第6話

劉珠はとりあえず宿舎まで案内される。すると自分が指定された部屋から賑やかな声がする

『先に来ている劉どののお連れ方ですか』

『おおかた呑んでいるのでしょう。道中ずっとああでしたので』

見ると中年の儒服男と少し若そうな髭面の武者っぽいのが葡萄酒の甕を抱えて酒盛りしている

『君子の前には酒がある、欠けてるのは兎の肉だな、うわっははは❗』

『兄貴は学があるなあ❗兎どころか虎の肉でも調達してこようか』案内の兵士が劉珠に

『何ですか、兎の肉って』

『たぶん詩経の一句か何かでしょう。義兄の方は公孫といい落ちこぼれ儒者と聞いてますし、義弟は燕姓で都で商家の用心棒やっていたと本人から聞きました』

『どうします?水でもぶっかけますか』

『放っておきましょう。そのうち寝るでしょうから、私はこの近くで時間潰ししますよ』

兵士と劉珠は互いに苦笑するしかない

案内役は任務に戻り、劉珠は建物の影で剣の手入れをする

『この剣には于テン国の玉が嵌めこまれている。そこで産出される玉の中には魔除けの効果があるものもあると聞いている』

師父にそのように教わった

『そういえば于テンは南道添いに西に行けば着けると聞いた。更に西に進めば険しい山々があり、年中雪が積もってる峠を越えると大月氏が治めてる領域だとか旅で出会った胡人の商人が言ってたよな』

ふと誰かが歩いてくるのが目に留まる

『おや、さっき飯屋で見かけた月氏の少年だね?君はこの城に勤めてたのか』

『ボクの師父が偶然この城に居てね。代役として今日から勤務する事になったんだ。お兄さんこそ、漢人の駐屯軍関係者だったって気づかなかったよ』

『正しくは応援に来ただけだけだよ。で、何か用事でも』

劉珠は子供の頃から華陽真人の門下で修行して男ばかりの環境で育ったのでカルブンクルス紅玉が男装女子とは全く気づかない。やたら華奢だな、と思う程度である

『王女の遣いで隊長に会いにきたのだけど。屯田地を襲う犯人らへの対処についての打ち合わせ』

『どうせする事もないし、私が案内しよう』

劉珠は剣を鞘に納めて先を歩く

『それにしても君…ええっと…』

『紅玉でいいよ』

『私は劉珠。それにしても紅玉君は漢語も達者だね』

『ボクの母さんは漢人だったんだ。もっとも去年亡くなったけどね』

『それはお気の毒に』

『それに住んでいた張掖という所は今は漢人が増えたとはいえ元々は色んな民族が住んでる場所だし自然と多くの言語覚えるものさ』

『なるほど』

劉珠が感心してるうちに司令部に着く

『隊長、王宮からの遣いが参りました』

すると

『この件は劉君に来てもらった案件なので、君も会議に加わるように』

と趙部隊長







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

楼蘭王女の憂うつ @kuro100bot

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ