第5話 欲望
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それから数日。
おかげさまで足は動くようになったが、鼻の骨折という新たな診断書が追加された。
まあそれは入院するような内容ではなかったので、いよいよ退院の話が出始めた。
もう退屈で死にそうだったので、退院できるのはシンプルで嬉しい。
あの後、一通りの警察沙汰をこなした俺と冬香は、ゆっくりと離す機会を得た。
どうしてあのおじさんがあんなことになってしまったのか、という話から怪獣の話。バラエティ番組の話や冬香の大学の話。
そして、俺たちの話。
結論から言うと、俺たちはもう少しだけ付き合い続けることになった。
まだ俺は冬香をイライラさせてしまうことも多いだろうし、事故の夜からさほど精神的に成長したわけでもない。
欲しいものも、やりたいこともあんまりない。
それでもあの日から一つだけ変わったことはあった。
欲しいものも、やりたいこともなかった俺が、今はひとつだけやりたいことがある。
あの怪獣に感化されて、あのおじさんに意識させられて、ようやくわかった俺の本音。
「なあ、冬香」
「どうしたの?」
俺はずいぶんと久方ぶりに、自分の欲望を口に出した。
「やっぱり俺は、これからも冬香と一緒に過ごしたいや。そんでできれば、冬香と一緒に、やりたいことを見つけていきたい」
そう言うと冬香は楽しそうにからからと笑った。
「やったじゃん。やっと、やっと自分のやりたいことを言葉にできたね」
あの日の怪獣のように 姫路 りしゅう @uselesstimegs
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