魔法の剣

タブレットの画面にメッセージのマークがついた。

トランシルヴァニア司令部からが指示だ。


『アバターの武器になる、魔法の元素をためなさい』


手順を説明する動画が添付されている。

巧は動画をチェックした。


魔法の元素はアバター戦士の武器の素材で、あるサイトで集める。そのサイトは、地下アイドルの女の子たちの動画がアップされている。各地下アイドルの女の子が、それぞれショートムービーの動画をアップしていて、そのそれぞれの女の子の動画を、ひとつずつ見ていくと、一人につき10ポイントずつ貯まっていく。


1日に50人までの女の子の動画が見ることができ、一日合計500ポイント集めておき、貯まったポイントで、アバターのアイテムになる武器の元素を購入できるという仕組みだ。


「なるほど」


巧は、時間を見ては動画をチェックし、ポイント貯めていった。お気に入りのアイドルはドリームフェアリーの雪円香だった。


この流行病の現実を忘れられる楽しい時間があった。


円香の笑顔の動画の癒しと、過酷な現実の両極端の中で、巧は現実が何かおかしく感じられていた。


数学1の動画で勉強していると、タブレットのブザーがけたたましく鳴った。


ノスフェラトゥがエリア5-S2に攻め込んだのだ。


『総員集まれ!』


大声が響き渡り、アバター戦士が招集される。アバターワタルも馳せ参じた。


「やってやるか」


巧は絶叫した。


いつもの広告閲覧パワーのエネルギー砲を撃ち込むが、敵がなかなか切り崩せない。


「なんだ?こいつ頑丈だぞ!」


タブレットの画面に世界各国のアバター戦士が集結しているが、皆苦戦している。と、右前方にいた女性兵士が通信許可を求めてきた。


「お願い、許可して」


「わかった」


巧は通信を認可した。


「ありがとう」


その女兵士の顔を見て、あっとなった。その子はあの地下アイドル『ドリームフェアリー』の雪円香だった。


「君は」


「いつも私の動画見てくれてありがとう。足跡からあなたの事を知っていたわ」


「そうだったんだ?」


「さぁ、敵を倒すのよ。あのノスフェラトゥは二本の妖刀『聖なるジーザス』で倒せるのよ。私は持ってるけどあなたは?」


「僕は初めて聞いた」


「わかった。あなたはいつも私を見てポイント貯めてたわよね?今何ポイント?」


「1,0523」


「1,0000ポイントで買えるわ。すぐ購入して!」


「わかった!」


巧は刀店に行き、ポイントで『聖なるジーザス』を購入した。


「円香、これをどうすれば?」


「メーターを開いて。その右下の。そして私のバイオリズムとシンクロして。メーターが最高になった時にボタンを押して発射するの。すると二本の『聖なるジーザス』が対になって飛んでいき、あのノスフェラトゥを退治できるわ」


「わかった」


右下のメーターを食い入るように見つめる。巧はメーター最高で発射ボタンを押した。妖刀『聖なるジーザス』は絡むように対になり、ノスフェラトゥに向かって飛んでいった。


あの頑丈なノスフェラトゥが貫かれ、光を発して消滅した。


二本の『聖なるジーザス』はそれぞれ円香と巧に戻った。


消えゆくノスフェラトゥを見ながら、円香が言った。


「これから私があなたのパートナーよ。ともにノスフェラトゥと戦う相棒。そう選ばれたの。よろしくね」


「え!?」


円香の笑顔に驚き、当惑しつつ、巧はぎこちなく首を縦に振り、「よろしく」と言った。


円香と巧二人の第999戦隊の誕生だった。

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ノスフェラトゥ・ウォーズ 飛辺基之(とべ もとゆき) @Mototobe

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