秋の夜に真実を知る─①
夏休み明け初日。僕は秋斗とあかりのいつものメンバーで夏休みにあったことなどを話していた。
「おっはよー。」
そんななか望月さんが退院明けとは思えないくらいの明るさで、元気よく教室に入ってきた。
「いろはちゃんおはよぉー。もう体調は大丈夫なの?」
「うん、もう大丈夫だよ。心配かけてごめんね。」
「良かったー。でも無理はしちゃダメだよ。」
望月さん来たことに気がつくと真っ先にあかりが駆け寄って行った。すっかり元気になったみたいで、僕は心の中でホッとため息をついた。
「冬弥くんと秋斗くんもおはよう。」
「おはよう。」
「おはよう、望月さん。」
望月さんは僕と秋斗に挨拶をして、鞄を机に置いて僕達のところに戻って来た。
「久しぶりの学校だねー。3人は夏休みにどこか行ったりした?」
「俺はほとんど部活だったな。行ったとしても海と夏祭りくらいだなー。」
「そっかー、秋斗くんテニス部だもんね。うちの高校県でもそこそこ強いから大変だね。」
「って、あかりは望月さんからそろそろ離れろよ。望月さん困ってるだろ。」
「いいじゃん、秋斗には関係ないでしょ。」
あかりは望月さんが移動するときも、話してるときもずっと望月さんにひっついていた。まぁ、望月さんが入院していたのもあったし夏休み中も会えなかったみたいだから、寂しかったんだろう。そうして話してるとチャイムがなったので、クラスが違うあかりは強制的に望月さんから離され教室に戻って行った。
その後、あかりは休み時間の度に教室にきていた。放課後も、あかりはずっと望月さんにひっついていたから、あかりが帰って美術室に来たときには望月さんも少し疲れているかんじだった。
「今日は教室で描かないんだね。」
「まあ今日、来週テストだからって教室に残って勉強していく人が多かったからね。」
「そっか、来週からテストかー。そういえば冬弥くんって、今は絵を描いてるけどテスト勉強はしなくていいの?」
「あー、テスト勉強かー。僕はいつも前日に少し復習するくらいでこれといったテスト勉強はしないかな。」
「えー、嘘だー。そう言って裏で勉強してるんでしょー。冬弥くんいつも点数平均より上だし。」
「そう言う望月さんは勉強しなくていいの?」
「私はもちろん勉強するよ。だからさ、この土日にあかりちゃんと秋斗くんも誘って勉強会しようよ。」
僕は断ろうとしたけど、望月さんの勢いに負けて結局あかりと秋斗も誘って4人で勉強会をすることになった。
土曜日の朝、いつも通りにスケッチブックを広げていた。すると、インターホンが鳴って最初は無視しようと思ったけど、時間が経つ事に間隔が短くなっていき、さすがにうるさく思って出ることにした。
「はいはーい。今出ますからー。」
玄関を開けると私服の望月さんとあかりが立っていた。
「おじゃましまーす。」
玄関が開くとあかりが真っ先に家に入ってきた。
「あ、そうそう秋斗は部活があるから午後から来るって。」
秋斗の姿が見えないと思ったらそう言うことだったのか。
あかりはそう言って僕の部屋に入っていった。
「おはよう、冬弥くん。」
「おはよう、望月さん。先に部屋に行って待ってて、飲み物持っていくから。」
「わかった、ありがとう。」
僕は望月さんが部屋に行くのを確認して、リビングにお茶とジュースとコップを取りに行った。飲み物を持って部屋に戻ると、あかりと望月さんは勉強道具を机の上に広げないでテレビゲームをしていた。
「お、冬弥いいタイミングで来たね。冬弥も一緒にやる?」
「僕はしないよ。そんなことより勉強しに来たんじゃないの。」
「いいじゃん、1回やったら勉強するもん。」
そう言ったあかりだったけど、結局勉強は秋斗が来てからしか始まらなかった。
「ねぇ、秋斗ここってどうやるの?」
「ここはこの公式を当てはめてこうやるんだよ。」
「そういうことね、ありがとう。」
午後からは秋斗も来て4人で勉強をしていると、望月がじっと秋斗とあかりの方をみて手を止めていた。
「どうしたの、望月さん。手、止まってるよ。」
「いや、秋斗くんって頭もいいんだなーって。私てっきり運動はできても勉強は出来ないって人だと思ってたから、少しびっくりして。」
「それわかる!私も秋斗が勉強出来るって知ったときめっちゃびっくりしたし。」
「俺だって好きで勉強してるわけじゃないんだよ。」
「じゃあなんでなんで勉強してるの。」
「ほら、うちの高校って一応進学校だろ?だから部活をやるうえで文武両道ってのが大切にされてるんだよ。だから、勉強ができないとまず部活にも参加させて貰えないんだよ。」
「そうなんだ。秋斗くんも大変なんだね。」
「まぁ、勉強して損はしないから別にいいけどな。」
そんなことを話しながら夕方まで勉強会は続いた。
テストはみんな手応えありみたいで、結果が返ってきたときには望月さんはいつも以上の点数がとれたと喜んでいた。
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