寂しいヒト
真砂 郭
「真夜中の憂鬱(メランコリー)」
真夜中は真昼の反対だって言い訳三昧
貴方はどちらで起きている
アタシはどちらで眠ってる
星を散らしてショータイム
煌めいて情念を焚きつけて
あなたの世界
アタシの時間
恨みつらみではらさでおくべきか
執念妄念
魔女の鍋
煮込んでグツグツ
貴方は隣でオロオロすれば
いいじゃない
愛こそすべてとは言わないけどさ
真昼の日差しがまぶしくて
ほら
夜景の揺らぎが懐かしくて
真夜中のタクシーのテールランプは
とってもセクシー
酔っ払いとは昼間のセリフ
夜を抜き去って彼方のアタシ
ブリキ細工のあなたには
さあ
踊りましょ
油が切れた歯車に
注いでみたい
恋愛エキスのほとばしり
石鹸の残り香が惑わせる
(それでもあなたは)
アタシの顔色うかがうの
ああ
やっぱり駄目なのね
何がそんなに恐ろしい
何がこんなに愛おしい
ああ
オジサマ
(それともあなたを)
パパと呼んだらいいのかな
制服姿の少女は問うた
真夜中の交差点
あなたは赤信号に立ちすくむ
いつまで待たせるの
白と黒のストライプ
跨いで飛び越し振り返る
哀れな男に惨めなおんな
「もうこれっきりにしよう」
そんなセリフに興ざめる
おんなのこ
何もしないでその言い草に
何があったというアタシ
真昼の匂いがするあなたには
家に帰るのね
奥さんにお嬢さん
もう寝てるんでしょ
嫌味の一つも投げかける
それでも家にいるからさ
帰ってやらなきゃ
それでもさ
おとこの住処
おんなの住処
お嬢さんには分かるまい
「いい子だから今夜はお帰り」
おとこのセリフは老け込んでゆく
タクシーを呼んであげよう
タクシー代を握らせる
良いヒトぶるな
それでも
少女は握りしめた
こぶしで男の背中に手を振った
何やってんのよう
あたしたち
家に帰るって…
アタシの家は何処にある
アタシは何処に帰ればいい
タクシーの運転手は行く先を尋ねる
何処へ行くの
何か言いたげな口調が見え隠れする
運転手さん、と。
このまま真っすぐでいいからさ
「このお金で行けるところまで行って」
もう帰りたくない
もう戻らない
夜明けにはまだ遠い
星明り月明り
何処かの街角で夜明けを待つの
朝になったら
夜が明けたら
「誰かを好きになる」
アタシは選ぶのよ
アタシを選ぶのよ
あなたに出会いたい
寂しいヒト 真砂 郭 @masa_78656
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