第13話
清重は愛馬の白馬に、喜助は城で一番の大馬に跨り、全速力で城を出る。
(父は、時間を稼ぐといっていた。赤蜂とまともに戦ってはいないだろう。距離を取りながら町の人々を守るように立合っているはずである。そうであれば、まだ間に合う。)
喜助は、自分にそう言い聞かせる。
「ところで喜助。術を使う者とはどのような者が現れたのだ。」
「町で噂されておる赤蜂でございます。怪火を操り瞬時に人を煤に変える姿をこの目で見ました。」
「赤蜂とは妖魔であろう。本当にいるのか。」
「私も目の前で見るまでは信じておりませんでしたが、間違いございません。あれは、人でも獣でもございません。まさしく妖魔でございました。」
喜助が自分に対して嘘をつくはずもない。喜助が見たというのであれば、そうなのであろう。
「しかし、清重様。父より、その鳥の曲刀を持ってくるように言い使ったのですが、その刀に妖魔を倒すよほどの力があるとは私には思えませぬ。」
「隆明殿より聞いていないのか?若い頃よりお主の父上は、12の神武について調べていたのを。」
喜助は、目を丸くする。
「父、吉荒に12の神武を集めるよう進言したのも隆明殿だぞ。12の神武についての調べも書き綴っているではないか。その本を読み、その書いてある通りに鳥の曲刀を振るったら先ほどのように鳥の囀りが聞こえ、風も吹いた。鳥の曲刀には風の力があると書かれていたぞ。隆明殿なら竜巻おも起こせるやもしれぬ。」
喜助は、言葉を出すことも出来なかった。毎日、共に過ごしながらも父のことを全く知らなかった。
しかし、これで希望が持てる。父に鳥の曲刀を届ければ、赤蜂をも成敗してくれるだろう。
喜助の顔に笑みが浮かんだ。その瞬間、馬が前足を上げ、急に立ち止まる。清重の白馬も同様に立ち止まり、清重と喜助は馬の首を両手を回して何とか落馬を堪えた。
「何事か!」
十二志怪 @nokonokko
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