秋の夜に真実を知る─②

「ねえ、今度みんなで旅行に行かない?」

「旅行?」

「そう!今度の三連休にみんなで!ほら、いろはちゃんの退院祝いもまだしてないし、それもかねてテストお疲れ様ってことで行こうよ!」


テストも終わって、望月さんとあかりと秋斗の4人で教室で話していると、あかりがそんなことを言い出した。


「旅行に行くのはいいけどよ、行き先とか泊まる場所はどうするんだよ」

「それは、もちろん今から考えるに決まってるじゃん」

「考えてねぇのかよ」

「ねえ、もし良かったらなんだけど、私の家、別荘があるからそこにみんなで泊まらない?」


旅行先やら宿泊先で話し合っていると望月さんの口から一つの提案がでた。


「えっ、いろはちゃんの家別荘持ってるの?」

「うん。今の時期なら紅葉も綺麗な頃なんじゃないかな」


望月さんの提案にあかりが食いついた。たしかに別荘の気になるし、紅葉が綺麗というなら行ってみたい。


「いいんじゃないかな。望月さんがいいって言うなら」

「じゃあ決定!今度の土曜日の朝10時に駅前集合ね!」





土曜日の朝。

予定よりも20分くらい早く駅に着くと、僕よりも先に望月さんが駅前に着いていた。


「冬弥くんおはよー」

「おはよ」


望月さんは僕に気づくと、手を振って僕の方によってきた。


「冬弥くん早いね」

「望月さんこそ僕より早く着いてるでしょ」


望月さんは確かにそうだねと笑っていた。


「いろはちゃーん、おはよー!冬弥もおはよう」

「あかりちゃんおはよー。朝から元気だね」


15分ほど望月さんと話していると、あかりがすごい勢いで望月さんに抱きついてきた。


「冬弥達は早いな。何分前に着いたんだ?」


あかりと望月さんがわいわい話している後ろから秋斗が話しかけてきた。


「なんだあかりと一緒に来てたのか。着いたのは15分くらい前だよ。望月さんはそれよりも前にきてたけどね」

「冬弥がそんなに早く来るなんて珍しいな」

「まあ、僕もそれなりにこの旅行を楽しみにしてるんだよ」

「ねえ、秋斗と冬弥も早く行こうよ」


秋斗と話していると、あかりと望月さんがこっちに手を振って呼んでいたので、僕と秋斗も、あかり達の後ろを歩きながら改札の方に向かった。


「そういえば、今から行く別荘ってどんな所なの?」

「それはねー、とにかく自然が綺麗で近くに大きな湖がある所だよ。昔はそこでよく絵を描いてたんだ」

「え!?いろはちゃん絵も描けるの!?」

「うん。今はスランプで描けないけどね」

「そうなんだ、見たかったなー、いろはちゃんの絵」

「また描けるようになったら見せてあげるね。それに、スランプ前に描いたのなら別荘にあるから見ていいよ」

「本当?!やったー!」


そんなこんなで色々と話していると、目的地の駅に着いたので、僕達は一度電車を降りて改札を出た。


「まだまだ都会だねー。ここから別荘までどう行くの?」

「そうだね。ここからはバスで行って夕方くらいに向こうに着くよ。お昼は途中においしいラーメン屋さんがあるからそこでいいよね」

「そうだね」

「いろはちゃんオススメのラーメン屋さんかー、楽しみだなー」


1時間ほどバスで移動すると、さっきまでのビルに囲まれていたのが嘘かのように、見渡す限り木々の緑でいっぱいになっていた。

それから30分もすれば、僕達は望月さんオススメのラーメン屋さんに着いた。


「おなかすいたー。ねえ、みんな何食べる?」


席に着くと、あかりがメニュー表を見ながらひとり盛り上がっていた。たしかに、ここまで電車とバスで移動してきたとは言っても、それなりの時間乗っていたので僕もお腹が空いていた。

色々なメニューがある中で、僕と秋斗が味噌ラーメンとチャーハンのセットを、あかりと望月さんが醤油ラーメンを注文した。


「おいしいー!秋斗達のチャーハンもおいしそうだね。ねえ秋斗、一口頂戴」

「あっ!お前俺のチャーハン勝手に食うなよ!」

「取られる方が悪いんだよー」


僕はそんな秋斗とあかりを横目にテーブルに運ばれてきたラーメンを一口食べる。


「ん!おいしい」

「でしょ!ここのラーメン屋さんは別荘に行く時に絶対来るんだ」

「そうなんだ」


僕達はラーメンを食べ終えると、別荘に行くために再びバス停のある場所に向かった。

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君の一瞬を、僕は描く。 夕暮 春樹 @sidsk0gr9tpkbv0gavmb

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