66.
「おお、戻ってきたか!! ドウェルの英雄よ、この日は歴史に残るであろう!!」
アリたちの巣から戻った俺たちは第一作業場を制圧したあとに一時的に封鎖して、ドワーフの街へと戻ってきた。するとアルヴィス王自らさっそく歓迎してくれる。
まだ気が早いだろって話だが、ここ最近彼らの間で明るい話はなかったのだ。仕方のないことだろう。会議室での議題は今回のキーになった魔法銃剣だ。
「これが鉱山アリを倒したという魔法銃剣か!! すごいのう!!」
「これさえあれば、あんなアリども敵ではないわい。流石はボーマンじゃな。こんなものを作り上げるとは!!」
彼らはドワーフたちの重鎮はアスガルドの兵士たちがつかっていた魔法銃剣を触りながらあーでもない、こーでもないと会話をしている。最初とは違い彼らの目には希望の色がともっているのが嬉しい。
そして、少し落ち着くと、アルヴィス王が咳ばらいをすると、シーンと静まり返り、視線が彼に集まる。
「グレイス殿よ、このたびは第一作業場の奪還まことに感謝する。それでずばり聞きたい。今の戦力で我らは勝てるだろうか?」
彼の一言で俺にすべての視線が集中する。救いを求めるような視線、何かにすがるような視線、様々な視線だが、すべてに共通しているのは俺への期待である。
ここからが、大事だ。簡単には勝てないだろう。だけど、ちゃんと勝ち筋があることを説明しなければせっかく上がった士気もまた落ちるだろう。
「おそらく、魔法銃剣があれば、一対一の戦いならば俺たちは負けないでしょう。ですが、今は数が少なすぎます。このまま真っ向から勝負すれば必ず数で押し負けます」
「そうか……」
俺の言葉に誰かが辛そうに顔を歪ませる。そんななかアルヴィスはまだ何かあるのだろうと期待に満ちた目で見つめてくる。
俺がひそかに行動をしていたことはすっかりばれていたようだ。まあ、かくすつもりもなかったけどな。
「それならば、魔法銃剣をつかえるものの数を増やせばいいのです。アルヴィス王よ、ドワーフたちで魔法を使えるものは何人くらいですか?」
「ふむ、我らドワーフは数多くのものが土魔法を使える。戦闘に出ることがでるのは30人前後だろうな」
「ならば、そのドワーフたちに魔法銃剣を学ばせましょう。ギムリ!!」
「おお、ようやく出番じゃな」
俺が大声を上げると同時に会議室の扉が開いて、ギムリと工房にいる連中が入ってくる。もちろん手ぶらではない。彼らの手には我がアスガルドの魔法銃剣よりも銃身口が一回り短いかわりに、1.5倍ほど大きい銃がある。
「これは……まさか……」
「はい、ドワーフ用の魔法銃剣です。人間が使うよりも一回り小さくすることによって、あなたがたでも、使いやすいようになっています。そして、弾は散弾銃という特殊な弾を使用しています。これならそこまで訓練をしていなくても鉱山アリを射抜くことができるでしょう」
「ボーマン殿のメモを元にわしらで一生懸命作ったんじゃ。その代わり重くて人間には扱えないじゃろうがな」
そう、これは蒸気自動車に積んであるショットガンと、兵士たちが使用している魔法銃剣のちょうど中間の武器である。
あまりの重さに人間では持つことも反動に耐えることもできないが、ドワーフたちならば話は別だ。
「そして、これが坑道の詳しい地図です。これを使って少しずつ鉱山アリの勢力を削っていきましょう」
「おおーー!!」
俺が新たにかきおこした地図をみせて今後攻めるべき場所をしめす。そして、ドゥエル奪還計画が始まる。
ドワーフの重鎮たちがさった会議室に俺とアルヴィスは向かい合っていた。彼にどうしてもはなしことがるので時間を作ってもらったのだ。
「お時間をつくっていただきありがとうございます。アルヴィス様。それでお話というのは……」
「このままでは勝てないということだろう?」
彼の言葉に俺は息をのんだ。やはり気づいていたのか……
「はい、鉱山アリたちはあなたたちもご存じのように知能はあまり高くはありません。何年もかけて、各個撃破をすればやがて、相手は数をへらして勝つことはできるでしょう。ですが、女王アリだけは別です。彼女が我々を排除すべき存在と認識すればやつらはここを一気に攻めてくるでしょう」
「ふむ……グレイス殿は奥で何かを見たのだな」
「はい……数百もの鉱山アリをを見ました。あの物量の前ではドワーフたちが魔法銃剣を使いこなせるようになっても、ここは鉱山アリしか生息しない不毛の地になるでしょう」
あれはすさまじい数だった。おそらくドワーフたちを襲っている鉱山アリは一部なのだろう。あの調子では鉱山にすむほかの魔物たちも犠牲になっているに違いない。
そして、このまま現状維持をしていても、他の魔物や鉱山にある鉱物を喰らいつくした鉱山アリがここにせめてくればどうしようもないだろう。
「なるほど……何もしなくても負け、現状維持でも負けか……だが、その目、貴公に何か策があるのだな」
「はい、その通りです。俺はこれから来るであろうもう一つの援軍部隊を利用しようと思います。そのためにはドワーフ王であるあなたの力が必要なのです。決してまっとうな方法ではありません。ですが……」
言いにくそうにしている俺の言葉に彼は豪快に笑い飛ばす。
「何をいっている。我々はもう、貴公に一生分の借りがあるのだ。ましてや我が国を救うためなのだろう? 何でも言ってくれ。むしろわれらのために力と知恵をかしていただき感謝しかない。もしも、この戦いに勝ったら我らはアスガルドの傘下にくだろう」
そうして俺は彼と今後について話し合うのだった。
この作品のコミカライズの一巻が五月の九日に発売されます。
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