chapter:13

 時刻はもうすぐ昼になろうとしていた。ムメイ村を経由し、翌朝。村人の好意を受け取り、ゆっくり目の時間に出てサンバスへと帰って来ていた。


 「サラさん、ヒロさんも! お帰りなさい!」


 サンバスギルド支部に戻ると、いち早く2人を見つけたエナが支部の入り口で2人を抱きしめる。

 ヒロもサラも、血や土埃で汚れた服は途中で着替えている。そのためエナが汚れることは無いが、たとえ彼らが泥んこで帰ってきたとしてもエナは同じように迎えるつもりでいた。


 「ただいま、エナさん。これ戦利品です。確かめてください」


 「…ただいま戻りました。今回は無事、帰ってくることが出ました」


 ヒロが戦利品を渡す横で、サラもむずがゆそうに帰還を告げる。


 「はい、すぐに確認しますね。受付の前で待っていてください」


 依頼を済ませた2人と同じかそれ以上に喜んで見せるエナ。すぐに2階の受付に戻り、バックヤードで戦利品を鑑定してもらいに行くのだった。




 「鑑定完了です。どれも本物。それから、剣のかけら2つも、買い取らせていただきました。報酬の受け渡しをもって、依頼も完了となります」


 そう言って、エナがヒロとサラに手渡した報酬は2000Gちょっと。サラの提案で、半額はギルドに貯金することにするようだ。彼らの借金は、報酬から少しずつ払われることになっている。

 そうして報酬を受け取り、安心した様子の2人。成人したとはいえ、彼らはまだまだ子供だ。サラの方はケガをしている様子。きっとエナの知らないところで、死線を潜り抜けてきたのだろう。

 そんな彼らがいるからこそ、自分たち、市民が安心して暮らすことが出来ている。

 受付嬢として、そうして感謝している人々を代表し、万感の思いを込めて――


「依頼達成、お疲れ様でした!」


 2人の駆け出し冒険者を労わるエナだった。




 報告を済ませ、明るいうちに消費したアイテムを補充したヒロとサラ。回復ポーションを多めに仕入れ、日も暮れ始めた頃。

 ギルド支部に帰ってきた2人を待っていたのは、厳つい顔をした人族のおじさんだった。

 彼は仁王立ちで2人を見下ろす。


 「えぇっと…?」


 「私たちに何か用ですか?」


 恐る恐る確認するヒロ。その横ではサラが武器に手を伸ばし、臨戦態勢を取る。

 そんな彼らに対し、厳ついおじさん――サンバス市民連合会長はにかっと笑って見せ、


 「魔物のねぐらを壊滅させてくれたそうじゃねーか! ありがとうな。これでサンバスもしばらくは安泰だ。感謝のしるしに一杯おごらしてくれ!」


 と、2人の肩に手をバシンと乗せる。困惑する2人をよそに、背後、ギルド1階の酒場に向けて、


 「今日は駆け出しがやってくれたぞ! 宴だ! 酒もってこい!」


 豪快に言ってのけた。それを合図に酒場も一斉に活気づく。


 「あの、僕達あんまりお酒は飲んだことなくて…」


 「そうか? ならジュースでもいい! とりあえず、来い! ほら、他の冒険者とのつながりも大事だぞ?」


 そう言われれば、断りづらい。むしろサンバス市民、冒険者たちとコネクションを作る、願ってもないチャンスとも言える。

 何より、食費が浮く。


「行きましょう。お酒は、わかりませんが…」


「えー、サラまで…」


 こうして新人冒険者を中心とした酒宴が始まる。噂を聞きつけた人々が次々と酒場に集まり、いつしか大きな宴となる。

 こうしてサンバスに今日も、平和な夜が訪れたのだった。

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