私はお姫様

「漆原さんって、とってもかわいいね!そのお洋服どこで買ったの?」

「メイちゃん、一緒に遊ぼう!」

「だめだよ、メイは私と一緒に遊ぶの!」

「ずるい!ね、メイちゃん、私と一緒にお外行こう!」

「メイちゃん!」

「メイちゃん!」



朝からクラスの中は私の話で持ちきり。

みんな私の取り合いしてるの。当たり前だよね。

私、こんなにかわいいんだもん!



ん?なんか隅の方に一人女の子がいる。

ロングヘアに長い前髪であんまりよく顔は見えない。

なんであんな隅っこで一人で本読んでるんだろう。

みんな私の話してるのにあの子私に見向きもしない。

よし、あなたも私に振り向かせてあげるっ!



「ねえ!一緒に遊びましょ!」

「...」


え、無視?

こんなにかわいい私が話しかけてるのに?


「ねえ、私と一緒に大縄跳びの練習しましょ?来週大縄の大会あるって、先生言ってたでしょ?あっちでみんなもやってるから、一緒にやろうよ!そういえばあなた、お名前なんて言うの?私の名前は」

「漆原芽衣、さん、でしょ?私は、ヒズミ...です」


なんで名前知ってんのに無視するのよ、ていうか声ちっさ!なんて言って...ひずみちゃん?かな?

まあでも可愛いくて人気者の私の名前、知らないはずないか!


「すごい!もうお名前覚えてくれたんだ!メイ嬉しい!ね、一緒に縄跳びしよっ!ひずみちゃん!」

「私、本読んでるから。」


なんで全然誘いに乗んないのよこの子!

あーもういいわ。


「じゃあ、私も一緒に本読むね!ひずみちゃんと一緒に本読む!そしたらひずみちゃんひとりぼっちじゃないもんね!お揃いっ!」


ふふっ。私とお揃いなんてひずみちゃん。あなたなんて幸せなのかしら。


「やだ」




___え?今なんて...



くるっと振り返ってひずみちゃんはどこかへ行ってしまった。

私が、私が誘ってあげたのに、お揃いまでしてあげたのに、なんで、なんで逃げるの?私、こんなにかわいいのに、なんで?


悲しいとか、悔しいとかじゃなく、怒りが込み上げてきた。

なんで私のいう通りに動かないのよ!私は、可愛いの!お姫様なの!みんなのお姫様なの!みんな私のいうこと聞くの!私にみんな従えばいいの!




私は女優顔負けの泣き真似でクラスの皆の元へ駆け寄った。

「どうしたの!?」

「めいちゃんなんで泣いてるの?」

みんなが心配してくれる。そう、みんな私の見方だよね。





「巫さんに、怒られたの。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

可愛い子 巫 歪 @root56nico

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ