異世界転生作品が多量にある中で、「異世界から帰還する」のはごく少数かと思います。
異世界に行っていたのは夢だったんだ、という夢オチでもなくその記憶を持ったまま、現実世界で仲間と再会することを約束し──
その仲間が異世界での記憶を持っていなかったとしたら、実は異世界には行っておらず、そのまま現実世界で生きていたその人だったとしたら、それは果たして同一人物と言えるのだろうか?
ラブコメとありますが哲学のようであり、ミステリーのようであり、記憶喪失ものとありますが純粋にはそれとも違っていて……
一応完結はされていますが続きを構想されていらっしゃるようで、記憶喪失ものの「最後に記憶を取り戻してみんなハッピースッキリおめでとう!」という爽快感は得られないかもしれませんが、心に小さな棘を残していく、いろいろと考えさせられる作品でした。
ラブコメ的なぽんぽんとした会話リレーはありませんが地の文大好き勢にはぜひ読んでいただきたいです。
もしこの続きを書かれることがありましたら、彼らの行く末を見届けたいと思います。
異世界に転移し、長い戦いの末魔王を討伐した勇者一行。勇者であるリョウはその喜びを堪能する間もなく、異世界転移をした天使によって今後の身の振りを決めるよう迫られる。
この世界で一緒に旅をした女性で恋人のリサの願いもあり、リョウは元の世界である日本に帰ることを決める。
日本に転移してバラバラになっても、探して絶対会おうと誓う二人の再会は、想像以上に早く訪れる。
だがそれは、リサから衝撃の言葉を投げかけられ始まる新たな物語でしかなかった……。
魔王を討伐した後から始まる物語。日本に戻ってきたリョウと同じくまったく状況が把握できていない状況に投げ出され、いったい何があったのか、リサはどうしたのか気になることが沢山あります。
この謎がどう解決していくのかとても気になります。
勇者一行が身の振りを考えそれぞれが旅立つ前夜に、それぞれの心理や、ここに至るまでの経過が垣間見える表現は丁寧で、ああこれでお別れなんだなってしんみりしてしまいます。
ここからどう展開していくのか、楽しみな作品です。