月イチで会う、君に捧ぐ

ウワノソラ。

月イチで会う、君に捧ぐ。

 ——はじめにいっとくけど、この手紙は君には見せないからね。


 あたしは君と友達だといい張れる自信がなかったから、あたしと君との関係性は、「単なるバンド仲間に過ぎない」と思ってた。

 だから、君からあたしのことを友達だといってくれたのは正直素直にうれしかったよ。

 

 でもごめんね。

 ここんとこ、真面目にギターの練習やってなくて。それを大目にみて許してもらってることを、いつだって申し訳なく思ってる。

 もっとちゃんと練習しさえすれば、君はもっとのびのびと歌えることは知ってるのに、どうにもやる気がおこらなくてごめん。


 あたしらのバンドのピークはいつくらいまでやったかな。

 多分、バンド組んで二年くらいまでやったね。

 いま思えば、あんなにギターを無我夢中で触ったのははじめてやったし、練習するのがあんなに楽しかったのもはじめてやったような気もするな……。


 あたしが躍起になってギターを触りたくなった理由、わかるやろか?

 ギターの練習いうクッソ地味で面倒くさい作業、もともと性に合わないのになんで頑張れたんやと思う?


 なんでこんな湾曲したいい回しで、見せもしない手紙を書いてるんやと思う……?


 ごめん、端的にいうね。

 あたしは、君が好きだったんよ。

 単なる女友達以上にね。

 だから背伸びするみたいに、練習に励んでいた。

 下手なギターだったとしても、ちょっとでもええかっこがしたかった……。

 君に気持ちよく歌ってもらいたいが一心で、がむしゃらになれた。ほんと単純な話やけど奇跡的にね。


 でも、もうあたしはそういった意味で君のことは好きではなくて、ちゃんと友達としての好きやから安心してな。

 ま、その代わりにギターに対する熱量はめっきり減ってしまったけど、残念ながらこれが本来のあたしの音楽に対するモチベーションなんよね。


 いつもへぼいギターでごめんな。

 あと、倦怠期みたいに惰性で続けてるバンドでごめん。


 それでも、バンド練の日を決めてさえいれば君に会えるから、あたしはバンドの現状維持モードに甘えさせていただいてる。


 いうても君はさ。

 ここだけの話、あたしにとってちょっと特別な友達なままでね。


 であたしは、君と会う口実を作るためにバンドを続けてるようなせこいヤツなの。

 花みたいに可憐で、聡い君が、あたしはやっぱり大好きだからさ。

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月イチで会う、君に捧ぐ ウワノソラ。 @uwa_

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