※汐栞の一人語りです※

「好き。なんじゃないかって。気がするんだ」


 凪くんのこの言葉が嬉しくて堪りません。

 まさかの展開にどれほど驚いているか。

 そして待ちわびていたことか。

 頭の中をぐるぐると繰り返してます。

 やっほ〜と言えば木霊こだまする山々のごとくです。

 思い出してもだえてます。

 悶え苦しんでます。地獄の様相ようそうです。

 天国なんじゃないかって?

 いえいえ。苦しいんですからやはり地獄なのです。

 はっきりと言えないのが凪くんらしいのでしょうか。本当に。





 あの日を思い出します。

 そう。鮮明に。

 超高画質テレビと言えるくらいに。鮮明に。


 私は秋葉原に遊びに行っていた――帰りの電車の中でした。

 私の自分への評価は抜けてるというのでしょうか。

 まぁいわゆる――きっとダメダメな子供なのです。

 自虐な話はさておきです。


 初めて凪くんを目にしたのはその電車の中でした。

 抜けてる私は盗撮されていることに全く気が付きませんでした。

 そんな私はいつもの癖のみっともないと言えばよいのかアホな声を出してしまいました。

 恥ずかしさのあまり目眩を起こしたほどに。


 私は私をヲタクだと認識しています。

 ラブコメ展開に強い憧れを持っていました。

 ゲームでのかっこいい王子様に憧れ――徹夜を繰り返す程に。

 私はその展開で舞い上がり天に登りました。

 さっきの地獄はまぁ――ただの言葉遊びです。


 彼は矢代やしろくんと言いました。

 隣が森野くん。


 私はどうにか仲良くなりたいと大声をだして聞き出したのです。

 でも、それしか聞けませんでした。

 今思うとなんとも情けないお話です。

 日頃から六花とばかり過ごしてきた私です。

 男の子と――どう接していいのかわかりません。

 本やゲーム。アニメでは簡単に進むのに。


 そう考えた私はそう簡単にしていけばいいんじゃ。

 わけもわからず簡単に考えてみました。

 六花に相談しました。

 真司くんにも、お母さんにも。

 今となれば凪くんにはバレてると思うなっちゃん。

 それに保奈美ちゃん先生にも。

 みんな色々とアドバイスをくれました。

 本当に大好きな人達です。


 コスモワールドの日も私は色々とありました。

 ですが、正直なことを言えばあまり思い出せません。

 それくらい私にとって。

 そう。今までに無いほど私にとっては頑張った日。

 はっきりと思い出せるのは暗闇の砂浜。

 そこから家までの道のりでしょうか。

 黙ったまま手を握ってくれていた凪くん。

 息が苦しすぎて死ぬんじゃないかと思うほどでした。

 でも嬉しかった。心が震えます。

 ました? ですね。

 本当に嬉しかったと言えます。


 私にとっての凪くん。

 彼はやはり主人公です。

 私にとっての主人公。


「好き。なんじゃないかって。気がするんだ」


 それはさておきです。

 ずっと頭で繰り返している凪くんの言葉。

 そう。台詞です。

 これは愛の告白なのでしょうか。

 私への求愛なのでしょうか。

 欲しい。ということなのでしょうか。

 私は――どう答えるのが正しいのでしょうか。

 偏りすぎた知識では選択出来なさそうです。

 何かを演じていなければ無理そうです。

 コスプレという皮を被らないと伝えられなさそうです。

 返事を。言葉を。





 やはりダメな私は……。

 きっとこう言うのです。





「あばばばばばっ」と。

















※※※※※※※※※※※


幕としては一旦ここで区切ります。

暫く完結扱いにいたします。


※※※※※※※※※※※※※※




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