第107話 番外編 幸せな新婚旅行



「おはようございます、剣也君」


 僕が横に眠る金色の髪を優しくなでる。

その様子に気づいたのか、目を細めながら甘えた声でくっついてくる。


「おはよう、レイナ」


 僕は布団の中に手を入れる、


「……ふふ、そこ好きですね」


「大好きです」


 横で一糸まとわぬ姿で眠る嫁。

妄想じゃないぞ? 法的に嫁だ。


 その嫁の二つの双丘を揉みしだく。

柔らかい、なぜ柔らかいものを触ると硬くなってしまうのか。


 人体は不思議だ。


「レイナ……もう一回いい?」


「ふふ、はい♥」



「もう! 剣也君! お昼じゃないですか! やりすぎです!」


「ご、ごめん…つい」


 今は新婚旅行中。

世界を救った勇者、世界を救った錬金術師。

レイナと剣也は結ばれた。


 魔王を倒し、悪神すら倒した世界最強の夫婦。

結ばれた二人は、戦いの螺旋から解き放たれてラブラブの生活を送っていた。


 毎晩まぐわい、今日の観光の予定がすべて崩れるぐらいには。


 体力が化物の二人は、疲れを知らず。

若い性をぶつかり合わせて、快感におぼれた。

でも、幸せだからOKです!


「わ、私も悪いですけど! 今日はもう禁止!」


「レイナだって喜んで…大きな声を…」


「剣也君?」


「いえ、すみません。とりあえずシャワー浴びよっか」


 顔を洗って二人でシャワーを浴びる。

そんなことをすればどうなるかわかっていたのに。



「もう! 夜じゃないですか!」


「君が魅力的過ぎて、あとエロ過ぎ…」


じとーっ


 歯の浮くようなセリフで難を逃れようとする剣也をレイナはじとっとした目で見る。


「と、とりあえずシャワーを浴びて…」


「何回繰り返すつもりですか!! もうだめ! お腹もすきましたし」


 冷静なレイナによって、無限ループは止められた。


 無限ループって怖くね?


 着替えを済ませて外に出る二人。

ここはヨーロッパ、芸術の都パリ。

世界をゆっくり徒歩で回っている二人はついに日本からヨーロッパまで旅行に来ていた。


 海も、空も歩ける世界最強の二人はスローライフを幸せに送っていた。

世界を自由に見て回るというシンプルで、最も贅沢な生活を送る。


「見て、レイナ。エッフェル塔!」


「綺麗ですね……夜のエッフェル塔はライトアップされているんですね」


 世界大厄災の日。

世界中に魔物が溢れ、世界は大混乱に陥った。

それはヨーロッパでも同じこと。


 復興が進んでいるが、魔物の爪痕は多い。

それでも確実に復興しており、多くの人間が手を取り合って世界は元の姿に戻ろうとしていた。


 その大厄災から世界を救った二人は世界的な有名人。

だから今もサングラスして変装しながら夜のパリでデートする。


 まるで海外セレブのようだが、実際認知度でいえばハリウッドスターのようなものだった。


「ご飯何食べたい?」


「そうですね、パリって何が美味しんでしょう」


 スマホ片手に剣也が検索する。


「パリだからね、フランス料理とかかな。あ、この店美味しそう」


 剣也がネットで最高評価のレストランを見つける。

その画面を見せ、レイナも美味しそうと賛成する。


 そして高級レストランのような、荘厳で豪華な門構えのレストランを見つけた。

これぞ上流階級。

そんな見た目をした小太りのおっさんや、厚化粧のおばさんがたくさんいる。

偏見ではないが、金持ちとは基本そういうものだ。


「美味しそうだね、ここにしようか」


「高そうですね、おごってね♥」


「余裕」


 今年21歳になる二人、お酒だって飲める。

あの大厄災から5年、彼女を追い求めてダンジョンに潜った剣也。

 

 その長い月日はいつの間にか剣也のギルドを世界トップのギルドにした。

当時高校生だった剣也は世界を救った英雄に加えて、世界トップクラスのセレブにもなっている。


 彼の錬金という特殊な力は、完治の指輪をはじめとする世界の常識を一変させるような装備品を大量に作り出す。

その装備品の貸し出しだけで、収入は目が回るような金額になっている。

いわゆる不労所得ってやつだ、最高だな。


 剣也の力は、世界征服すら可能な力だが、そんなことはしない。


 そんなことしても嬉しくないし、それよりも彼女と過ごす時間のほうが幸せだから。

今日もまたレイナと楽しく過ごす。


「二人いけます?」


 剣也は日本語で話す。

本来ここは異国の地、しかし意思疎通は可能。

これも装備の力、以心伝心という特殊な能力で言語ではなく、心で伝わる。


「お客様…当レストランではサングラスは…それに」


 ラフな格好の剣也達を見て店員がそんな身なりで来るところは間違っているんじゃないか? そんなことを言いたそうな目で剣也を見る。


「ドレスコードがあるんですか? それは失礼しました」


「い、いえ。もしよろしければレンタルもさせていただけますが。結構なお値段ですよ?」


「大丈夫です。じゃあレンタルをお願いしますね。あと彼女に似合う最高のドレスを、お金は気にしないでください。意外ともってますよ」


 そして剣也はサングラスを外して、ね? っとウィンクする。

その顔を見た店員が驚き、慌てて態度を変える。


「し、失礼しました!! まさか、世界の英雄とは…申し訳ございません! ということはそちらにいるのは…」


「ええ、似合う服をお願いしますね」


 レイナもサングラスを外し蒼い瞳で笑顔を返す。


「ふぁ、ファンです! サインください!!」


 いきなりはるか下まで腰が低くなるウェイター。

真っ赤な顔でレイナにサインをせがむ。

それほどまでに二人の名は世界で知られているということ。


「で、ではこちらへ。サングラスはお付けしたままでも構いません。大変でしょう」


「いえ、まぁ食事のときぐらいは外しますよ」


 そういって剣也はサングラスをしまい、貸し出されたスーツに着替える。

髪をびしっと決めて、オールバックに。


 剣也を見てざわめくフロアを無人の荒野を行くがごとく席に座りレイナを待つ。


「どんな服装でくるんだろうな……」


 そんな期待の中席で待つ剣也。


 しばらく待っていると会場から感嘆のため息が漏れる。

その原因を知りながら期待に胸を膨らませて剣也はその方向を見る。


 美しいブロンドの髪はウェーブで綺麗にまかれて、片方に流しうなじも見えてとてもセクシー。

その蒼い瞳と同じ色の煌びやかなドレスと、胸元が開いた服。

世界的モデルの世界最強の勇者。


 蒼井レイナがゆっくりと剣也のもとへと歩いてくる。


 剣也は口を開けて、目が離せない。


 剣也の前でくるりと回り、艶めかしい顔でレイナが聞く。


「どうですか?」


「最高です!」


 手放しで剣也は喜ぶ。

会場からは驚きの声と拍手が起きる。

剣也がいたことでうすうす気づいていた周りの客達がレイナの登場でまるでスターを出迎えるように立ち上がって拍手した。


「姫、こちらへどうぞ」


 剣也が椅子を引きレイナを出迎える。


「ありがとう、今日は紳士なのね」


「僕はいつだって紳士だよ。勇者様」


 席に座り注文をする。

ワインを頼み、成人した二人は幸せに料理を食べる。


「いやー美味しかった。それにこのワインは良いものだね」


「わかるんですか?」


「いや、ただ値段が高いから良いものなんだろう。正直味はわからん。ぶどうジュースのほうが飲みやすいくらいだ」


「ふふ、まだ子供ですね。私は美味しく感じますよ?」


「でも僕らが酔おうと思ったらここにあるワインすべて飲んでも無理だろうな」


 装備品の力で状態異常無効の二人。


「じゃあ、この装備はずしちゃお」


 レイナが状態異常無効になるピアスを外す。


「レイナ?」


「酔ったほうが女の子は可愛いでしょ? ちゃんと家まで連れてってね。剣也君♥」


 真っ赤な顔で酔いが回ってくるレイナ。

とろっとした目で剣也を見る、その目はまるで誘っているかのよう。


 食事を終えた剣也がそれを見て立ち上がる。


 両方の意味で。


「我慢できない、ムラムラする」


「へぇ? 剣也君?」


「ウェイターさん!」


「なんでしょうか」


「このドレスとスーツ買います。カードで」


「ふふ、かしこまりました。すぐにお手続きいたします」


「剣也君!?」


 支払いを一瞬で終えた剣也がレイナをお姫様抱っこで抱きしめる。


「ちょ、ちょっと? どうしたの?」


「悪いのは君だ、もう我慢できない。そのドレスは……最高だ、エロい!」


「そ、そんな……今朝あんなにしたのに……もうド、ドレスはめちゃくちゃにしちゃだめよ? 高いんだから」


「それは保証できないな…、払ったのは僕だし」


 剣也はレイナを抱いてそのままホテルまで全力で走った。


 その日空には、きらびやかなドレスをした女性を運ぶ一人の変態という名の紳士が現れる。


 世界を救うために、命を懸けた二人のご褒美の時間はまだまだ続く。


 夜は長く、剣也の体力は底知れない。


 状態異常無効を捨てたレイナをめちゃくちゃにした剣也。

翌日の昼まで楽しんで、レイナがまた怒ったのは言うまでもない。


 そんな幸せな新婚旅行の一ページ。


 二人の物語はまだまだ続く。

まだ二人の結婚生活は始まったばかりなのだから。


「や、やぶっちゃいやぁぁあーーーー!!!」





***あとがき****


新作です! 10万文字書き溜めてるので毎日投稿します!

本作を楽しんでくれた方ならもっと楽しめる内容となってますので、どうか一読を!!

作者マイページから飛べると思います!


タイトル

 ヒロインにガチ恋したら、世界が変わった。~世界ランク1位の引きこもりは、青春を捧げたゲームの世界を無双する~


URL


 https://kakuyomu.jp/works/16816927861951071835


あらすじ


  問 ゲームのヒロインに恋をしてはいけないのか…


 現実世界よりも長くあの世界で過ごした気がする。

親に捨てられた少年は、ゲームの世界にのめり込んだ。



 『Kinght of The Giant』世界的人気タイトル。

VRロボット対戦ゲームの世界チャンピオンになるぐらいには。


 青春のすべてを捧げ、二人のゲームのヒロインにガチ恋してしまうぐらいには。



 でもどちらかしか救えなかった。

この糞みたいなシナリオで、どちらかを失った。


 俺は二人を救いたい。

例え決められたシナリオだったとしても。



 その執着が、剣也に不可能とされていたクエストをクリアさせた。


その青春を捧げた操作技術で、ガチ恋してしまったヒロインのために剣也は新たなルートを生み出す。



 突如画面に表示された祝福のメッセージ。


『Congratulations on a fantastic victory!!』


『NEWルートが解放されました、挑戦しますか?』


▶はい

 いいえ


そして物語は始まった。


 ただのゲームがうまいだけの社会不適合者の高校生の物語。


 世界が変われば英雄になれたかもしれない少年。


『Good Luck!』


 そのメッセージと共に視界は暗転した。



 目が覚めると、『Kinght of the Giant』ゲームの世界に立っていた。



 ゲームの舞台となった学園に掲げられる国旗。


 でも日の丸を掲げていなかった。

その時剣也はゲームの設定を思い出す。



「……あ、この世界の日本。侵略されてるんだった」



***あとがき****








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【完結・書籍化決定】俺だけダンジョン装備がレベルアップ! ~追放された無能職の錬金術師は、錬金を繰り返し最強装備を作り出す。勇者も魔王も神々もSSSランク武器には勝てません~ KAZU@灰の世界連載中 @kazu-ta

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