chapter:14
「どうだった、セーラ? あの子たちが倒れてたあたりになにかあった?」
サンバスギルド支部。その支部長室でアンジェリーナとセーラと呼ばれたレプラカーンの少女が話していた。
「ごめん、何も見つからなかった。というより、泉に行くことさえ出来なかった。多分、隠されてる」
セーラがヒロとサラを見つけたのは偶然ではない。初めて討伐依頼に臨んでいた彼らを、アンジェリーナから指示を受けて見守り、影ながらサポートしていた。
例えば、周囲の敵を間引いたり、彼らが死亡した際は可能であれば遺体を持ち帰ったりといったこと。レプラカーンには姿を消す種族特徴がある。こうした影からの見守り任務には向いていると言えた。
泉でドレイクに会ったヒロとサラを助けなかったのは、セーラ1人が加わったところで敵を倒せないと判断し、遺体を持ち帰ることを優先したからだった。
その任務も、敵が2人を倒したほんの一瞬の隙をつかなければならず、もし見つかれば死んでいただろう。
今思い返しても、そこまでして、なぜ自分が彼らを助けたのかはわからない。理由を聞かれれば「なんとなく」と答えるほかなかった。
そしてその件の泉には行けなくなっていた。セーラ自身も斥候として道順の記憶力には多少自身がある。それでも想定した場所にたどり着けない。
となると、意図的に隠されていると彼女は結論づけていた。
「なるほどねー。…妖精たちの力を借りてみようか。うまくいくかわからないけど、その時はその時だね」
セーラの推測にアンジェリーナも同意する。何者かが隠しているなら、その何者かというのはきっと話にあったドレイクだろうが今の段階では推測の域を出ない。
とりあえず泉の話を切り上げ、期待の新人たちに話を移そう。
「あの子たちの戦い方、連携とか作戦立案は大丈夫そう?」
パックリーダーはまだしも、彼らにとって格下であるウルフに後れを取るようでは、この先が少し心配だ。アンジェリーナも期待の新人をむざむざ手放したくはない。だからこそ、セーラについて行ってもらったわけだが。
「その辺りは大丈夫。むしろ2人でよく考えてる方。でも、射手がいないのはつらいかも」
「装備を見た感じ、魔法も使わなさそうだしね」
魔物の中には武器による攻撃が効かない相手もいる。そうした相手には撤退を余儀なくされるだろう。
頭は回るようだが、彼らはどうするつもりだろうか。懸念は残る。
「セーラ、悪いけど、もう少しだけ彼らを見ておいてくれる?」
「わかった」
了解の意を告げて、頼れる斥候は部屋を出ていった。
「それにしても隠すほどの何かが、そこにあるのか…。多分魔域だろうけど…。あの子たちも災難だったね」
アンジェリーナの独り言だけが部屋に響く。
泉にはセーラが助力を諦めるほど強力なドレイクがいて、そいつが泉を隠した。まるで何か大切なものを守るように。本当に奈落の魔域を隠しているのなら、なぜ?
本来であれば、内部で冒険者を迎え撃てば良い。ということは、守りたい何かが魔域の中にあって、それに近づけたくない…とか? うーん、わからない!
考え込む彼女の周囲にはいつしか妖精たちが寄り添うように漂っていた。いずれにしてもそこに脅威がある以上、泉を発見する必要がある。
「彼らの体験を無駄にしないように、頑張らないと。みんなも協力してね?」
それを聞くと妖精たちは、応えるようにゆらゆらと舞うのだった。
………
ここまで読んでいただいて、ありがとうございます!
紹介文にも書いていますが、この小説はpixivで連載しているTRPGシナリオ「ある冒険者たちの話(仮)」の一話目をもとにしたものです。
「もし続きが気になるよー」という方がいらっしゃいましたら、シナリオという形ではありますが、以下にリンクを張っておきますので、ご確認ください。
続きを書いて、という要望がどちらかのコメントであったら、2人のお話を紡いでいこうと思います。
https://www.pixiv.net/novel/series/1447268
SW2.5『ある冒険者たちの話』 misaka @misakaqda
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