最終話 この幸せを守っていきたい

 ラテスを離脱し、その後フィーネの管理する星5つをまわって。

 リエンカ家に戻る頃にはもう夜になっていた。


 ――オレほど盛大な【祝福】にはしなかったとはいえ、あの神力も集中力もがっつり持っていかれるスキルを1日5回も使えるってすごいな。

 まあ途中でオレの神力分けたけど。

 でもスキルの使い方に関しては、まだまだフィーネから学ぶところも多いか。


「おかえりなさい。2人とも無事成功したみたいね。今日は疲れたでしょう? あとは私たちに任せて、あなたたちはゆっくり休みなさい」

「ありがとうございます。すみませんがそうさせていただきます……」


 帰宅後も宴が続いていたが、オレとフィーネ、それからハクは早めに休ませてもらうことにした。

 オレとフィーネは部屋着に着替え、リビングのソファにぐったりもたれかかる。

 が、ハクだけは不思議なくらい平然としていた。

 どうやら神獣が丈夫というのは本当らしい。

 そして――


「お疲れさまです。そして改めて、おめでとうございます」

「ああ、ありがとう」

「……ありがと」


 エリアがやってきて、ソファの近くのテーブルに紅茶セットとお菓子、それからサンドイッチなどのさっとつまめる軽食を置いてくれた。


「お疲れでしょうから、軽くつまめるものを作っていただきました。食べられる元気があるなら、ほかの夕食もご用意できますが」

「いや、いいよ。これくらいがちょうどいい。せっかくだしおまえも座れよ」

「ええ……いえ、私はけっこうです」

「いいから」

「……はあ。承知しました。では失礼して。紅茶、私もいただいても?」

「もちろん」


 エリアはカップを1つ追加して。

 流れるような美しい所作で丁寧に紅茶を淹れ、オレたち、それから自分の前へと置いてから座る。

 どこをとっても非の打ち所がない完璧な動きだ。


「やっぱさすがだよな。紅茶淹れてるだけなのに芸術的って反則だろ」

「なんですかそれ……」

「エリアはこれからどうするんだ? オレとしてはおまえがいてくれるとありがたいけど。でもせっかくだし、ランクSを目指すって手も」

「そうですね……ハルト様がもう少し跡継ぎとして成長したら考えますかね」

「ぐ――」


 ため息をつくエリアを前に、何も言えなくなってしまった。

 神力だけならまだしも、名門神族としての教養の深さや振る舞い、対応力ではまだまだエリアの足元にも及ばない。


「本当、神乃悠斗ももう少し自信を持って堂々としてくれるといいんだけど」

「フィーネ様もですよ。フォルテ様の跡を継ぐのはあなたなんですから」

「――わ、私はその気になればできる子なのっ」


 どう考えても嘘だった。


「でもとりあえず、これでオレたち本当の夫婦になれたんだよな。悪いなエリア」

「正直微塵も羨ましくないのでどうでもいいですね。今となっては、そういったしがらみから解放されてせいせいしているくらいです」

「はは、知ってる」


 エリアは、恋愛対象としては本気で心底フィーネに興味がないようで。

 でもそのおかげで変な空気にならずにすんでありがたい。


「これからも私のために、うちのことにも神様活動にも精一杯励みなさい。大切にしてくれなきゃ許さないからっ」

「分かってるよ。至らない夫ですが、これからよろしくお願いします」

「……ハルト様はあれですか、実はどMですか?」

「やかましいわっ! 違うし子どもの前でそんな単語口にするなこの変態が」

「ぼ、僕はどんな悠斗様でも大好きですよっ」

「ありがとう! でも本当に普通だから!!!」


 ああ本当、結婚初夜だというのにみんなでこんなくだらない会話してるなんて。

 まったくどうしようもない夫婦だな!


 ちなみにフィーネはというと、ソファに倒れこんで既に半分寝かけている。

 ……でも、そんなフィーネだから好きなのだと改めて実感してしまう。

 

 夫婦としての生活も、リエンカ家跡継ぎとしての生活も始まったばかりだけど。

 この幸せを守っていけるように、そしてラテスの幸せを守れるように、肩書きに相応しい存在を目指さないとな。


 ――よし。

 明日からも頑張るぞおおおおおおおおおおおお!!!


【完】

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神様の手違いで異世界の未開拓な惑星に転生させられたので、ここで神様始めました ぼっち猫@「異世界ごはん無双」書籍化決定 @bochi_neko

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