64.VS鉱山アリ2
俺たちが奪還しようとしていた第一作業所はもはや鉱物アリたちの巣になっていた。これだけの数がいるのならば確かにドワーフたちや、カイルたちだけでは突破することはできないだろう。そして、今の俺達ではどうかというと……
「マスターから闘争心を感知しました。かなりの数ですが、我々はこの鉱山アリに勝つことができるでしょうか?」
「ああ、真正面からでは厳しいな……だが、今の俺には鉱山アリに関する知識がある。ガラテア例のものを持ってきてくれ。そして、俺が合図をしたらすぐに突入するようにヴィグナに指示を頼む」
「はい、任せてください。マスター」
そして、俺は『世界図書館』を使って鉱物アリに関する情報を整理する。
-----------------------------------------------------------------------
鉱山アリ
鉱物を食料とするアリタイプの魔物。食べた鉱物を強化し自分の体を覆うため、えさとした鉱物によって強さは左右するためか、より強力な魔力を持つ鉱物を好む。
子供を産む女王という強力な個体と、それ以外の兵隊アリがおり、基本的には女王アリは巣の奥で丁重に保護されているらしい。兵隊アリたちは感情は薄く、痛覚もないため、女王アリの命令通り動くので、アドリブは効きにくい。
まれに強い自我を持つ個体がおり、そういうアリは強力な力を得たら姫アリと共に巣を離れて新しい巣をつくるために旅に出る
-------------------------------------------------------------------
ドゥエルにあった鉱山アリの資料を得た知識で鉱物アリの理解度を深めた結果得た知識である。世界図書館の能力も混じったこの情報は、元のものよりもより詳しい。もっと細かいことを聞けばほかにも色々と教えてくれるだろう。
俺は『世界図書館』というスキルにあらためて感謝する。この力のおかげで鉱物アリは謎の多き魔物から、ただの敵と化したのだから……
「お待たせしました、マスター。これをどうすればいいのでしょうか?」
ガラテアが布にくるまれた四角いミスリルの塊を両腕に抱えて戻ってきた。これが今回の作戦の肝である。ガラテアは軽々と持ち上げているが本来人間が持ち運びできるサイズではない。今回もニールの運転する蒸気自動車に乗せて持ってきたのだ。そして……これだけおおきな塊ならば鉱山アリが運ぶのも時間がかかるだろう。
「ガラテア!! それをあっちのかべのむこうまで全力でぶん投げてくれ!!」
「はい、お任せください、マスター。てい!!」
可愛らしい掛け声とともに、可愛くない質量の金属の塊が第一作業所の向こうの壁に投げ飛ばされて、バキ!! っと鈍い音と共に一匹の鉱物アリが押しつぶされた。
そして、アリたちはというと、一匹がミスリルの塊に触れたかと思うと、そいつが顔を上げて天を仰ぐ。
何を……と思うと、隣のガラテアが顔をしかめる。
「何とも騒がしいですね……」
「そうか、ガラテアにはあいつらの合図が聞こえるんだな。そろそろいくぞ」
「了解しました。任せてください」
鉱山アリたちはまるで、飴玉に群がるアリのように鉱物に食らいついている。おそらく女王アリからの命令はえさを取って来いというものなのだろう。
「って、お姫様抱っこかよぉぉぉ」
「うふふ、マスターはこっちのほうが嬉しいかとも思いまして」
ガラテアが俺を抱えながら下に降りると同時にヴィグナたちもやってくる。そして、兵士たちが隊列を組んで銃を構えた。
「グレイス……あなたが命令を下しなさい。これがあなたのドゥエルを救う一歩なんだから」
「ああ、皆の者うてーーー!!」
「「おおーーー!!」」
俺の号令と共に皆が魔法銃剣を放つ。ヴィグナの銃から光線が発生して、飴のように頭を溶かし、兵士たちの一撃が徐々に鉱山アリたちを削り、何匹かは急所を撃たれてそのまま息絶えていく。
そんななかでも、鉱山アリたちは上質なえさを回収するか、目の前の脅威を倒すのが先か決めることができないようだ。
「はっはっはーー、これが僕の新しい力だ!!」
そして、数少ない接近してきた鉱山アリもニールの蒸気自動車に積まれたショットガンにより瀕死になり仲間の銃撃でとどめを刺されていく。
「勝ったな。ふはははは、アリどもよ、グレイス=ヴァーミリオンの新しい覇道の礎となるがいい!!」
「あのかっこつけてるけど、ガラテアにお姫様だっこされたままよ……」
「ヴィグナ様から嫉妬の感情を感知したしました。ヴィグナ様もやりますか?」
「俺を荷物扱いしないでほしいんだけど!!」
「すごいぞーー!! アリたちを倒したぞー!!」
「ああ、そうだね……」
そうして俺たちは勝利をしたのだった。カイルが驚愕の表情で、本当に嬉しそうにしているルビーに抱き着かれているのをみて、俺はどうだとばかりにどや顔をする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます