最終話 勧告と出発と
紅雄とライカは一万のゴブリンを引き連れ王都へ向かうことになった。ゴブリンたちには当然武装を解除させ、彼らを魔王の呪縛から解放するために王都パーティクルへ向かう旅だ。もしも魔王に見つかり、暴走したときのためにライカも同行する。
そして、紅雄は『
魔王を、元クラスメイト達を倒すために。
当然、メイデン村は出なければいけない。
月が出ている夜。紅雄はメイデン村でみる最後の夜空を眺めていた。
「旦那様?」
手紙を握り締めたミントがやってくる。
「ミント来てくれたか」
「旦那様、準備はもういんですか? 出発は明日ですよね?」
「ああ、元々何も持ってこずにこの世界に来たんだ。荷物なんていらないさ」
何も持っていない手を振ると、ミントはくすくすと笑った。
「フフ、旦那様らしいですね」
「だけど、一つどうしても持っていきたい荷物がある」
「荷物?」
ミントの手を取る。
「私ですか?」
「ああ、一緒に来てくれ、ミント」
ミントは頬を膨らませる。
「その言い方だと、私がお荷物みたいじゃないですか?」
「ああ、今回の件でわかった。お前はお荷物だ。誰かに盗られると、俺は動揺して気が気でいられない」
更に機嫌を悪くして、ミントは唇を尖らせる。
「だったら、ここに置いて行けばいいじゃないですか。このメイデン村に」
「だから、ずっと手元に置いておきたいんだ。俺は大事なものはずっと持っていたいからな」
「………」
赤くなったミントの腰に手を回して、引き寄せる。
「ミント、俺はチート能力を持たなくて、みんなより少し遅れてスタートできて、良かったよ。お前っていう大切なお荷物に出会えたんだから」
「旦那様、お荷物と言われると嬉しいのと頭にくるのが半分ずつ、複雑な気持ちになります。だから、もう呼ばないでください」
「ミントこそ、俺のことを旦那様なんて呼ぶなよ。へりくだって、召使みたいじゃないか」
「じゃあ、何と?」
「紅雄。同い年なんだから」
「………まだ呼べません」
「呼んで?」
「べにっ……ンン!」
言いかけたミントの口をキスで塞いだ。
唇で彼女の体温を感じながら、紅雄は目を閉じる。
俺をこの世界に送った神はどこかで俺たちを見ているんだろうか。だったら見せつけてやる。これからお前の不始末のしりぬぐいをしてやるんだから、このくらいはいいだろう。
絶対に『
クラス全員にチート能力を与えたら、俺以外みんな魔王に寝返った件。
なんて言って、掲示板に書き込んでやるんだからさ。
クラス全員にチート能力を与えたら、俺以外みんな魔王に寝返った件 あおき りゅうま @hardness10
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