非モテキモオタですが、悪魔からもらった催眠能力でモテモテに……あれ??

@HasumiChouji

非モテキモオタですが、悪魔からもらった催眠能力でモテモテに……あれ??

「おい、悪魔、出て来いッ‼」

 僕は留置所の中で叫んだ。

 温厚で善良で理性的な僕でも流石に怒らざるを得ない。

「えっと……ここから出せって言うんなら……前に説明した通り、私に魂を売る事になってですね……」

 すぐに出て来た悪魔は、ムカツくほどに呑気な口調だった。

「うるさい、どうなってんだッ⁉ 説明しろッ‼」

 この悪魔と契約して十数日間で、5〜6回は痴漢の疑いをかけられた。

 学校に行けば、女の子達は以前の方がマシに見える目で僕を見ていた。

 以前が豚を見る目だとすれば……この悪魔と契約してからは……腐乱死体でも見るような目だった。


「何で……僕みたいな温厚で善良な人間が、オタクってだけで女の子にモてないかと前から思ってて……」

「はぁ……」

 「悪魔と契約して願いを叶えませんか? 初回はお試しなので魂は不要です」と云うtwitterのプロモtwをタップすると出て来た悪魔は、僕の言ってる事を聞いて、何故か、あきれた顔をしていた。

「あ……あの、どうかしましたか?」

「いえ、大した事では……」

「それで、女の子にモてるようになりたくて……」

「あの……我々にも、一応、職業倫理が有りますので……」

「えっ?」

「後で『こんな筈じゃなかった』と言われても困りますので、もう少し具体的にお願いします」

「はい……じゃあ、催眠能力を下さい」

「はぁッ⁉」

「ですから、催眠能力で、女の子にモテモテに……」

「あの……お客様……」

「何ですか?」

「お客様は……御自分の事を『温厚で善良』とおっしゃいましたが……」

「そうですよ。僕ほど、温厚で善良な人間も……」

「通常、『温厚で善良』な人間は、自分の事を『温厚で善良』だなどとは称しませんし、何なら、そう思っていませんし、ましてや、他人の自由意志を剥奪するような行為には嫌悪感を示す筈です」


 何はともあれ、「最初の願いを叶えても、死後、天国と地獄のどちらに行くかは、僕が人生で何をやったかに依る」「2つ目の願いを叶えた時点で、その後、どんな善行を積もうと、僕は死んだら地獄行きが決定」「『最初の願いを取り消せ』も『2つ目の願い』と見做す」と云う条件で、僕は、悪魔から催眠能力をもらった。

 そして、次の日、学校に行くと……。

 何かがおかしかった。

 いや……何か普段と違う違和感が有るけど、それが何かうまく言葉に出来ない。

 それも、僕にとって良い方向の「何か普段と違う」じゃない気がする。

 そして、朝のホームルームまで、あと5分ほど……。

 隣の席の可愛い女の子の顔色が悪い。

「あ……あのさ……どうしたの?」

 僕は勇気を振り絞って、隣の席の女の子に話しかけ……。

 ボゴォッ‼

 僕の顔に何かが命中した。

 それが何か判るまで……かかった時間は……。

 いや、それが何か判っても……僕の心は、その時、起きた事態を理解するのを拒んだ。

 隣の席の女の子が……恐怖の表情を浮かべて、僕を殴り付けたのだ。

 そして……隣の席の女の子は……ゲロを撒き散らした。


 訳が判らなかった。

 悪魔に催眠能力をもらった筈なのに……学校の女の子達は……僕に目を合わそうとしない……。

 たまに、女の子が僕の方を見ると……その表情は……何かの間違いで、世にも気持ち悪い何かを目撃してしまったかのような……。

 帰りの電車やバスでも、たまたま、近くに居た女の子や若い女の人は、僕の方に近付こうとしない。

 そこそこ、混んでる状態でも、僕から、少しでも距離を取ろうとする。

 それは生き地獄の1日目に過ぎなかった。


「どう云う事だよ? 何がどうなってんだよ?」

 再度、呼び出した悪魔に、僕は説明を求めた。

「あの……お客様の深層心理の問題です」

「はぁっ⁉」

「お客様は、今、私が与えた催眠能力を常時発動している状態です」

「い……いや、ちょっと待って、その……何か……えっと、ここから先の話を聞くのに心の準備が要る?」

「お客様次第です。……まぁ、早い話が、お客様は知らず知らずの内に催眠能力を使っていますが、その能力をコントロール出来ていません。お客様のある思い込みが、催眠能力を暴走させています」

「だ……だから、どう云う事?」

「ですので、お客様は近くに居る女性に対して無意識の内に『催眠』を行ない続けています。それも、『自分は女にモてる筈が無い』と云う思い込みに沿った『催眠』をね」

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