不屈騎士とサラの能力

バーに入って早速、アンナ様は私達に今日の仕事について説明を始めた。

今日は何かと後ろ暗い噂が絶えない貴族の家を襲撃して犯罪の証拠を押さえるのが目的らしい。

ただその邸宅には金に物を言わせた警護が大勢おりアンナ様と私とサラだけでは戦力が心もとないからセクリトに助力を頼んだらしい。

それでそのセクリトの代わりにユウとタマモの二人が助っ人に来た。

今回の仕事の内容と報酬についてアンナ様が二人に説明した後、直ぐにその貴族の邸宅に向かった。

....ちなみにアンナ様が二人に提示した成功報酬は目が飛び出るほど高かった、ほんとこの人幾ら持っているんだろう?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


バーから走る事約30分、私達は目的地にたどり着いた。

その邸宅の持ち主は男爵と貴族の中ではあまり地位が高い方ではない。

だがその邸宅の広さに豪華さ、そして抱えている護衛の多さは一男爵が賄えるものではない。

下手をしたら公爵クラスの規模があった。

どう考えても男爵の稼ぎじゃ不可能な物なのでアンナ様は不審に思いサラを使い不正がないか調べた。

そしたらまぁ出るわ出るわ不正の数々。

脱税、違法奴隷、違法薬物、横流し、etc etc....。

よくもまぁこんなにも犯罪を重ねられたもんだよ。

まぁこれから襲撃するのに相手がクズなのは気兼ねしないでぶった斬れるからそこは良かった。


「それでこれからどうやってあの邸宅を襲うんや?流石に正面からあの警護を突破するのは面倒いから勘弁やで」


「ああ勿論そんな無茶な真似はしないよ。サラ」


アンナ様が虚空に声を掛けると、サラが姿を現した。


「うおっ、びっくりした...!!何やそいつもいたんか。相変わらずそいつの能力は見事やな、こんなに近くに居たっていうのに全く感知出来ひんかったわ」


「このサラは見ての通り自身の存在を他人に認識されない様にする事が出来るんだ。だけどそれだけじゃないこのサラが手を触れている者は一緒に存在感を消す事が出来る。...まぁ一人の時に比べると能力をかける人数が増える毎に能力の精度は落ちるんだけど」


「ええ、それ危ういんやないの?」


「....多分大丈夫です。見た感じあの邸宅の周りにいるのは位階が2、3の雑魚ばっか。私の能力で全員隠しても見つからないと思いますよ」


「そういうわけでサラの能力で全員を隠して邸宅の中にこっそり入って私が探している物を頂く、もし途中で見つかってもタマモとユウさんが敵を迎撃する。これが今回の作戦、どう完璧でしょ?」


「少し大雑把な気もするけど...まぁウチはその作戦でええで。ユウはどないや?」


「俺もその作戦で平気ですよ」


「じゃあこの作戦で決まりだね!じゃあサラよろしく」


「分かりました。それじゃあ皆さん集まって何処かに触れて下さい」


私達はサラの周りに集まりそれぞれが体の何処かに触れた。

サラは全員が触れた事を確認すると、能力を発動した。

全身に何か一瞬膜が張った様な妙な感覚が走った。


「....これで他人から認識されんようになったん?あんまり実感はないんやけど」


「問題なく能力は発動出来たからこれで他の人からは認識出来てない筈ですよ」


「へえ〜ほんまかいな、ちょっと信じられないわ....なぁちょっと試してみてもええか?ぶっつけ本番で能力を確かめるのも怖いし。外にいる護衛の前に出てみてウチらを認識出来ないか試してみようや」


「私は別に構いませんよ。アンナ様構いませんか?」


「ああいいよ、それじゃあ手頃な護衛の前に出てみようか」


そうして私達は貴族邸の護衛の面前に移動した。

だが私達が目前に近づいても護衛の人は全く気付いていない。

ここまで近づいても気づかないとサラの能力はやっぱりかなり強力だ。


「ほら、私の言った通りここまで近づいても気づかないでしょう?」


「ほんまやな....あっ!いい事思いついた♪」


そういうとタマモは護衛の前に出ると面前ギリギリまで近付いた。


「おいタマモ何する気だ?」


「まぁええからええから、黙ってみときい」


そういうとタマモは護衛の目の前で変顔をし始めた。

鼻を上に上げてたり、白目を剥いたりなど、嫁入り前の女がする様な顔じゃない。

ぷっ!こいついきなり何してんだよ....!

突然変な顔をするもんだから虚をつかれてツボに入っちまったじゃないか!

私は急いでタマモの肩を掴んだ。


「おい!お前いきなりなにやって....ぷっ!くくく!とりあえずその顔やめろ!」


「ええ〜!ウチの変顔はまだまだこれからやってのに〜!」


「いいから早くやめろ!」


「へ〜い分かったよ」


私が注意するとタマモは渋々変顔を止めた。


「お前ほんと何考えてるんだよ!?いきなり変顔するなんて!?」


「やって目の前の護衛が本当にウチらの事見えてないんか確認しようと思うて。この護衛ウチの面白変顔見てピクリともせえへんかったから間違いなくウチらの事見えてへんよ」


「...もうちょっと他に確認の仕方があったと思うけど、まぁいいや。これでサラさんの能力の確認は出来ただろう?」


「おう!ここまでウチが悪ふざけしても全く反応がないんや。問題ないやろ」


...やっぱりさっきの変顔悪ふざけだったのか。

こいつほんとこの場で悪ふざけなんて何考えてるんだよ。


「さてサラの能力の確認も済んだ事だし、作戦実行といこうか!」




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裏社会の有力者である俺を王女は手駒に欲しがるけど、俺は王女の部下には絶対ならない! 惣元 誼 @03184475

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