その美しさは朝陽を浴びて煌めく海のように

 美しい。全編通してそう感じました。

 タグにも「創作神話」とありますが、神話の世界を歩いているかのように美しく、切なく、時に身を切るような鋭い痛みを感じながらもその傷さえ美しく感じるような、緻密に編まれた織物のような物語。

 物語は作中時間と神話の時代が交錯し、やがて集結していきます。
 神話の時代の背筋がぴりとするような世界の描写の美しさと、作中時間の現代にも通じる苦悩、心の揺れ動きの描写もとても繊細かつ美しく、各話の文字数(全体で18万文字弱、全14話なので各話の文字数は短編小説一作に相当します)を忘れるほどに見惚れてしまいました。

 最近のWEB小説のように空白行もなければ、流行りの異世界転生でもありませんが、物語、情景、心──それらの美しい描写を多くの方に是非読んで欲しいと思います。



 この物語を読み終えたのは旅先で、海の見える町でした。もしかしたら海神のお導きだったのかもしれませんね。