ぼくらが『怪獣』に見ているもの、そう呼んでいるもの、望むもの

 映画や特撮作品に登場する『怪獣』に魅せられた男の、幼少期から現在までを描いた物語。

 怪獣にまつわる現代もののドラマです。
 いやもう、本当、面白かった……! とにかく重厚というか濃厚というか、読後の満足感がとてつもないです。ちょっと圧倒されて言葉が出ない……。

 文章が好きです。余分な力みや冗長な派手さのない文章で、無駄なものがほとんどなく、恐ろしいほどすいすい飲み込めてしまう。
 手触りとしては淡々としている風で、だからこそ描かれているものが浮き立つというか、内容のひとつひとつが重く突き刺さってくるかのようでした。

 そして本当にただただ脱帽するしかなかったのが、まさにその内容の部分。
 綺麗な三部構成になっており、それぞれで描かれたドラマの分厚さが、しっかり噛み合う形で積み重なっていくため、読めば読むほどに引き込まれます。
 物語全体としては決して安楽なものではなく、重く苦しい描写も山ほどあるのに(あればこそ)、しかし最終盤のあの盛り上がりたるや!
 こればっかりは説明できないので、是非ともその目で読んで体験してみてほしいです。

 物語越しに〝剥き身の『怪獣』そのもの〟をぶつけてくるかのような、とにかく鮮烈な佳作でした。面白かったです!

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