死んだ人の事を悪く言うなんて……
@HasumiChouji
死んだ人の事を悪く言うなんて……
「被告は最後に何か言いたい事が有りますか?」
「偶然なんです。彼がやったセクハラを会社に告発したその時には、既に彼が死んでいたなんて知らなかったんです」
セクハラなんて生易しいモノじゃなかった。
その上司は、コネ入社でウチの会社に入った閣僚の息子だか甥だか孫だかだった。
あの夜、その上司からLINEが来た。
『飲み屋の閉店まで飲んでたら終電逃した。お前の家の近くなんで泊めてくれ』
約1時間半後、根負けして部屋に入れた時には……風邪でも引いていたようだった。
その状態で私に対して……早い話が「終電逃した。泊めてくれ」と若い女に頼む男が何を狙っているかの判り易い例となった。
しかし、あのクソ野郎は、あの時、既に体調を崩しており……体重が二〇㎏近く軽い私でも、叩きのめして、部屋の外に放り出すのは楽だった。
翌日、あのゴミ男は会社に来なかった。
そして、私は、会社のコンプラ部門に、あの雄畜生がやった事を報告し……。
だが、その時、既にあの脳の代りにチ○コでモノを考える人間モドキの阿呆上司は路上で野垂れ死んでいた。
私は当然ながら逮捕された。
……とこれだけ書けば、他の国の人達や何十年も前の人達は、容疑は殺人かナンタラ致死だと考え……そして、その程度で逮捕など酷い国も有ったモノだ、と思うだろう。
だが、容疑は……。
「しかし、貴方が死者に鞭打つと云う許されざる行為を行なった事は確かだ。では、判決を申し渡します。被告を全容疑について有罪と認め不老不死刑に処す」
亡者の裁判長はそう言った。
亡者になった、あのクソ野郎は傍聴席で拍手をしていた。
亡者の検事は勝ち誇った顔をして……生者の弁護士はうなだれていた。
いつの頃からか……この国は亡者が生者を支配する国と化していた。
参政権が有るのは亡者のみ。
亡者が生者に危害を加えても……大概は無罪、悪くても前科が付かない罰金刑。だたし、その生者が他の亡者の「所有物」だった場合は器物損壊。
生者が亡者に危害とまではいかなくても、「逆らう」ような行為をしただけで、反社会行為として厳重に処罰される。
そして、私がセクハラの告発を会社のコンプラ部門にやった時、ヤツは既に上級国民である「亡者」になっており……そして、私は……。
最早……余程の事が無い限り、私は、半永久的に上級国民「亡者」となる事は出来ないだろう……。
どちらかと言えば正しい事をしたせいで。
死んだ人の事を悪く言うなんて…… @HasumiChouji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます