結論から言おう。本作は名作である。読まないのは損である。書籍化は時間の問題と言っても過言ではない。そのぐらいの作品である。
本作のなによりの特徴は、その繊細な感情描写だろう。中でも、憂鬱な気持ち、自殺志願者の気持ちの解像度はカクヨム屈指の高さを誇る。
カクヨム屈指と述べたが、それは全ての作品に目を通したわけではないからそう書くのであって、個人的な心情としてはカクヨム随一と述べても惜しくはないほど、感情の解像度が高い。
手に取るようにとはまさにこのような時に使う言葉なのだろう。そのぐらい見事に憂鬱な感情を描いている。
虐待や自殺と言った重いテーマを扱っているからと言って敬遠することなかれ。この作品はボーイミーツガール要素も含んでいる。そう言うのが好きな人にもおすすめだ。
そして満を期しておすすめしたいのは家族との関係に悩んだことのある人、自殺を考えたことのある人。ここにはあなたがいるし、ここには私がいる。そうした作品である。
くどいようだがもう一度言おう。本作は名作である。読まないのは損である。幸い長さも程よい。ぜひ、この正月休みにでも読んでみてはいかがだろうか。
この物語は、自殺志願者の女性高生紬の死ぬまでにしたい100の項目に付き合わされることになった詩摘の視点で描かれています。彼自身も心に傷を持ち、生きることに積極的になれないのです。
二人は本当の気持ちを上手く表現できないまま、少しずつお互いの心に近付いていきます。そして、本当の「救い」を求めていくのです。
綱渡りのような心のふれあいや、触れたら壊れそうな繊細な心情を美しい文体で丁寧に描いています。ともすると軽々しさを感じてしまうかも知れない「命」を取り扱った物語が、すぐそこにあるもののように感じ、心に突き刺さるのは、作者の文章の力と、物語のテーマへの深い想いがあるからだと思います。
生きることが辛くなったとき、あなたを救う物語になるかも知れません。