63.VS鉱山アリ
鉱山での入り口で俺は魔法銃剣を装備した兵士たちを前に演説をする。
「魔法銃剣隊よ、全員そろったな!! 俺が先導するからみんなついてこい。それと今回はドワーフの姫君もついてきてくれるそうだ。アスガルドの力をみせてドゥエルのみんなを安心させてやろうぜ!!」
「おーーー!!!」
「おー、流石グレイスの部下たちだなーみんな頼もしそうだぞー」
俺の声を合図にルビーが前に出て大声で挨拶を始める。もちろん、今はメイド服ではなく、全身ミスリル装備に魔法銃剣を身に着けている。
彼女にもついてきてもらったのは彼女が望んだのもあるが戦力になるのと、兵士たちのモチベーションアップだ。他国のお姫様の護衛をするのは英雄譚のようで兵士たちの憧れのシチュレーションだからな。
「私はルビーだ。よろしくなー。みんなドゥエルを助けに来てくれてありがとう。感謝してるぞー。みんなの活躍は私たちドワーフの歴史に語り継がれるに違いないと思うぞ。一緒に鉱山アリを倒してほしいぞー」
「おおおーー!! 任せてくれーー!!」
「ロり巨乳最高!!」
「なまりも素敵だーー。それでののしってください!!」
「こんなの脂肪だぞーー。罵る……? ざーこざーこ♡ 兵士さんのへたれー♡ これでいいかー?」
「「おおおーーー!!」」
一部の兵士たちが悪ノリにノリノリで答えるルビーにみんなのテンションが上がる。いや、ルビーのやつあんな言葉どこで覚えたんだよ……
まあ、それはそれとして、あとはこっちの再会がどうなるかだな……俺はにやりと笑って少し離れて様子を見ているカインに声をかける。
「お前も来るんだな。今度はお前たちを守ることになるなんて不思議な気分だな」
「そりゃあね、君たちの力は身をもってわかってるけど、ルビー様に何かあったらいけないからね」
少し自虐的に今は存在にしない腕を指さしてカイルは皮肉を受け流す。お互い戦いしこりも残っているのは事実なので、皮肉を言い合うこのくらいの距離が心地よい。
そんなことを思っていると彼が一瞬びくりとして仮面越しの息をのんだのがわかった。どうしたんだ? と思ったがその理由はすぐにわかった。
「グレイス。一部の変態が盛り上がっているけどあのお姫様のおかげで士気はあがったわ。これならいけそうね。あら……あなたどこかで会ったかしら?」
ヴィグナがやってくると、カイルの視線に気づいたのか、怪訝な顔をする。
「いや、それは、その……」
「ああ、彼はカインっていうらしいぞ。凄腕の魔法使いらしいんだ。誰かと戦って怪我をして倒れていたところをドワーフに助けられたらしい。記憶喪失らしいんだが、ひょっとしたらヴィグナと知り合いかもしれないな」
俺の言葉にカイルがふざけんなとばかりに仮面越しに睨んでくるが鼻で笑う。彼が苦しんでいるのを笑っているとヴィグナが口を開く。
「そう……悪いけど、魔法使いに知り合いはいないから勘違いだと思うわ。あなたはルビー様を大切に思っているみたいね。安心しなさいな。私たちが必ずドゥエルは救うわ。グレイスはすごいのよ」
「「は?」」
そういってヴィグナはカイルに向かってにこりと笑う。その様子に俺だけでなく、カイルまでも間の抜けた声をあげた。
「ん? なによ、グレイス変な顔をして……?」
「いや、だって、こいつは……」
「あ、ありがとう。流石グレイス様の部下だね。優しい言葉が心のしみるよ。僕の魔法も役に立ててくれたら嬉しい」
ヴィグナのやつまさか、気づいていないのか? 俺が正体をばらそうとすると、カイルがあわてて話題を切り替える。
まあ、気づいていないのなら、もっと落ち着いた時にばらせばいいか。ちょっと焦っているカイルの反応を楽しみながら俺は戦いに向けて気合を入れる。
「今のところは順調ね」
「ああ、この通路の広さならば、魔法銃剣の強さも活かせるし、横道も少ないから不意打ちもされにくいんだよ」
「ふふ、流石はマスターです」
既に脳内にある鉱山の地図を『世界図書館』で読みながら、鉱山を進んでいく。さいわいにも俺たちは二、三匹の鉱山アリのグループに三回ほど出くわしたが大して苦戦せずに倒せていた。
魔法銃剣が強力なこともあるが、やはりこちらの数が多いことが活きている。急所を狙う自信がないやつには足を狙わせて、機動力を奪ってから脳を撃たせる作戦が功を制しているのだ。痛みは感じなくても、足が壊れれば移動はできなくなるからな。
「さて、ここからが本番だぞ。ここの先が広場になっているんだが、そこは戦前はドワーフたちの作業場になっていたんだ。そこを取り戻せば多少は……」
「マスター。声を上げない方がいいかと思います。多数の反応を感じます」
「え?」
ガラテアの警告と共にヴィグナがハンドサインで兵士たちに泊まるように伝える。二人の行動に俺は嫌な予感を覚える。
「マスター偵察に行きましょう。失礼します。
「おいちょっと……」
ガラテアは俺を背負うとそのまま、奥の方へと進んでいくとカチカチカチと無数の嫌の音がする。
「マスター上から見たいのですが横道はありますか」
「あ、ああ……そこから上がれば広間が見渡せるはずだ」
途中で掘るのをやめたのか斜めに掘られている通路を指さすと彼女はすさまじい速さで音を立てずに上っていく。
そして、そこから覗いてみた光景に俺は思わずうめき声をあげる。
「まじかよ……」
「生体反応は53。なかなかの強敵ですね、マスター」
そう、今から奪還する第一作業場には大量の鉱山アリが巣くっていたの
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