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アインに鉱山アリの資料を……とお願いしたら困惑しながらもどんどんつんできてくれた。俺はテンションをあげながらどんどん鉱山アリについて知識を頭にいれていく。ドワーフという種族はあんなに豪快だが、意外にも資料をまとめるのが優秀なのかしっかりとしているのに驚く。



「アイン、鉱山アリに関してはもういいぞ。あとはここの鉱山に関しての資料をくれ」

「はい。というかもう読んだんですか? あんなに分厚かったのに……」

「はっはっはー、俺をなめるなよ!! 俺の得意分野は発明と読書だぞ!! このくらい余裕だっての。てか、ドワーフって結構まめな種族なのか? 無茶苦茶わかりやすくまとめられているぞ」

「ああ。彼らは鉱物関係とお酒についてはまめなんですよ。これをみてください」



 俺の言葉にアインが苦笑しながら棚から適当な資料を手に取って見せる。


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『ストーンマジロ』


 硬くて食いにくい。

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 うわぁ……鉱物に関しては鉄とかでも10ページくらい色々とあるというに興味のないものに関しては適当すぎだろ……



「鉱山アリに関しては鉱物として利用価値があるからしっかりと調べていたってことか……まあ、ラッキーだな。じゃあ、ちょっと集中するよ」



 俺は読み解いた資料を参考に次から次へと欲しい資料をお願いしていく。資料は膨大な量だが、徐々に減っていき、俺はそれらをまとめ始める。アインが何かを言って出て行ったが、頭にはいらず反射的に答えていた。



「グレイス、そろそろ飲み物でも飲む?」

「ああ、助かるよ。アイン……あれ? ヴィグナ、なんで? 兵士をまとめているんじゃ……」



 ちょうど考えがまとまったところで話しかけられて反射的に返事をすると、ヴィグナが少し拗ねた様子で俺の横で椅子に座って見つめていた。



「あんたね……恋人をほかの女と間違えないの。というかもうこんな時間よ。楽しいからって集中しすぎでしょう」

「あー、もう。夕方かぁ……」


 

 昼前に来たというのにすっかり、日が落ち始めているようだ。集中がきれると同時に、お腹がすいてきたと主張するように、腹の虫がなる。

 そんな俺に苦笑しながらヴィグナが手に持っていた紙袋から、パンを取り出して、俺に渡す。



「え、これって?」

「あんたのことだからどうせごはんも食べていないんでしょう? お昼をもらってきたから食べなさいな」

「ありがとう。てか、お昼って……? いつからいたんだ?」

「え、それは……その……真剣に調べているあんたを見るのも久々だなって横顔をみていたのよ!! 悪い?」

「いや、わるくはないけど……」



 顔を真っ赤にしてなぜかキレているヴィグナが可愛いなともいつつ、俺はパンを口に含む。食糧難なためか硬いパンだったが不思議と美味しく感じることができた。

 きっと……昔を思い出したからだろう。城にいた時はこんな風に本をよんでいる俺の横に訓練を終えたヴィグナがやってきて、一緒に過ごしたものだ。



「それで、調べてなにかわかったのかしら?」

「ああ、俺の近衛騎士であり、恋人であるヴィグナに教えてやろう」

「ふふ、なんかこれも久しぶりね」



 ヴィグナが楽しそうに笑う。そして、俺はこれまで調べたことを紙にリストアップしながら言葉にする。



「まず、鉱山アリには痛覚がない。それと……一部のアリを除いて自我も薄いようだ。基本的には女王アリの命令をきくからな。そいつを倒せば組織的な行動ができなくなるはずだ」

「ふぅん、じゃあ、その女王アリっていうのをぶち殺せばいいのね。だけど、その顔だとなにか問題がありそうね」



 さすがは幼馴染兼恋人である。俺の表情でわかったようだ。まあ、ボスを倒せば勝ちなんだが、それをするのが困難なんだよな。



「ああ、人間の王と同様に巣の奥に潜んでやがるんだよ。しかも、女王アリへの襲撃が察知されれば、今やどれくらいいるかわからない鉱山アリどもが、まとめて反撃をしてくるみたいだ。だから、今の戦力じゃとうなるか読めないんだよな」

「でも、あんたのことだからもう対策は思いついているんでしょう」



 ヴィグナの言葉に俺はにやりとうなづく。そのために鉱山アリの事だけでなく、鉱山についても調べたのだ。

 


「ああ、もちろんだ。そのためにはやることが二つある。その一つは俺たちの戦力がどれくらいやつらに対抗できるかを知りたい。おねがいできるか?」

「ええ、もちろんよ。いつでも出撃の準備はできているわ」



 心強い彼女の言葉に頷いて、俺達は鉱山で兵士たちと共に戦うことにした。これがドウェルを救う一歩になるだろう。

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