掻くように文を書く

脳幹 まこと

執筆意欲の源泉


 背中が痒くて堪らないので、ぼりぼりと掻いてやった。不快さが取り除かれて気分は晴れやかとなる。至福の瞬間だ。


 ふと思う。自分の小説執筆についても同じことが言えるのではないか。高尚な目的があるでもなく、病的な熱意や執念があるでもない、掻いたところで実になるでもない。かといって目的や利益がまったくないとも言えない、そういうものだ。

 痒くもないのに背中を掻きむしる人はいない。痒くなる原因は色々とあるだろうが、重要なのは、痒みには何かしらの原因があることと、それに対して反射的に・・・・掻く対処を実行していることだろう。

 自分における痒みの原因とは「ストレス」である。「不満」でも「嫉妬」でもいいが、そういったものがまとわりついてきて、堪らなくなる。

 そういう時は、チラシの裏にシャープペンシルで思いの丈をぶちまけ、スマホのアプリ画面に親指で思いの丈をぶちまけ、PCのキーボードに両手で思いの丈をぶちまける。それらは物語であり、エッセイであり、雑文であり、駄文であり、時たま絵や図形になる。


 実になるでもない、刹那的な快楽だ。それも掻けば掻くだけ癖になる。掻いた場所は傷ついて、行為のむなしさを知る。そこにまた痒みが押し寄せて、堪らなくなる。

 掻く。掻きむしる。その時だけ、自分が主導権を握っているのだという気持ちにさせてくれる――

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