ。

(それってオレがかっこいいってことじゃね?)


オレは桜子とこの学校についての話をしているうちに教室の近くまで来ていた。


「よし、着いたね。じゃあね桜子」

(もうちょっと話したかったな=)

「うん、じゃあね。クラスは違うけど仲良くしてね!」


当たり前やないかい。

仲良くしまくります。


「もちろん!」


桜子は左へオレは右へ、各々のクラスの方に向かう。


入学初日から同じクラス以外の人と仲良くなれたのは良いことだ。

しかも超絶可愛い女の子と。

(オレってこんなにちょろかったっけ?)


よし、緊張するけど教室に入ろうじゃないか!

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