8.わたしを撃ち抜く言葉〈最終話〉
#1 ポプラ並木 (不明、夫と付き合うきっかけ?)
#2 まろん (飼い猫)
#3 まぁ君(夫、元同級生との事)
#4 パパ(実家の父 ❋連絡先がカルテ内にあり)
#5 ママ(実家の母 ❋連絡先がカルテ内にあり)
#6 お母さん(義母:夫の母 ❋連絡先がカルテ内にあり)
#7 夕焼け(#1と関連あるようだが、不明)
#8 さーや姉ちゃんの作ったウェディングドレス(夫の姉が結婚パーティーのために手作りした物らしい)
#9 かあ君(甥)
#10 さーや姉ちゃん(夫の姉 ❋連絡先がカルテ内にあり)
#11 障害福祉センターとその先生(担当の係、嘱託医❋連絡先がカルテ内にあり)
#12 キティ(サンリオキャラクター)
#13 スヌーピー(コミックのキャラクター)
#14 苺ジャム(実家で昔、苺の栽培をして手作りジャムを作っていた)
#15 雪(雪の被害のない地域に出生)
#16 稲刈り(子どもの頃、農家であり、患者も手伝っていた)
#17 クリスマスツリー(クリスマス時期のイルミネーションを全てこう言っている。家族内でこう呼んでいる様)
#18 かぎ針編み (患者は障害福祉センターでかぎ針編みの作品を作り、販売している)
読み終えた時、吐息が胸の中に拡がった。安堵の吐息だった。私は破滅を免れたのだ。彼女の人生の重要な十八のキーワードの中に私が絡むものはなかった。私を撃ち抜く言葉は潜んでいなかった。
でもそれと同時に不思議な、ぽっかりと空いた心の中の空間。私の人生の暗雲は、彼女にこんなにも影響を与えていない。私にすればこれまで一日だって忘れられなかった出来事だった。
あの日、夕暮れのポプラ並木でまりかちゃんと松田君が過ごしたのは幸せな時間だった事を知った驚きもある。その情景はパステル画のように心の中に浮かんでくる。
そして夫のいつかの質問の本当の答えが不意に分かった。
「きみを撃ち抜く言葉は何?」
それは『私のいない美しい世界』。
そう。まりかちゃんの住む美しい世界に、私はいなかった事。
❋❋❋❋❋❋❋
私は次の日、面談の席にいた。前に座るかつての同級生夫婦。窓の外には黄水仙の花壇の見える、麗らかな春の風景。
「妻は今のまま変わらないでいられるでしょうか? 症状が進むのが心配で……」
「変わらないよう、私は先生達と協力して守っていきたいです。今度はちゃんと向き合って」と私が言うと、
「今度は?」と松田君が
「いえ……」
まりかはいつも通り、微笑んで幸せそうにしている。ふと私の手を見て、触れてきた。
「この白くて細い指。昔から憧れてたの。私のおまんじゅうみたいな手と違うから」
え? この指の事は憶えてる? 私の一部分でも憶えてくれてたんだ。ありがとう。
―Fin―
きみを撃ち抜く言葉は何? 秋色 @autumn-hue
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