手掛かりは記憶という不確かなものだけ──

異世界転生作品が多量にある中で、「異世界から帰還する」のはごく少数かと思います。
異世界に行っていたのは夢だったんだ、という夢オチでもなくその記憶を持ったまま、現実世界で仲間と再会することを約束し──

その仲間が異世界での記憶を持っていなかったとしたら、実は異世界には行っておらず、そのまま現実世界で生きていたその人だったとしたら、それは果たして同一人物と言えるのだろうか?

ラブコメとありますが哲学のようであり、ミステリーのようであり、記憶喪失ものとありますが純粋にはそれとも違っていて……

一応完結はされていますが続きを構想されていらっしゃるようで、記憶喪失ものの「最後に記憶を取り戻してみんなハッピースッキリおめでとう!」という爽快感は得られないかもしれませんが、心に小さな棘を残していく、いろいろと考えさせられる作品でした。

ラブコメ的なぽんぽんとした会話リレーはありませんが地の文大好き勢にはぜひ読んでいただきたいです。

もしこの続きを書かれることがありましたら、彼らの行く末を見届けたいと思います。