65.
「危なくなったら戻ってくるんだぞー」
「ああ、もちろんだ。ニールここの見張りは任せたぞ」
「はい、任せてください!!」
作戦通り鉱山アリを倒した俺たちは第一作業場を制圧していく。とりあえずとして抜け道を埋めて、奴らが入らないようにしておく。
一時的かもしれないが、時間稼ぎにはなるだろう。今はドワーフの工房で超ミスリル合金で作られた守護者の鎖を作成している。電気がどれくらいまで鉱山アリに有効か読めないが、準備ができ次第にそれを配置する予定だ。
そして、精鋭部隊で女王アリを偵察する部隊を編成した。
メンバーは俺と、ヴィグナ、ガラテアに、カイルだ。本当は三人でいこうと思っていたのだが、カイルがどうしてもと頭をさげたのである。
「こっちの方に抜け道があるようだな。ガラテア先頭は任せた。ヴィグナはしんがりを頼む。カインは俺の前を歩いてくれ」
戦闘を一番戦闘力の高いガラテアに、しんがりを魔法銃剣で応用力のあるヴィグナに任せる。カイルが
俺の目の前を歩かせているのは裏切ったときにいつでも撃てるようにである。
俺は『世界図書館』を使い常に地図を開きながら道を進む。横道を使うとはいえ、ここから先は鉱山アリたちのテリトリーである。警戒するに越したことはないだろう。
「それにしても、すごいなグレイスは……あんなにもあっさりと、鉱山アリを倒すなんて……」
俺にだけ聞こえるようにカイルがささやく。まあ、こいつとしてもドワーフたちが苦戦していた鉱山アリを倒した俺たちに関して思うこともがあるのだろう。
だけど、一つだけこいつが致命的に間違えていることはがある。
「俺の力じゃないぞ。俺たちの力だ。俺の世界図書館で手に入れた知識を使ってみんなで武器を作りだして、手に入れた力なんだよ。誰かから奪った力じゃない。みんなで協力して得た力だからこそ倒せたんだよ」
「みんなで力をあわせるか……」
カイルがかみしめるように繰り返した。かつての彼だったら笑い飛ばしていただろう、だけど俺の言葉を聞いて何かを考えている今の彼にならなどと思って少し期待している自分に驚く。
「マスター危険です!! この奥にはおそろしい数の鉱山ありを探知しました。その数は……数百匹です!!」
「「なんだって!?」」
俺のカイルの声をかぶる。そして、俺たちがガラテアの指さすところから覗くと、所狭しと大量のアリがうごめいていくのが見える。
巣の奥にいる女王アリまでまだまだ先だってのにこれかよ……いや、当たり前か……ドウェルが俺たちの国に負けたのは子供のころだ。その間ずっと鉱山アリがこの山を支配していたのだ。これだけ増えていもおかしくはない。
「マスター、この数はさすがの私でも強行突破は難しそうです………」
「あたりまえだ。そんなことをさせるかよ」
「この数はさすがにシャレにならないねぇ……」
「倒すならもっと数が必要ね、私たちやドワーフたちじゃ足りないわ」
みんなの言う通り圧倒的な数の上ではどうしようもないだろう。数か……だったらちょうどいいやつらがいたな。
「いや、何とかする手はあるぞ」
「流石ですマスター」
「やるじゃない、グレイス。どうせろくでもない手なんでしょう」
「ふふふ、クソ兄貴にも役に立ってもらおうとしようか」
「嫌な予感しかないなぁ……」
俺はにやりとわらって、三人に答えるのだった。
カクヨムコンテストように新作をあげました。
読んでくださるとうれしいです。
『破滅フラグしかないラスボス令嬢(最推し)の義兄に転生したので、『影の守護者』として見守ることにしました〜ただし、その正体がバレていることは、俺だけが知らない』
推しキャラを守る転生ものとなっております。
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