第5話 彼氏の隣人は奇人変人?
社会人になった俺は、当たり前だが大学の学生寮をでた。
会社の寮も考えたけど、やはり社会人になったからには、自活したい。
会社は福岡の中心部にあるけど、大学周辺は、田舎だから、家賃も駐車場もやすい、
こだわりは、一応、明日菜が訪れることもあるかもしれないので、2LDKでセキュリティーがしっかりとした新築、は、新入社員には、素直に、厳しかったので、築10年の物件だ。
「へー、私たちが付き合いだした頃に、建ったんだね?この建物」
明日香は、車から降りて、珍しそうに5階だてのマンションをみる。
まあ茶色のタイル張りのどこにでもあるタイプのマンションだ。
オートロックを開錠して、エレベーターにのる。
3階の角部屋の隣なので、安かった。
なにしろ両隣も真上もファミリー層。
とても素敵に、四方八方から、ドタバタと元気な生活音が聞こえて来る。
ー間違っても、いま大人気の若手女優むきじゃないよな?
俺、なんか、赤ちゃんの夜泣きサイクルわかってきたし?
おむつ捨てるの重そうだから、ゴミ捨て場まで、何回か運んだし?
所帯じみてないか?
部屋を開ける時、となりのトトロならぬ轟木さんが、到着したエレベーターから顔をだした、
轟木さんには、一1歳と7歳と14歳の娘ばかりをもつ、ドラマなら美人な若妻んだろうけど、旦那さんは陸上自衛隊で、本人も元自衛隊のパワフルかあちゃんだ。
階級や所属は、知らない。
けど、なんとなく俺は、この人をみると思い出してしまう。
有名なあのカエルの軍曹。
ちなみに俺は、カエルが苦手。
だからかなあ?
軍曹って単語を思い出す。ただ、自衛隊にも、日本軍にも、詳しくない。
よくアニメやバラエティとかで、耳にしてるだけだ。
ー鬼軍曹。
いまも迷彩柄の服を着て、赤ん坊を背に背負って、両手に重そうな買い物袋を抱えている。
「それじゃあ、玄関の鍵あけられないでしょ?持ちますよ。明日菜、悪い。さき部屋に、入っててくれ」
「ううん、私も手伝うよ」
軍曹(もうそう呼ぶ)は、なぜか俺に、ビニール袋を取られまいと懸命に、
「これでも元自衛隊!背嚢を背負ってする訓練に比べれば、若僧なんぞの力などっ!」
〜チャリーン。
無理な格好でポケットから、鍵を出しかけて、床におとした。
がっくりとビニール袋ごと膝を崩して、四つん這いになる前に、俺はビニール袋をもぎ取りセーフ?
「くぅ、雪辱なり」
「それを言うなら屈辱でしょ?どこで雪辱、はらしてるんすか。そもそも、なんで、そうなるんすか?明日菜、ドア開けてやって」
この人が相手なら、俺だって少しは、マトモにみえる、
ーたぶん?
「えっ?いいの?」
「いいよ。このひとは、ともかく、凛ちゃんが風邪ひいたら、大変だから」
「わかった!はい、あきましたよ?」
「ほらほら、立ち上がって、獲物も無事なんすから。 俺、はやく彼女といちゃつきたいんですけど?」
「彼女!」
40歳とは思えない背筋力で、飛ぶように立ち上がる。
俺は勝手に隣人宅の玄関に、ビニール袋をふたつ置き、軍曹の背後から凛ちゃんを救出した。
高い高いしてやると、きゃあきゃあ喜んでるが、
「人の娘で腕力強化をするな!使うなら萌をつかえ!母がゆるす」
「えー、萌ちゃん、お年頃だしなあ。触ったら、俺が絶対お縄行きになるし」
「だから借りは返せ、青年。萌の家庭教師だ」
「あー、もうなんでもいいから、解放してもらっていいですか?俺いま久しぶりに、彼女デート中なんで、はやく部屋に入りたいんですけど」
軍曹の目がやっと、俺の時とは一転して、人見知りで泣きそうな顔の凛ちゃんの相手をしている明日菜にうつる。
そして、おおっ!と奇声をあげた。
まずい、ばれたのか?明日菜が女優の神城明日菜だと。
でも、マスクも伊達メガネもまだしてるぞ?
元自衛隊って、やっぱり、観察力半端ないのか?
頭の中で、いろいろパニックってたら、
「いやあ、ほんとに、彼女いたんだな?てっきり、我が家では、エア彼女化してる可哀想な若者って思ってたぞ?なんなら、そのうち萌がひき取る気でいたぞ?老後」
ー恋人じゃなく、老後かい!
むっつり黙り込む俺とは正反対に、ご機嫌に軍曹は、今夜は旦那と秘蔵のお酒で晩酌だと盛り上がり、自宅に入って行った。
なんか、ごっそり疲れた気分のまま、俺は、明日菜を初めて家に招待した。
鍵をさしこみ、そう言えばと、いまさら思い出す。
「そう言えば、どっかホテルとったのか?」
「ううん、それより、はやく、お家みせて?」
「うん、いまあけるけど。なら最終便で、東京に帰るのか?いまから空港ってなると、都市高速使っても、わりと混むけど?」
空港までの時間を計算ていたら、ガチャっと、部屋の鍵があいた。
無意識でも鍵は開くらしい。習慣ってスゲェな?
俺がドアを開けると、隙間から、するりと猫のように、明日菜が中に入り込む。
あたりまえだけど、玄関に、明日菜がいる。
そして、くるりとまわれ後ろをして、眼鏡をとって、言った。
「きょうは春馬くんの家に、とまるから大丈夫だよ?」
「はっ?」
俺の口から、今日一番の声がでた。
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